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イラスト・もりたあゆむ

レ ト ロ ス ポ ッ ト ガ イ ド 「 ま ぼ ろ し 酒 場 」


早くて安い三富

 居酒屋を「角川必携国語辞典」で引くとこうある。大衆的で、手軽に安く酒を飲ませる店。では大衆とはと引いてみると、社会の大部分をしめる、ごくふつうの人々。
 だから居酒屋も、大衆酒場も大して変わらないようだ。個人的には、居酒屋というと誰かが歌ってヒットした曲のように思ってしまう。大衆酒場の方が、私は親める気がする。

三富

三富

 三富は、写真のように大衆酒場を看板にした店だ。駅からも近く、商店街の中心で健常者なら徒歩一分。足の弱い人でも二分もあれば充分だ。そして駅からすぐに、アーケードになっているので少々の雨もへっちゃらだ。
 俺は若い時分、この店で散々飲んで食べた後に、トンカツ定食を食べたころがある。定年間近の、現在ではとてもこんな無茶は出来ない。34年前で安月給の若僧が、これだけ飲めたということは当時からこの店が安かった証明でもある。
 近年、女性が居酒屋を浸食する傾向が顕著だがこの店ではそんな心配はない。いつまでもオヤジの味方である。
 俺はあつあつの竹輪揚げや、アジフライをかぶりつきビールや、冷酒を喉に流し込む瞬間に生き甲斐を感じる。酒場の定番メニューが、所狭しと壁に貼られている。まぐろぶつも、ナス焼きもいける。冬場ならおでんに、燗酒も良いだろう。

三富

 特筆すべきは、料理の出て来るのが早いことだ。カップめん並みに、三分も待たせることはない位だ。これは嬉しい、給料日前でも懐を気にせず飲める。

 メニューを見て注文すると、「これは今日品切れです」という酒場と違い、安心して頼めるし飲める。飲んだあとのあさり汁も極楽気分だ。一つ注文は、以前は出していた湯豆腐などの、鍋料理が消えてしまったので復活して欲しい。よけいなおしゃべりをしない、主も好感が持てる。

住所 葛飾区立石

文:坂口団吾


2004年7月22日更新
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