今柊二
「マジンガーZの呪い」
ということではじまった連載だが、ここでは自分史を軸として、ここ30年ほどのプラモデル史を振り返ってみることにする。「三つ子の魂百まで」というが、やはり幼少期のすり込みというものは恐ろしいもので、我々の世代(ちなみに私は1967年生まれだが)にとって、「マジンガーZ」というのは特別な存在である。いまなお「マジンガーZ」なり「超合金」という言葉を聞くと、ゾクッと来るし、何かしら高いきらきらした塔を見上げるような誇らしい気持ちになってしまうのだ。最近玩具メーカーはそんなおじさん達の心理を的確についた商品展開をしており、そのうちの一つがガシャポンであろう。小銭を入れてグルグル回してカプセルを出す例のものだが、かつては20円だったものが、いつのまにやらどんどん値上がりし、高いものでは500円というメーカーもあるほどだ。
最近このガシャポンのなかで、バンダイによって「カプセル超合金ポピー」という恐ろしいシリーズが発売された。定価は300円で決して安くはない、いやそれどころか高い。松屋の牛丼が味噌汁つきで290円の時代である。つまり昼ご飯より高い、この代物は、要するに昔の超合金シリーズの完全なミニチュアシリーズなのだ。憎いことにカプセルのなかにかつての化粧箱のミニチュアが入っていて、さらにそのなかに完全彩色されたミニ超合金が入っているという素晴らしさなのだった。ラインナップは「マジンガーZ」「コン・バトラーV」「アマゾンライダー」などで、「コン・バトラー」などは変形も可能なのだった。私は「マジンガーZ」ほしさにふらふらとオフィスのある(私は昼間はサラリーマンだ)恵比寿のミスタークラフトのガシャポンの前に立って、コインを入れつづけあっというまに1200円ほど使ってしまった。結局出てきたのは、「コン・バトラーV」2体と「アマゾンライダー」2体という間の悪さで、欲しかった「マジンガーZ」は出ずじまいだった。私はパチンコなどギャンブルはやらないが、少しばかりギャンブルの恐ろしさが身にしみた。1200円と言えば、スタークラフトのまえにある焼き鳥の田吾作で、ビール(大)と焼きとり4本くらいは食べられる値段であり、どしんと深い後悔が残った。私はおじさんなので、様々なことにお金がかかるため、小遣いは計画的に使わなくてはいけないのだが、そういう「まともなサラリーマン」にとって「おたくグッズ」は実に危険である。1200円消費後、電車に乗って業務相手先に向かう途中、バッグのなかからヤヤ大きめのカプセルを取り出し、ダブッたコンバトラーの一つを組み立てていると、隣のサラリーマンがぎよっとしてこちらを見ていた。その視線に「そりゃそうだわな」と思って、バッグにしまったのだった…。
…ということで、初回は「ロボットアニメがプラモデルに与えた影響」を考察しようと思ったが、全然話がそれてしまい、プラモデルにすらいきつきませんでした。すみません。次回はそのあたりを考察します。
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