豊海橋
わが「まぼろしチャンネル」の本拠は、本の街として有名な、千代田区は神田神保町です。皆さんとの水路行を始めるにあたり、まずはそれにちなんで、神田神保町から川を眺めてみましょう。
一ツ橋
人やクルマで賑やかな神保町交差点から、白山通りを南下すると、数分で一ツ橋を渡ります。頭上には二重に高速道路が覆いかぶさり、少々薄暗いですが、橋の下には水路がありますね。これは日本橋川です。
俎橋
神保町交差点に戻り、靖国通りを西へ向かうと、やはり高速道路の下になっていますが、九段下も間近いところに、俎橋(まないたばし)があります。これも、日本橋川を渡る橋です。
水道橋
もう一度神保町から白山通りを北へ10分ほど歩けば、後楽園・東京ドームへの玄関口で知られる、水道橋を渡ります。この下をゆったり流れるのは、歌にもうたわれた神田川……。ビルに囲まれて暮らしていると、なかなか実感が湧かないかもしれませんが、意外や、神田は三方を川で囲まれた、水に親しい街であることがわかります。
この二つの川は、自然のものではありません。大田道灌が江戸の地に城を構えて以来、江戸時代に至るまで、洪水防止や舟運路の確保のため営々と掘り進められてきた、人工の川なのです。
地図を見ていただくとおわかりのように、日本橋川は、JR水道橋駅の西側で神田川から分流して、中央区新川、永代橋の北で隅田川に注いでいます。一方神田川は、日本橋川を分かってからほぼ東に流れ、台東区柳橋、両国橋の北でやはり隅田川と合流します。
つまり、日本橋川・神田川・隅田川を通ると、神田の周りをぐるりと一周することができるのです。もちろん、私の小さなモーターボートが航行するには充分な水深と桁下高(橋の下から、水面までの高さ)があります。東京の真ん中を三角形に貫く、歴史ある水路!
さっそく、日本橋川から入ってみましょう。
隅田川から豊海橋を見る
日本橋川の河口を隅田川から眺めると、まず目に飛び込んでくるのは、板に四角い窓をいくつか開けたような独特の橋。フィーレンデール橋という、国内では数少ない型式の橋、豊海橋(昭和2年竣工)です。継ぎ手に打たれたリベットに、時代を感じますね。
湊橋
このあたりは、かつての江戸湊の中心地だったところで、湊橋(昭和3年竣工)の名や、船溜の雰囲気に当時の面影が忍ばれます。
日本橋水門
日本橋川の旧河道である、亀島川との分流点、日本橋水門を左手に見たあたりから、川の上には首都高速6号線が入ってきます。水面に橋脚が建ち並び、複雑な構造のジャンクションが頭上にうねる光景、大都市の臓腑に分け入ってゆくような、探検気分が楽しめるところでもあります。
江戸橋ジャンクション
河畔には、かつての水運との密接な関連を思わせる建物が、まだいくつか残っていますが、これはその代表、三菱倉庫本社ビル。各階に積み下ろしのための開口部やクレーンの跡が見られ、東京港で本船(大型船)から貨物を積み替えた艀(はしけ)が、川を遡ってここに横付けし、倉庫に直接荷揚げをしていた昔を、髣髴することができます。
三菱倉庫本社ビル
次回は「日本橋川をゆく」をお届けします
2009年12月1日更新
日本橋をゆく
川に囲まれた街・神田
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