かまやつひろしが2月に出した「ムッシュー かまやつひろしの世界」。
ソロ多重録音、セルフプロデュース。
その新しい手法は、ポール・マッカートニーが牧場に籠ってつくった「マッカートニー」より、ひと足早かった。
ビートルズは、ポールの発言とともに、4月17日に事実上の解散。
マージー・ビートに影響を受けたスパイダースもまた、メンバーそれぞれの活動が増えていた・・・。
マチャアキが「時間ですよ!」と言ったとき、ムッシュは「どうにかなるさ」と呟いた。
4月5日、アルバムに続き、ムッシュのニューシングルだ。
「どうにかなるさ」。カントリー&ウエスタン調の曲。
もうマージービートは古い・・・。ムッシュは、そう感じていた。
しかし、かまやつひろしは時代と遊ぶ。
何が正しいロックであるかを証明せんとする内田裕也とは正反対に、いま何がいちばん面白いのかを正しいとする。
だからこその、スパイダース解散後、非芸能界であるはずのフォークの世界に足を踏み入れられる、痛快な柔軟さなのだ。
「どうにかなるさ」は、そんなふうにフォークシンガーたちと仲間になる前の、予言的シングルかもしれない。
もともとウエスタン歌手だったかまやつひろしが、マージー・ビート、ブリティッシュ・ビートから、再びアコースティックに立ち戻った、そんなある意味で記念碑的な作品なのかもしれない。
時代と遊ぶ男、ムッシュ。
今夜の夜汽車で 旅立つ俺だよ
あてなどないけど どうにかなるさ
あり金はたいて 切符を買ったよ
これからどうしよう どうにかなるさ
見慣れた街の明り 行くなと呼ぶ
けれども同じ 暮らしに疲れて
どこかへ行きたい どうにかなるさ
仕事もなれたし 街にもなれたよ
それでも行くのか どうにかなるさ
一年住んでりゃ 未練も残るよ
バカだぜおいらは どうにかなるさ
愛してくれた人も 一人いたよ
俺など忘れて 幸福つかめよ
一人で俺なら どうにかなるさ
「どうにかなるさ」詞:山上路夫 曲:かまやつひろし