大阪万博花盛りのその眩しさの影で、たとえば五つの赤い風船は、3枚目のアルバム「巫OLK脱出計画」をリリース。
「巫」は「フ」という読みもあるので、つまり「巫OLK」は「フォーク」である。
すでに「フォーク」という言葉には大きな意味が付随してしまい、聴衆の期待は歌い手を苦悩させた。
フォーク、巫OLK。ふぉーく。
運命背負ったバランス感覚。一級のひねくれ根性。
2枚目のアルバムのときから、メンバーの流動がある。
1969年9月に中川イサトが脱退し、10月に東祥高が加入している。
東祥高はピアノ、フルート、ビブラフォンなど様々な楽器を担当した。
ボーカリスト藤原秀子、ベーシスト長野隆。
そして、マエストロ西岡たかし。
西岡たかしのつくり出す歌は、笑えない。
わかりやすい感動は求めない。
歌詞にはたとえば固有名詞は出てこないし、その視線の行き先も何か特有のものにはいかない。
反戦のメッセージさえも、叙情的な美しい文学となる。
そのくせ歌の合間のトークでは、関西人らしく観客を笑わせる。
しかし、歌では笑わせない。
キザだ。
理論的に叙情的な作品をつくる音楽家。
熱いからこそ、どこまでもクール。
ポップでダークで、それでいてメルヘン。
そんなミュージシャンは、時代が決定し要求してくるイメージから「脱出」せざるを得ない。
「巫OLK脱出計画」収録曲の「殺してしまおう」は、数ヶ月後、放送禁止となる。
かわいそうだけど 殺してしまおう
おれのペット達を 君のペット達を
かわいそうだけど 殺してしまおう
君のペット達を おれのペット達を
世界がもうじき暗くなってしまうから
かわいそうだけど 殺してしまおう
君のペット達を おれのペット達を
かわいそうだけど 殺してしまおう
おれのペット達を 君のペット達を
かわいそうだけど 殺してしまおう
君のペット達を おれのペット達を
世界がこんなに 狂ってしまうから
かわいそうだけど 殺してしまおう
君のペット達を おれのペット達を
今すぐみんながみんな いなくなってしまうから
かわいそうだけど 殺してしまおう
君のペット達を おれのペット達を
「殺してしまおう」詞・曲:西岡たかし
五つの赤い風船 / 巫OLK脱出計画
1. #-い ×○△×× 2. てるてる坊主 3. 小さな夢 4. 一度だけでも 5. あるいて歩いて 6. ささ舟 7. どこかの星に伝えて下さい 8. 私の宝もの 9. いやなんです 10. これがボクらの道なのか 11. バカなうた 12. 信者の唄 13. 時は変ってしまった 14. プレゼント 15. 殺してしまおう 16. 巫OLK脱出計画 17. #-ろ ××△○×