2409 頭を抱える宇宙人

鴨たちが、ばさばさと羽音をたてて空に舞う。
誰もいない井の頭公園の池の真ん中に、タイムマシンが浮かび上がった。
フォーキーが、時空の波を超えて、再び2409年の吉祥寺に戻ってきたのだ。
少年ワタルは、いせや公園店の扉を開ける。
フォークソング研究所に入ると、古い机の引き出しに手を突っ込んだ。
探しものは、なんなのか。
見つけにくいものなのか。
緊張と興奮のあまり、額に汗がたらりと流れる。
ない、ない、ない。
どの引き出しにも、あれはない。
三毛猫ピックが、机の上に乗ったかと思うと、ぴょーんと壁に掛けられた額にジャンプした。
ねこパンチだ!
少年ワタルのご先祖様の写真が斜めになって、額の裏から、何かがぽとりと落ちてきた。
「これだ!」
ピックが見つけてくれたのは、がま口だった。
ワタルは、がま口の中を確認しようとしたが、開け方がわからない。
試行錯誤の末、がま口を開けるまでに、愚かなことに1ヶ月ほど経ってしまった。
でも大丈夫、こちとら時間旅行をしているのだ。1ヶ月過ぎようが1年過ぎようが、戻る未来は同じ年だ。
がま口には、確かに古い硬貨がいくつか入っていた。それから、豪儀なことに紙のお金も1枚だけ入っている。
ワタルとピックは、斜めになったご先祖様の写真を元に戻し、お辞儀をし、研究所を出た。
フォーキーは再び未来へ。
今度はほとんど日本での研究旅行になる。
1960年代の日本。
ワタルは、どうしても、1964年に発売される「かっぱえびせん」が食べたかったのだ!
そして、おませなワタルのことだ。「平凡パンチ」も読んでみたいに違いない!
そうなのだ、未来のお金では昔の日本で買い物は出来ない。
何につけても、世の中、お金である。
呆れ顔のピックだが、彼もまた、2400年代の味気の無い食べ物や人気のない街にはうんざりだった。
何か楽しいことがあるだろうか?
そして、ワタルのご先祖様らしきあの子供は成長しているだろうか?
機体は再び、超高速で玉川上水を滑走する。
大いなる歴史の針が逆戻りし、2人を昭和30年代の日本に連れていく。
カセットから流れるのは、ご先祖様かもしれない人の歌声。
「頭をかかえる宇宙人」・・・。


FISHIN'ON SUNDAY
高田渡(with 細野晴臣・中川イサト) / Fishin' On SunDay

Author


    藍見澪 -Rei Aimi + Folksong Institute-
    「フォークソング」という言葉の意味を再定義し、日本のフォークやロックの歴史を研究、ひいてはすべての歌に繋げる実験・・・のつもり!

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