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「脇役列伝」タイトル

ヒーロー研究家立石一夫

 哀愁のモゲラ


 「リメンバー脇役列伝」の第2回は、1957年・東宝の「地球防衛軍」に登場した、ロボット・モゲラを紹介したい。
 ご存知のように、東宝は特撮王国である。この映画の3年前に封切られた「ゴジラ」は爆発的ヒットを記録。さらにこの映画の前年に作られた「空の大怪獣ラドン」も大成功と、東宝路線は、乗りに乗っていた(のり屋のオヤジも顔負けだ)。

ロボット・モゲラ

 圧倒的な迫力で、特撮シーンが見る者に襲いかかる。正に乱れ打ち状態で、無法松の暴れ太鼓を思わせた。
 地球征服をもくろむ宇宙人ミステリアンと、地球防衛軍の攻防がストーリーの中心だ。ミステリアンの手先となり、日本を襲ったのがモゲラである。
 不幸なことにこのモゲラは、悪役になり切れなかった。地球人を心から憎めずオロオロする内に、山奥の鉄橋で爆死(?)する。
 続いて現れたモゲラ2号も、地中より上半身を出したところで鉄塔の下敷きになりオダブツ。どちらもゲームセンターのモグラ叩きのようにあっ気なく弊えた。
 ミステリアンの底力は素晴らしく、円盤や怪光線で一時は地球人を圧倒する。不思議なのはこんなに優れた科学力を有する彼らが、何故モゲラのようにチンケなロボットを使用したかということである。
 さらには、本多猪四郎・円谷英二他の強力スタッフが、モゲラをこの映画に登場させたのも不可解であった。おそらく枯れ木も山の賑い、といった軽い気持ちであったかも知れない。
 とすれば余計に、私はモゲラが愛しく哀しい存在に思える。まるでカゲロウのようにはかない一生のモゲラが、再び東宝のスクリーンに登場したのは20世紀も末のことであった。ゴジラや、キングギドラのようなスーパー・ヒーローではないだけに反って味わい深いモゲラだ。


悪役・進藤英太郎賛歌


2004年4月7日更新
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