鴻池綱孝
〈第二夜〉『マイ・ファースト・ウルトラマン』
学校近くにある文具店。羨望のまなざしが注がれるショーウィンドウのプラモデルたち。憧れのそれに1mmでも接近を試みようと、ガラス面に鼻を押し付ける子供たち。
しかしながら、握り締めた小銭で買えるものは限られている。台紙に付いた安価なパチ物のプラモデルとか、その頃、初お目見えした『香水入り消しゴム』とか・・・
20円で買うことの出来た『絵ノート』も、そのひとつだ。
「極東ノート謹製。全6種が確認されている」
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極東ノート株式会社謹製の、このノート。一般に『絵ノート』と言われ、昭和30年のはじめから、現在まで続くマスコミ文具のヒット商品である。
白黒写真に彩色をした、人着(人工着色の略)といわれる明治時代から続く、擬似カラー写真の技法が施された、美しいノートだ。
裏表紙の図版も素晴らしく、「Q」の怪獣はこれで繰り返し覚えたものだった。
このあと、第一次怪獣ブームという「怪獣の季節」にはいり、大挙して現れる怪獣達を次々と暗記していく事となるのだが、その原点、初めの一歩となる貴重な1冊となった。
「こちらは、ショウワノート製。
初めて目にした ウルトラマン!」 |
はじめて『ウルトラマン』を見たのも、この媒体、絵ノートだった。いつも行く文具店にその絵ノートはあった。
エアブラシで描かれた、白磁器の肌質をもつその宇宙人の名は、タイトルにある『ウルトラマン』らしい。その下には「ウルトラQシリーズ」の文字もあり、次期番組である事は、園児である僕にも察しがついた。蹴りをいれられている宇宙人の名はまだわからない。
エアブラシの創り出す無機質な質感が、未知なる宇宙人をより効果的に映し出していた。(むろん、当時、エアブラシ画法などとは知る由なく、これは一体、写真なのか、絵なのか判然とせずにいた。)
しかしながら、異常に大きい口は、どのような経緯から、そうなったのであろうか?目のまわりには車のヘッドライトよろしくクロームのトリムリングまである。
初めて目にするバルタン星人に至っては、セミ人間(有機体)に、金属であるハサミ(無機物)をハイブリッド融合させるという大胆なデザインのものだった。(それまで、カネゴンの口のチャックや胸の貯金カウンターにパロディーとして、その片鱗を見ることはできるが…)バルタン星人はそのポーズから、番宣用のウルトラマンと戦っている写真から描き起こした物とわかる。じゃあ、ウルトラマンの写真資料もあったはずなのに、なんでこんな変てこなウルトラマンなの?
「昭和41年、筆者。
お気に入りの
ノートを持って」 |
このノートの「変マン」こそが紛れも無く、僕の「マイ・ファースト・ウルトラマン」なのであります。
2002年5月29日更新
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