イラスト・もりたあゆむ
レ ト ロ ス ポ ッ ト ガ イ ド 「 ま ぼ ろ し 酒 場 」
郷愁を誘う、浜松・野武士
五月にしては珍しく台風二号が、本土に接近した。久々の浜松泊まりである。台風の影響で激しい雨の中、飲みに出る。ガード下の馴染みの店、酒蔵が当分、休業中との貼り紙がしてある。残念であるがもう一軒、よく行く店が野武士である。
店内は暗く、古い農家を移築したような雰囲気である。囲炉裏の炎で煤けたような梁がむき出しになっている。自在鉤などの小道具も、古き良き時代へタイムトリップした気になって来る。勿論こうした演出法は、賛否両論であろう。まあ俺も単純だから、素直に喜んで辛口の酒を飲む。焼酎好きには、いも焼酎の貴重な銘柄も揃っている。中には一人一杯だけというのもある。
店の名が野武士であるから、一杯、二杯と盃を重ねる内に、何だか「七人の侍」の一人になったような気分になって来る。
この店も油揚げが旨い。つくねや、さつま揚げもちょっとしたつまみにイケる。アクセスもJR浜松駅新幹線南口より二分というのも嬉しい。
浜松の駅ビルには、東京・日本橋の丸善の出店がある。テナントの中には別の書店が入っているので、ここはもっぱら文房具が中心のようだ。大分前にここの店長と、取引先の人と遭遇。三人で腰が抜ける程、飲んだ思い出もある。俺は出張で、彼は本社から出向。お互いに東京からやって来た身なので、すぐに打ち解けたようだ。旅先で、土地の人と杯を傾けるのも悪くはない。だが他国の空で、同郷人と遭遇するのも一興である。
最近、俺は玉露割りをシメにしている。日本酒で暖めた体に、ほど良く冷たい玉露割りがイケる。肴は何を頼んでも安い。安心して飲めるのは幸せだ。
浜松へ行く機会があったら、一度足を向けても損はない野武士だ。
文:坂口団吾
2004年12月1日更新
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