前回に続いて、福島県に古くから伝わる民謡を紹介します。
私は、東日本大震災と原発問題について、そしてその苦しみに悩んでいる人たちのために、何もしていない。
考えて、想像して、祈ってみる。
テレビや新聞で3月11日の実際の映像を見て、怖さが迫ってくる。
放射能の不安に翻弄されながら、土地を愛する人たち。
復興を目指して農業を再開する人、よその都道府県へ避難する人。
いったいどうすればよいのか? どの学者の情報が正しいのか?
「がんばろう日本」とか「がんばれ東北」とか、そして「絆」、そんな言葉で何が変わるというのか?
高田渡は、1954年のビキニ環礁の水爆実験のことを揶揄した山之口貘の詩、「鮪に鰯」を歌い続けた。
忌野清志郎は、「サマータイムブルース」などで真っ正直にユーモアたっぷりに反原発を歌っていた。
桑田佳祐は、「ROCK'N ROLL HERO」で日米安保を「核なる上はGo with you」と皮肉ってみせる。
斉藤和義は、自身の曲「ずっと好きだったんだぜ」を替え歌にして「ずっと嘘だったんだぜ」と東京電力にロックする。
沢田研二は、「BYE BYE 原発!」と明るくシャウトする。
そして、そうしたプロテストな歌が響く現代という瞬間よりも遥か昔から、土地に伝わる自然発祥の歌がある。
それらは、自分たちが暮らすその土地への、自然という大いなる存在への感謝の歌だ。
そうした民謡が、アメリカでは英語でフォークソングであり、ウディ・ガスリーとガスリーズ・チルドレンが全米に広め、それらのスピリッツは60年代後半の日本の若者たちに伝導された。
歌という永遠で確かな歴史の流れによって、すべては、繋がっているのだ。
今回も福島県の民謡を2曲紹介します。
「会津磐梯山」は有名ですよね。
猪苗代湖の北に聳える、会津富士とも呼ばれる活火山。
この歌、なんと歌詞は162番まであるそう。
1番があってサビがあって2番があってまたサビ、とかそんなレベルじゃない。
詠み人知らずで歌い継がれる音楽というのは、こういうところがすごい。
そう考えれば、たとえばシバさんの「淋しい気持ちで」とかああいう歌だって、何番まででもつくっていくことができる。
川内康範先生には怒られるかもしれませんが・・歌っていうのは、そうやって育っていくものだと思う。森進一が勝手にセリフを入れたっていいじゃないですかねぇ。でも芸能界的歌謡曲の世界には、その世界のルールがあるんでしょう。
それにしても、小原庄助さんって誰なんでしょうねぇ・・・。
エンヤー会津磐梯山は 宝の山よ(ハァーヨイトヨイト)
笹に黄金が エーマタなり下がる(チョイサーチョイサ)
エンヤー東山から 日日(ひにち)の便り 行かざなるまい エーマタ顔見せに
(小原庄助さん 何で身上潰した 朝寝朝酒朝湯が大好きで それで身上潰した ハァモットモダーモットモダ)
エンヤー会津盆地の 緑の夏よ 風もほがらに エーマタ鶴ケ城
エンヤー音に聞こえし 飯盛山で 花と散りにし エーマタ白虎隊
エンヤー会津磐梯山に 振袖着せて 奈良の大仏 エーマタ婿にとる
エンヤー北は磐梯 南は湖水 中に浮き立つ エーマタ翁島
エンヤー忠義一途の あの稚児桜 散りてその名も エーマタ白虎隊
エンヤー何故に磐梯 あのように若い 湖水鏡に エーマタ化粧する
エンヤー恋の滝川 舟石越えて 親は諸白 エーマタ子は清水
エンヤーつぼみ散らして その名を残す 花も会津の エーマタ白虎隊
エンヤー田舎坂でも 上れば下る 会津七坂 エーマタ七曲り
エンヤー誰か来たよだ 垣根の外に 鳴いた鈴虫 エーマタ音を止めた
エンヤー縁がありゃこそ 見知らぬ人に 一目会津で エーマタ忘られぬ
エンヤー主は笛吹く 私は踊る 櫓踊りの エーマタ上と下
エンヤー主が歌えば 踊りがしまる 櫓太鼓の エーマタ音もしまる
「会津磐梯山」
「日本の民謡〜宮城・福島編〜」
1. お立ち酒 〔宮城〕 2. 新さんさ時雨 〔宮城〕 3. 宮城野盆唄 〔宮城〕 4. 長持唄 〔宮城〕 5. 宮城馬子唄 〔宮城〕 6. さんさ時雨 〔宮城〕 7. 塩釜甚句 〔宮城〕 8. 博多小女郎浪枕::米節 〔宮城〕 9. 秋の山唄 〔宮城〕 10. 斎太郎節 〔宮城〕 11. 会津磐梯山 〔福島〕 12. 常磐炭坑節 〔福島〕 13. かんちょろりん 〔福島〕 14. 相馬馬子唄 〔福島〕 15. 三春甚句 〔福島〕 16. 相馬二遍返し 〔福島〕 17. 新相馬節 〔福島〕 18. 会津松坂 〔福島〕 19. 相馬土搗き唄 〔福島〕 20. 相馬盆唄 〔福島〕
次は「常磐炭坑節」。
時代の流れの中で、エネルギーが石炭から石油へとシフトチェンジして、日本ではすべての炭坑がすでに閉鎖されている。
炭坑という場所では、過酷な労働、労働争議、炭塵事故があった。
炭坑の現場の絵を描き残した山本作兵衛さんが、世界記録遺産に選ばれたのも記憶に新しい。
人が汗をかき血を流した土地に、歌は力強く生まれるのだ。
常磐にも炭坑があり、この「常磐炭坑節」は石切職人や女の選炭員たちによって歌われ始めたものだという。
それが、炭坑夫たちの酒席で歌われるようになり、それがまた花柳界へと伝わり、お座敷歌となった。
この歌は、三橋美智也も歌っています。
つまり、市井から生まれた民謡をスターが歌い、全国に広まり、人々は見知らぬ世界に思いを馳せ、いつしか口ずさんでいる。
歌って、ほんとうになんて素晴らしいんだろう。
そして1970年、ザ・ドリフターズは、この替え歌の「冗談炭坑節」をリリース。
いきなり、お笑いになっちゃう素晴らしさ。
歌は、いくらでも変化するのである。
だって「常磐ハワイアンセンター」だもん、なんでハワイなのよ、なんでもありだよ、人生!
ハアー朝も早よからョ カンテラ下げてナイ
坑内通いはヨーイドント主のためナイ
遠くはなれてョ 逢いたい時は
月が鏡と なればよい
逢えばさほどのョ 話もないが
逢わなきゃその日がすごされぬ
おらが炭坑でョ 見せたいものは
男純情と 良い女
おらが炭坑にョ 一度はござれ
義理と人情の 花が咲く
「常磐炭坑節」
三橋美智也「三橋美智也の民謡 ベスト」
1. 相馬盆唄 <福島> 2. 新潟おけさ <新潟> 3. 相馬土搗唄 <福島> 4. 舟漕ぎ流し唄 <北海道> 5. 米節~博多小女郎浪枕~ <宮城> 6. 鹿児島おはら節 <鹿児島> 7. おてもやん <熊本> 8. 斎太郎節 <宮城> 9. ソーラン節 <北海道> 10. 花笠音頭 <山形> 11. 淡海節 <滋賀> 12. 三国節 <福井> 13. 宇和島さんさ <愛媛> 14. 男なら <山口> 15. 岳の新太郎さん <佐賀> 16. みちのく六人ばやし 17. もがり笛の子守唄 18. 北海流れ節 19. 串本節 <和歌山> 20. 常磐炭坑節 <福島>