知的でとぼけた名優・有島
この人の特長(勝手に私が思っているだけ)を挙げると3つほどある。
1.インテリジェンス 2.折り目正しさ
3.シニカルな笑い
俳優としてもこれらが集約され、どんな映画に出演してもいぶし銀の持ち味で存在感を見せつけてくれる。
人気シリーズの「若大将」ものでは、加山雄三扮する雄一の父親役でコミカルな味を出している。学業より、スポーツや音楽にのめり込む息子を説教するシーンは、有島の資質が十二分に生かされている。この人の笑いは心の底からは笑っていないように見受ける。世を斜目に見る皮肉屋、ひがみがスクリーンから感じ取れることが多々ある。
かといって家族を、そして周囲の人を思いやる心は外見がもたらす印象以上に熱いものを持っている。こんな良さがにじみ出たのがテレビ「暴れん坊将軍」の側用人役だ。吉宗の行動を時には諌める忠義心あふれる役どころは有島の独壇場でもあった。彼の死後は船越英二、高島忠夫もこの役を演じたが帯に短し・・・といった感がある。亡くなる寸前まで「健坊健坊」と松平健のことを慮っていたエピソードもある。
東宝や松竹で活躍した有島だが不思議なことに、東宝お家芸の「社長シリーズ」にはあまり出演していない。森繁、フランキー、三木のり平らのアクの強さとは一線を画したのであろうか。小林桂樹あたりとからんだら面白い味が出たのではと思うが。
それでいてゴジラ・シリーズなどにはコミカルな役どころで登場している。全く対照的なものには興味を示したのであるのか、平成の今となっては定かではない。
有島が出演した映画は沢山見た私だが特に忘れがたいのは、ハナ肇と共演した「なつかしい風来坊」(66年松竹)である。職場でも家庭でも相手にされない、衛生局の課長・早乙女を有島は巧みに演じている。通勤電車で会った源さん(ハナ肇)との心の交流は「男はつらいよ」の原点ともいえる作品だ。山田喜劇でも有島は重要な役をそつなくこなしている。誠に器用な俳優であったと思う。
もう1本挙げるとタイトルを失念したのが惜しいが矢張り松竹映画で三人娘(倍賞千恵子、姫ゆり子、榊ひろみ)と共演したもの。東京・下町を舞台にした人情物であった記憶がある。気の良い下町の父親をさり気なく好演した有島が印象的であった。
生 T5・3・1
没 S62・7・20
<出身>愛知県名古屋市
<本名>大島忠雄
20歳で上京、新宿のムーラン・ルージュへ。S20年浅草で劇団「空気座」を旗揚げ。東宝、ミュージカル、東宝現代劇でも活躍。ひょうひょうとした名脇役であった。 |
哀愁のモゲラ
悪役・進藤英太郎賛歌
2004年5月24日更新
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