園長 ペリプラ葉古
その3−ジュウシマツ
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お次は鳥舎のようです。
でも中に入っているのは、セキセイインコにカナリア、
メジロにブンチョウ、レース鳩と見慣れた鳥ばかり。
ここは野鳥舎ではなく、飼鳥舎なのです。
あ、ジュウシマツがいます。なんか懐かしい感じがしませんか?
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鳥を飼ったことがある人は多いと思う。
飼鳥と人間との関係はなかなかに微妙だと感じないだろうか。
ペットとしての鳥は犬や猫のように人間にこびるわけではなく、
かといって虫や魚のように人間を無視するわけでもない。
鳥と人にはつかずはなれずのほどよい緊張感がある。
人に慣れたブンチョウは飼主の肩や頭をおそれずに乗る。
セキセイインコならば「こんにちわ」と挨拶したり、
「ピーコちゃん」と自分の名前を名乗ったりもできる。
(セキセイインコはオスでもなぜか、ピーコなのだ。)
まるで飼主と親密にコミュニケーションしているみたいである。
だが、それは人間の勝手な思い込みに過ぎない。
飼鳥たちは飼主が好きで愛想を振りまいているのではない。
人に近づいたりことばをしゃべったりすると
餌がもらえることがわかっているからそうするだけの話。
嘘だと思うなら、寄ってくるブンチョウや話しかけるインコを
相手にせずにしばらく放っておけばわかる。
やつらはそのうち屋外に逃げていくはずだ。
籠の鳥は外では暮らせないからきっと戻ってくるはずなどと
信じている人もいるようだが、大間違いである。
やつらだってしたたかに野外で生きていける。
現に東京近郊では中国・東南アジア原産のソウシチョウや
中国のガビチョウ、スリランカのワカケホンセイインコなどの
飼鳥が野生化し、増えすぎて困っているくらいなのだ。
インドネシア生まれのブンチョウだって
オーストラリア生まれのセキセイインコだって
日本の自然に適応して暮らしていくことができる。
愛情を注いで築いた関係が一方的に破棄されたと嘆くべきではない。
人間のいいなりにはならない野生の姿勢を誉めるべきであろう。
さて、ジュウシマツである。
この鳥は昔から飼鳥の定番だった。
「おそ松くん」の六つ子のひとりの名前に採用されたほどである。
個人宅でも学校でもデパートの屋上のペット売り場でも、
白い地色に茶色のぶちのこの鳥の姿を見ることができた。
このさほど美しくもない鳥がなぜもてはやされたのだろうか。
カナリアのようにとりわけ美声でもないし、
インコのようにことばを話すわけでもないのに。
その理由はただひとつ、飼いやすいからだ。
ジュウシマツという鳥はブンチョウやセキセイインコとは違って
自然界には存在しない。
中国南部や台湾に住むコシジロキンパラという野鳥を品種改良し、
最終的に日本人が作り上げた鳥なのだ。
人工的に作られた飼鳥なので飼いやすいのは折り紙つき。
オスとメスをペアで飼っていたら、
いつのまにかつぼ型の巣の中で卵を産んでいる。
どうしたものかと放っていたらいつの間にか孵化し、
羽のない裸のヒナがあれよあれよと成長していくのだ。
六つ子なんて珍しくないから、おそ松くんもびっくり。
見事に手がかからない理想的な飼鳥だといえる。
思うに、この簡便さが受けたのだろう。
「鳥でも飼って家庭にうるおいをもたらそう」
「娘の情操教育にもってこいじゃないか」
「息子が生き物好きなので……」
勝手な思惑でジュウシマツは飼われ、そして増えた。
増えすぎた鳥は始末に困る。
親戚や近所に配るが、それでも余る。
仕方なしに外へ逃がされたジュウシマツも多かっただろう。
逃がされたジュウシマツこそいい迷惑であった。
繰り返すが、ジュウシマツという鳥は自然界には存在しない。
人の手から離れて生きていけるはずがないではないか。
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【ジュウシマツ】
江戸時代に中国から飼鳥として輸入されていたコシジロキンパラを、日本人が繁殖・飼育させやすい品種に改良したものといわれる。原種のコシジロキンパラは分布を拡大し、今日では沖縄島などでも見られる。
*おそ松くん
昭和37年「少年サンデー」への連載から始まった赤塚不二男の初期代表作。おそ松、カラ松、十四松、一松、チョロ松、トド松の六つ子よりも、脇のキャラクターであるチビ太やイヤミ、デカパン、ハタ坊などの活躍が印象に残る。特にイヤミのシェーは一世を風靡し、全国の小学生から大人までがあのポーズをとった。
※ 十姉妹の写真を提供して頂きました。
十姉妹の可愛い写真をもっと見たい方は…
画像元 ぴっこらのしっぽ http://www.eonet.ne.jp/~spica/pstop.html
2002年9月13日更新
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