第3回 おはるおばさん逢いに行くよ〜若造も紛れ込め!深川・佐賀界隈 |
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深川・門前仲町といえば深川不動に富岡八幡と、東京の下町を代表する古くからの門前町というイメージをもたれる方も多いだろう。鬼平犯科帳の鬼平こと長谷川平蔵は深川を本拠地としているし、池波正太郎を敬愛する作家山本一力も深川に居を構え、作品の多くに深川が登場するという。
そういった話は様々のメディアで出てくるし、別角度から今後取り上げることになるだろうから今回は回避して、門前仲町駅の東側のエリア、福住・永代・佐賀を巡ってみたい。
隅田川から水路が引かれ、縦横に張り巡らされた運河により、古くから物流の栄えたエリアで、現在も倉庫ばかりが目立っている。そうした景観とトラックばかりの道路状況により散策といった趣が殺がれるからだろう、歩行者そのものをあまりみかけない。しかし深川・富岡に隣接するエリアとあって倉庫の間に潜むように長屋群が数こそ減ってはいるが今なお散見できる。一角にはなんと井戸まで残っている。長屋の他にも、戦前と思しきちょっとした建築が時折顔を出す気の抜けないエリアとなっている。
そのなかで一際目立ち、ギャラリースペースになったりCMやドラマのロケで引っ張りだこだった食糧ビルも02年末に解体、今流のマンションへと変貌した。
食糧ビルは旧東京廻米問屋市場といい、米の市場だった。比較的近くにある浅草橋も隅田川の水運を生かした倉庫街から問屋街が形成されたというが、ここにも東京が水運の都市であった形跡をみることができる。
関東大震災でその木造建築が焼失し、昭和2年にレンガ建築に立て替えられたという。入口の美しいアーチを潜ると中庭がバーンと開ける。建物はこの中庭を囲む回廊式になっており、同潤会などにも見られた中庭のある空間は今日では贅沢極まりない造り。残念ながら自分は写真を残していないのだが、ネット検索するといろいろ出てくるのでそちらで往時の姿を見ていただきたい。
この食糧ビルのスグそばの交差点角にも入口上部の意匠の凝った建築があるのだが、この佇まい、見覚えのある方も多いことだろう。現在放映中のTVドラマ「バンビ〜ノ!」で松潤演じる主人公の働くイタリアンレストラン、トラットリア・バッカナーレ外観のロケ地となっている。この建物は旧村林商店といい、佐賀町スタジオとして用いられる1929年鉄筋コンクリート造の建物。
ちなみに松潤といえば「花より男子2(リターンズ)」でも主演をはっていたが、このドラマ内でも門前仲町ではないものの貴重な建築を拝むことができた。東日暮里にある、既に2棟しか現存していない最初期の鉄筋コンクリート造集合住宅である同潤会アパートの1つ、三ノ輪アパートである。
貧乏を極めた先の住まいというドラマ設定にあってよくぞセレクトした!と関心仕切りのベストロケーション。外壁をみてもその老朽化は激しく、同じ理由に解体された他の同潤会アパートと比べるべくもないほどの老朽化は深刻であったにもかかわらず、よく今まで生き残ってきたと感嘆してしまうが、取り壊しは以前から決まっていたようで、今年遂に解体が決行されるとの話だった。しかしこのドラマのロケの都合でとりあえず3月まで延期になったという。現在解体作業が着工されているかは未確認なので、確認でき次第この連載の中でお知らせしたいと思う。
さて話を門前仲町に戻して。この倉庫街の南側には永代通りが走り、道を挟んだ向かい側は倉庫はあるものの、民家が多い印象を受ける。永代通り南側は東へずっと木場にかけて、水路に沿って木造建築が連なる川端の情景が続く。以前の漁師町を思わせる風景だが、その中に傾いた木造家屋の中華そば屋が一際目を引く。名をおはるという。
店に入ろうと引き戸の左側の戸を引きかけると、ちょうど出前から帰ってきたお兄さんに入口の引き戸の左側から入るよう促された。入店するとなるほど、カウンターが扉の真ん中に位置していて、右側をあけると厨房へ入れるようになっていた。
カウンター5席に4人がけのテーブルが1卓。カウンターに腰掛け、拉麺¥500を注文。
外観どおり、実にオーソドックスに醤油の立ったラーメン。しかし動物系ダシのまろやかさがあって、嫌味になってない。食べ進むとまろやかさの中にある甘みに気づく。
麺は中太の縮麺ながらグダグダに茹ったものではなく、粉っぽい食感が残る実に絶妙な茹で具合。チャーシューは適度に肉厚で硬すぎず食べ応えがある。特筆すべきはメンマで、太めで味付けがなくコリコリした食感が相当にいい! これには本当にビックリした。
よくみると、テーブル席の壁にはポスターがあり、なんとこの店がモデルになっている。撮影慣れしているのだろうか、こちらが許可を求めると手馴れたようにOKしてくれた。お陰で空気感の濃厚な内観を収めることが出来た。
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中華そば おはる
11:30〜14:30
定休:土・日曜
江東区永代1-11
※時間等変更になる場合があります
著者ブログにも記事有 |
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予想以上の味と佇まいのスバラシさに感激したが、話の中で店のオバチャンに素直に伝えればよかったと後悔。でも自分のような若造が言うと嫌味になりがちなので、加減というのが難しい。これじゃまさにバンビーノ(若造)だが、まぁいいか、またくればいいだけの話である。今度は撮影じゃなく、ゆっくりと、フツーの味の上等なヤツを食べに。
2007年5月18日更新
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