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「ふろくの花園」タイトル

加藤真名
5.おしゃれ小物


 おもちゃ屋さんやお祭りの夜店に行くと、プラスチックの石がついた指輪やお花のついた髪かざりなどがセットになって売られています。金色の台紙の上に並べられたアクセサリーたちが照明の下でキラキラ輝くその様子は、少女の心をとらえるに充分でした。しかし、その豪華詰め合わせセットをそう簡単に買ってもらえるはずはなく、指をくわえてながめるだけが関の山。そんな少女の歯がゆい気持ちを知ってか知らずか、昭和30年代半ばから40年代はじめにかけてのふろくには、アクセサリーやおしゃれをするための小物が頻繁に登場していました。

おしゃれ小物のふろく

 まず目立っていたのがブローチ。多種多彩なデザインで少女の期待に応えます。そのほんの一例を。

お花:カーネーション、チューリップ、矢車草、コスモス、ひまわり
果物:ピーナッツ、りんご、いちご、パイナップル
動物・虫:小イヌ、てんとうむし、ちょうちょ、赤とんぼ
その他:スケートぐつ、本、パラソル、てぶくろ、登山帽&ピッケル、卓球ラケット、スキー板&ストック、風車、羽根つきの羽根、イギリスの兵隊さん、麦わら帽子

おしゃれ小物のふろく

 さらには「七つのブローチ(りぼん 昭和35年8月号)」や「1週間のブローチセット(なかよし 昭和37年8月号)」といった、お店では手が届かなかった憧れのブローチ詰め合わせセットも予想どおり現れました。次号予告に「これだけでもお店で買うと100円以上します」「まさにブローチのデパートです!」というお得感を煽るコピーが踊ると、少女たちはもう発売日が待ち遠しくてたまらなくなるのです。
 これらのブローチの多くはイラストを紙に印刷してピンに接着しただけのつくりではなく、立体的で凝った細工がふろくなりにも施されていました。手作りのような温かみが感じられ、実際の製造工程を見たわけではないのですが、つい、工場でおばさんたちが一つ一つ手作業でブローチを作っている様子を思い浮かべてしまいます。そうではないにしても、雑誌の数だけ完成させるのには、今よりもかなりの手間と時間がかかったのでしょうね。

 髪かざりもよく見られたふろくで、ブローチと同じくお花やちょうちょなどのデザインがありました。「いま東京ではやっている カチューシャかみかざり(りぼん 昭和33年11月号)」のように、この当時には「いま東京で大流行」「外国の少女のあいだで大流行」のコピーが決まり文句のように使われています。少しでも流行のものやススんだものがほしいという、少女の心を見透かした雑誌側の作戦勝ちともいえるでしょう。

おしゃれ小物のふろく

 その他、指輪「幸福のゆびわ(りぼん 昭和36年9月号)」やブレスレット「パールうでわ(なかよし 昭和37年5月号)」、ネックレス「鳥かごペンダント(りぼん 昭和36年7月号)をはじめ、ブラウスのえりにつける「かざりレース(りぼん 昭和36年5月号)」や帽子「春のフラワーハット(りぼん 昭和35年4月号)」、セカンドバッグ「お花のハンドバック(りぼん 昭和35年2月号)」まで、本当にこれがふろくなの? と思うほどの豪華な品揃え。これらが代わる代わる、ほぼ毎月ふろくにつくのです。当時の『りぼん』『なかよし』の値段はだいたい200円以下。そう考えると、心からこう思います。ああ、このころに少女時代をおくりたかった……

 お小遣いが少ない、欲しいものもなかなか買ってもらえない、今のように安いグッズがたくさんおいてある店も近所にない。楽しみは、学校帰りに友達同士でお店にかざってあるものを見て「いいな〜ほしいな〜」と言いあったり、自分のものになったときのことを想像してみたりすること。そんな、ナイナイづくしの少女にとって、雑誌を買うだけでキレイでかわいいアクセサリーが手に入るのはこのうえない喜びでした。しかしいくら凝ったデザインであっても、ふろくであるがゆえにほとんどが紙製で、指輪のわっかも実はゴム、ブローチのピンも安全ピン。すぐにボロボロになってしまいそうなこの小物たちを、あえて身につけずに部屋に飾ったり、宝石箱にしまっておいてときおり眺めるという少女も多かったそうです。しかしそれでも、彼女たちがふろくに愛着を持っていることに変わりはありません。

次回からは少女の憧れの世界を表現したふろくについて。

取材協力:弥生美術館


2003年9月2日更新
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4.ふろくでお勉強
3.別冊がいっぱい
2.『りぼん』『なかよし』が生まれた時代
1.ふろくって何?


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