鴻池綱孝
〈第四夜〉 マルサン商店『ウルトラマン』登場
66年夏。庭で水遊びをしていたのだから、かなり暑い日の出来事。
「爺さん婆さん」という駄菓子屋で『オマタのコーラ飴』を買い、『ゴジラ』(第三夜参照)を持って、マサタカ君ちへ参上。
『コーラ飴』は楕円形の棒付きキャンディーで、5円で売られていた。よくよく観察すると、飴に凸印で「オマタ」と彫ってある。
「オマタ」は、下ネタを誘発しやすい名だ。発音するだけで楽しくなってしまう。僕らのあいだでは、(1)飴を持った腕をグイと伸ばし、(2)照準を太陽に合わせ、つまり、飴越しに太陽を捉え、(3)「オ・マ・タァ〜!」と絶叫する、という意味無しギャグが流行っていた。そんなギャグとは裏腹に、キラキラと透過する飴色の光にウットリとなった僕だった。
この日の戦場は屋外だった。半裸のなった二人は、たがいに水をかけ合い、かなりエキサイトしていた。マサタカは乱暴な男だった。ソフビ怪獣は関節技に弱い。彼の執拗な攻撃に『僕ゴジ』の股間接は悲鳴を上げた!脚の嵌着が切れてしまったのだ。(嵌着とは怪獣の手足などを嵌め合わせている部分で、成型上、肉厚が薄く切れやすい。タフなソフビ怪獣の最大の弱点!)
マサタカの母親は、マサタカの乱暴を叱り、彼は泣いた。僕には怪獣を買ってくれる事でオトシマエをつけた。
神楽坂に「かやの木」という小さなおもちゃ屋あった。入り口には、ビニール袋に入った、たくさんの怪獣どもがツリー状に下がっていた。何も迷うことは無かった。これを買わずして、何をか買わんや。
それは『ウルトラマン』スタンダードサイズ¥350だ!『ゴジラ』損傷は痛かったが,間違えなく棚ボタだ。便乗で、マサタカも同じ物を買った。ちょっと納得いかない話だ。
同じ店で二人同時に買った『ウルトラマン』。即行開封。けれども、これが同じ物ではなかった。マサタカの『それ』は一目で変だった。目や鼻(?)の形状も微妙に違うのだが、子供の目にも明らかに違っていたのは、耳の形だ。「ぶわぁぁぁ〜ニセモンだぁ〜!」
左が最初期マン、右が改訂マンの勇姿。目に色が塗られていないのは、マルサンがプラカラーを売りたいが為!だったらしい。僕は「?」マークのマジックで黄色に塗ってしまったが・・・ |
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WINKじゃありません。変でしょ、耳。最初見た時、キモ悪かったなぁ〜。材質が
ツヤツヤなのも特徴。 |
赤いのは通称「酔っ払いウルトラマン」ブルマァク製。発注ミスのエラー品だが、発売してしまった商品。
戦意喪失、座っちまってるのは、マルサン商店「あかちゃんシリーズ」。これもある意味、「酔拳」。 |
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しかしながら、これは偽物ではない。写真資料がない為、簡易な三面図イラストから製作された最初期生産分のものだ。そして、早々に、本物に似せた改訂版(通称第二期)が発売された。その二つがそこで同時に売られていた事になる。S41年7〜8月の頃のはなしだ。
いまどきのコレクターの価値では、前者は第一期生産分、通称「一期・耳切れ」といわれ、希少性から珍重されるのだが、当時は、そうは問屋が卸さない!ってなもんで、ここぞとばかり、『ニセウルトラマン』の烙印を押し、ボコボコに攻撃(精神攻撃)する僕なのでした。
『ゴジラ』の復讐ここに完了せり!
つづく…
2002年7月8日更新
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