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田端宏章

第6回 カラーブックスの魅力


 昭和37(1962)年4月、大阪で文庫本サイズの新しいビジュアルブックが誕生しました。その名は「カラーブックス」。図鑑専門出版社「保育社」から発売されたこのシリーズは、以後、30年以上にも渡り、「色々なジャンルの情報を提供するビジュアルな小百科」として大活躍しました。創刊当時のコピーは、「カラー写真による、見る文庫の誕生!レジャーを活かす、現代人のホームライブラリー!」というものでした。GOLDFISH創刊第1回配本は「ヒマラヤ ─秘境に生きる人びと─」。以下、「桂離宮」「犬」「切花200種」「サボテン」「皇居」「熱帯魚」「東海道」「ハワイ」と続きます。昔、一家に一冊はあったというカラーブックスですが、時代の流れからか、こうしたカラー文庫はいつしか時代遅れとなり、かつて隆盛を極めた百科事典や図鑑シリーズの売り上げも減少。そして、発行元の保育社は、1999年11月に不渡りで和議申請、負債総額は2億2千万円。現在、同社は在庫の販売のみを行なっており、新しいカラーブックスは発売されていません。
 私はここ数年、古本屋に行ってはカラーブックスを探し、興味深いジャンルのものがあれば必ず購入しています。ヒマラヤそんなこんなで集まったカラーブックスの数は80冊以上。たいていの古本屋さんでは、100円コーナーに置いてあるか高くても300円代で買えるので、とても集めやすい本です。しかし、その種類は膨大にあり、その大半が絶版のため、中には希少価値がついているものもあります。「珍本古書」というタイトルのカラーブックスは、まさしく、その本こそが珍本古書になっているという皮肉な結果になっています。
 私がこのシリーズに興味を示したのは、創刊当時の60年代テイストを今も変えていないところにあります。そして、このシリーズには「昭和」という時代の匂いが強く残っているのです。ビジュアルセンスも良く、その本が作られた時代の「空気」がそのまま写真で記録されているところも魅力の一つです。小品盆栽能や歌舞伎、盆栽など、スタンダードな日本文化を外国にも紹介している「英文版カラーブックス」というものもありますが、まさに、カラーブックスは日本が世界に誇るビジュアル文庫でした。
 鉄道マニアの友人は、「カラーブックスは、鉄ちゃんにとって安くて詳しい手ごろな本だった。そんな本がなくなるのは本当に忍びない」と言っておりました。カラーブックスの鉄道シリーズは有名でしたが、他にも園芸や温泉、食べ歩きなど、このシリーズにお世話になっている人は数知れません。しかし、時代の流れには逆らえなかったようです…。
 最近、このまま日本はどうなってしまうのだろうと不安になることがあります。100円ショップ文化と新興住宅地が増え続けるような今だからこそ、カラーブックスのような本が頑張ってほしいと思うのは、やはり私だけなのでしょうか?…

(たばたひろあき 会社員)


2002年8月14日更新
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