東京には定番の散策スポットというのがあるのだが、その一つ、映画『男はつらいよ』シリーズの舞台としても全国区の知名度を誇る柴又、その隣が今回の舞台。柴又とは京成金町線という2駅しかない東京のローカル線で繋がっているものの、南口の商店はシャッターも目立ち寂しげで、どこか三業地的空気が漂っていたのだが、再開発の手が伸び、昔ながらの背丈の低い街並みがノッポの空間へと様変わりしていっている。
そんな南口に今は用無しと北口に出る。駅前から西へと続く細い路地には活気溢れる商店が連なる。10円単位の品々が並ぶ激安惣菜の誘惑を振り切り、行き交う自転車を交わしながら進むと、屋上が自動車教習所になっている世にも奇妙なイトーヨーカドーが現れる。
この脇、駅からイトーヨーカドーに沿って湾曲するように道が繋がっている跡がある。三菱製紙・ガス化学東京工場へ続く貨物の専用線が走っていた箇所で、まさしく廃線跡である。その他に金町駅からの貨物線として、砂町などを経由して(金町−新小岩の新金線)、越中島へ至る線(新小岩−越中島の越中島線)もある。こちらは現在も路線は残っており取材済みなので追って取り上げるが、幸いにも三菱専用線は線路が撤去されようとしている最中に写真に納めることが出来たのでご覧頂きたい。
イトーヨーカドーから三菱までの間、地図上の緑色の蛇行する帯に当る箇所は、人家のすぐ裏手を通っていることでも人気も迫力もあった特異な路線だった。
その先、三菱製紙情報システム部金町センター脇の道路には踏切があった。ここから先が三菱のエリアとなっている。現在は再開発に向け工事が進み、信号機も目隠しされ、周囲は白いフェンスが張り巡らされている。どこからかアレが見れないものかと、うろついてみる。アレというのは、常磐線の車窓から伺える謎の球体のことで、勝手にタコと命名していた。
確かこの辺だったかなぁという位置まで来ると、フェンスの間に隙間を見つけた。覗いてみると・・・デカッ! 錆びた球体は砂利の平原にポツンと、異様な存在感だ。その脇には煉瓦物件があり、タコと並ぶとさらに存在感が増す。なんとも素晴らしい。
後に知り得たことだがこのタコ、三菱製紙で用いられていた「蒸し釜」と呼ばれるもので、球状の中の空洞に古紙を入れ、それを水蒸気・薬品等で繊維を分解し、紙の原料として再使用するためのものなのだという。貴重なモニュメントとして保存が決定しているようだが、隣接する煉瓦倉庫は解体では?と専らの噂。この地に再開発でマンションでも建ったなら、そこで生まる子供はこのタコをみて何を思うのだろうか。
タコとの対面に感動しているといつもの如くお腹が空いて来た。桜の名所としても知られる金町の憩いのスポット水元公園方面へと歩を進める。この辺りは住宅街ながら古い民家は見当たらず、整備された歩道も幅がとってあり歩きやすい。
もうすぐ水元公園というところで宮造様式の立派な銭湯が出迎えてくれる(ゆたか湯[現在廃業])。この向かいにまるきゅうという本当なら紹介したかったラーメン店があったのだが、閉店してしまった。
この先の交差点を左折すると、道幅の広い郊外的な車道になる。沿道には外食などチェーン店舗の大きな看板が目に付いてくる。とその中に紛れるように、70年代に遡ったかのようなドライブイン的外観の店舗に目が奪われる。ここが阿明(あみん)。
看板に大きく牛肉麺が謳われているように、どうも台湾ラーメンの店のようだ。店内に入るとメニューがカウンター上部にぶら下がっていて、この感じも雰囲気を盛り上げている。牛肉麺の900円という値段に怯み、ここは基本をと、らーめん(太麺)¥500に。
ワンコインでチャーシューも煮卵も乗るのには驚くが、一番注目したのがスープの黒さ。日本で台湾的なラーメンといえば、揚げネギ若しくは焦がしネギがラード代わりに乗り、白い太めの麺と絡みネギの独特の甘みが堪能できるもの。ここのはそれとはやや性質を異にするが、ややあっさりに感じるスープの中に独特の焦げ臭に似た風味がある。
麺は柔らかめのいわゆる中華麺だったが、チャーシューは赤身メインで適度に柔らかく、小さめながら肉を食べてる満足感があった。
店の雰囲気を含め、いい意味でライトな味が妙に気に入ってしまったが、クセがあるので食べ手選ぶだろうなぁ。
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らーめん 阿明
11:00〜14:00/17:30〜21:30
定休:水曜
葛飾区南水元4-17
※時間等変更の場合があります
詳細なレポは著者ブログ記事参照 |
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さてさて今回はまだ続きがある。折角駅から遠いところまで来たのだから、腹ごなしも兼ねてぷらついてみたい。ひとっ風呂浴びたいしね。
郊外な道路を西へ向かうと金町清掃工場が見えてくる。まだ新しさが感じられ、デザインに面白みが見出せなかったのだが、世も深けてくるとデカいだけあって圧迫感を感じる。
夜歩きの寂しさが身に染みる風景を進むと川風も染みる飯塚橋で中川を渡る。橋の袂になにやら煙突のようなモニュメントが見えてきた。いやあれは温泉掘削のボーリングのヤツだ。スーパー銭湯独特の空虚な清潔感が気にはなるが、泉質には期待させられてしまう。
脱衣場に洗い場の壁、果ては桶に至るまで木が用いられレトロな雰囲気で統一されている。温泉はヒノキ作りの浴槽で、湯治場のようなイメージ。湯の色は黄金色で緑茶のように緑がかっていてここは都内か!?と驚くほど湯が濃い。
露天は残念ながら無色透明の湯。温度は温めで長湯にはちょうどいい。周囲には野趣溢れる草木が植えられていて相当凝っている。浸かっていると葉陰から他の客の裸体が見え隠れして、はじめ人間ゴン状態。
常連と思しきオッサン同士の話しによると今日は源泉の日で普段は湯船の底が透けて見えるほどに薄いという。脱衣場の掲示をみると週に一度、平日に設定されていた。午前や夜間なら¥600。源泉の日を目掛ければこりゃ相当お得だなと入浴後コーヒー牛乳をグビグビ飲みながら思うのだった・・・にしても、ここからどうやって帰ろう? その後はまたいずれ。
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大谷田温泉 明神の湯
10:00〜24:00(最終入館受付23:00)
定休:第3火曜日
足立区大谷田1-18-1
※時間等変更になる場合があります
公式サイト
詳細なレポは著者ブログ記事参照 |
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2007年6月8日更新
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