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6.気分はバレリーナ |
子供の頃にバレエ漫画を読んで「私もチュチュを着て、トゥシューズをはいて、きれいなポーズをしてみたい。あんなふうに舞台に立って踊ってみたい」こう思ったり、熱が高じて実際にバレエを習い始めた人、いるのではないですか? 実は私もその一人です。ただし観るだけなのですが。
きれいな衣装、そして訓練を積んだ肉体が描き出すポーズの美しさ。少女たちがバレエの世界に憧れを抱かないわけはありません。
バレエ、主にクラシックバレエが少女漫画の題材として扱われはじめたのは昭和30年代はじめごろ。そこに描かれる美しく華やかな世界と、努力をし困難を乗り越え夢をかなえるというサクセスストーリーは瞬く間に少女漫画の主要ジャンルとなり、雑誌のどこを開いても女の子が踊っているといってもよいくらいのバレエブームを巻き起こしました。
巻頭のカラーグラビアでも松島トモ子さんをはじめとする子役スターがバレリーナ姿を披露しており、中には京都のお寺や富士山をバックにポーズをとるという、今見ると少々妙な感じがするものも。このグラビアには子役スターにまじって世界的バレリーナの森下洋子さんもでていたんですよ。
そして本誌だけではなく、ふろくにも当然のようにバレエの波が押し寄せます。この時代にはバレリーナのイラストが描かれたふろく、バレエをとりあげたふろくが多数見られました。以下はそのほんの一部ですが、ときおり「バレー」になっているのはご愛嬌ですね。
・バレー写真集(なかよし 昭和33年9月号)
・バレーかべかけ(なかよし 昭和34年6月号)
・美しいバレエえはがき(りぼん 昭和35年2月号)
・うごくバレエ舞台 白鳥の湖えはがき(りぼん 昭和35年6月号)
・バレーモビール(なかよし 昭和37年5月号)
・バレーのおたよりセット(なかよし 昭和37年7月号)
・バレーカレンダー(りぼん 昭和38年1月号)
・バレーシール(りぼん 昭和38年2月号)
・バレエトランプ(りぼん 昭和41年9月号)
・バレーきせかえ人形(なかよし 昭和42年3月号)
・バレエおしゃれ宝石箱(なかよし 昭和43年5月号)
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メインになっていたのは「絵はがき」「びんせん・ふうとう」「かべかけ」などのバレエの美しいイラストや写真を楽しむブロマイド系。このほかに「バレエケース(なかよし
昭和37年1月号)」のように小脇に抱えて持ち歩けるものもありました。
「バレエセット(りぼん 昭和36年11月号)」はチュチュの小物入れと赤いトゥシューズのブローチがセットになったふろく。台紙にセットされた様子はバレエの雰囲気が充分です。本物を模してつくられたふろくであってもバレエ用品が自分のものになるのですから、バレエ好きの少女たちにはたまらなかったでしょう。
「バレエかるた(りぼん 昭和36年1月号)」は44組の札で遊びながら、バレエの世界を覗けます。絵札のかわいらしさだけではなく、読み札でも「白いかんむりオデット姫」「りょう手ひろげてバレエのおじぎ」「ぬののくつ
あこがれのトウシューズ」「ちゅうにふんわり すてきなポーズ」とバレエのいろいろな場面を表現。しかし中には「とうとうなきだす
きびしいけいこ」「ふとらぬように ごはん一ぜん」という札もあり、憧れの世界の舞台裏を垣間見る一面も。
これらのふろくがついていた時代、上流階級的な雰囲気や金銭的な面で、バレエは今よりも敷居が高かったとのこと。学校でも習っている子はまだ少なく、いたとしてもやっぱりお金持ちのお嬢さまらしい子でした。バレエを習いたくても習えない少女たちは、その子に対し羨望のまなざしを容赦なくあびせていたそうです。
バレリーナになることは憧れで終わるかもしれません。しかし少女たちは漫画やふろくでバレエの雰囲気にひたり、バレリーナ気分を味わうことができたのです。
次回も「夢の世界・きれいな衣装への憧れ」について。
取材協力:弥生美術館
2003年9月24日更新
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