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串間努エッセンシャルリンス

第2回「シャンプーの変遷」の巻


 銭湯が好きだ。冷え性な私は、大きな湯船に足を伸ばしてつかっていると疲れがたちまちとれる。徹夜で仕事して原稿書きおわったときに、ふと時計をみたら午後4時。なんだ銭湯開いてるじゃん。てな感じでタオルをつかんで銭湯に向かう。ところが、時々シャンプーを忘れてしまい、仕方なく石鹸で髪を洗うことがある。油分がすべてとれてしまい、ゴワゴワになる。なんだかイヤんなっちゃうが、よく考えるとついこの間まで、私たちはシャンプーを使わず、石鹸で頭を洗っていたのだ。

 シャンプーそのものは大正時代からあったという。紙の箱に入っており「髪洗い粉」と呼ばれるものである。商品名に最初に「シャンプー」がついたものは昭和元年の葛原工業「モダンシャンプー」である。戦前にはライオン、花王、資生堂、美香園らがシャンプーを発売していた。
 戦前と戦後しばらくは男の髪型は短髪が主流だったし、女性も月に2〜3回しか頭髪を洗わなかったという。毎日「朝シャン」するなんて夢の時代の話だ。内風呂も普及していないから銭湯に行かなければならない。庶民はお金がないから毎日銭湯にはいけない。頭を毎日洗うなんてブルジョアのやることである。男性も女性も頭は脂臭かった。男は特に新陳代謝が活発なので脂まみれになる、その匂いを消すためにポマードや整髪料をたくさんつける。だから昔の観光バスや喫茶店のイスの背には頭についた油脂を受ける白布があてられてあった。みなさんも家庭内では白い枕カバーをしていたという思い出があるだろう(最近は枕カバーをあまり見ませんね)。
 昭和30年に発売された、粉末の花王フェザーシャンプーでようやくシャンプーマーケットができたとみていい。牛乳石鹸、玉の肌、ミツワ石鹸らが市場参入、そして東京オリンピックの昭和39年を境に、粉から液状・ペースト状(チューブ入り)への移行が活発となる。昭和39年には玉の肌が「リンスシャンプー」を発売しているほどだ。リンスインシャンプーの元祖である。

エメロンシャンプー 画期的だったのが昭和40年のライオンエメロンシャンプー。ラベンダーとジャスミンの香りがつき、ボトルが半透明ということがうけてたちまちトップブランドとなる。
 大阪万博の年、昭和45年からオイルタイプ、クリームタイプが登場し、高級化の時代となった。
 まず、高い割にパッケージが貧弱で失敗した花王「フェザーオイルシャンプー」(昭和44年)に対してライオンの「エメロンオイルシャンプー」(45年)が高級イメージとよい香りでオイルシャンプーのトップヘ登り、続いて45年のエメロンクリームリンスも、ハニーナイツが歌う「ふりむかないで」でお馴染のCM、『日本縦断ふりむき娘』の企画で大当りした。花王はこれに対抗して同年、メリットシャンプーというフケ取り効果が高い、機能性重視路線をとる(CMでは47年の「律子さん、律子さん、さわやか律子さん」<花王フェザーシャンプー>があたった)。それに対してライオンは「グリーンシャンプー」(48年。のちにエチケットシャンプーとなる)をぶつけるが、メリットの基盤は揺るがない。
 我が道を行ったのがサンスターで、昭和 43年にトニックシャンプーを登場させ、男性用というジャンルを開拓した。メンソールですっきりするが、子どもにとっては使いたいのに使うとたちまち目にしみる思い出の、痛いシャンプーだ。そのことを償うようにか、翌年には「ヘリコプターシャンプー」を発売、ヒーローの容姿を象った容器入りの、サンスター「おもちゃシャンプー」の歴史が始まるのは偶然か。
 昭和49年に花王は粉末シャンプーの発売をやめ、翌年の「エッセンシャルシャンプー」から新しい時代にはいる。この商品が『キューティクル』ということばを流行させ、単にゴシゴシと力強く脂を落とせばいいわけではないことを教えてくれた。
 昭和52年にはピンクレディーをイメージキャラクターに起用して牛乳石鹸共進社の「シャワランシャンプー」が大ヒットした。
シャワランシャンプー55年に円筒形の容器のライオン「アクアミー」が「髪の水分整える」をコンセプトに登場し(開発チームには現アスクル社長もいた)、豊年リーバが昭和51年に発売した「サンシルク」以来の髪質別にこだわったシャンプー作りももはや定着したといえよう。
 50年代後半は香りを重視した商品がヒット。ライオンのフルーツシャワーだ。カプセルに香りの成分が入っていて、「フルーつぶ」が洗いながらはじけるしかけが面白かった。また、資生堂は「恋コロンシャンプー」を出した。ちょうど私が高校生の時で、教室中がシャンプーの匂いで埋まっていた。そして昭和59年の「ティモテ」シャンプーがハーブを使い、大ヒット、匂いの競争にピリオドを打つ。
 最初の頃、リンスは桶にキャップ1杯のリンスを溶かしてそれを髪になじませるものだった。そのうち直接手で髪につけるようになったが、それでも面倒くさいのか、リンスをシャンプーに最初から混合した「リンプ?が、昭和63年に資生堂から発売され、平成になるや次々にリンス入りシャンプーが登場。あとの歴史は読者諸賢のご記憶の通りである。
 シャンプー、、ほとんどのバリエーションが出尽くした感があるが、最近は地球にやさしいということを反映し、アロエや海草など、植物成分を配合したものが多くなっている。

●「報知新聞」に掲載したものを大幅加筆改稿


2002年5月31日更新
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第1回「レトロスタイルを気取るなら『スモカ』で行こう!」の巻


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