園長 ペリプラ葉古
その6−カッパ
おや、池がありますね。
水が緑に濁っていて底が見えないけれど、なんだか深そう。
え、カッパというプレートが掲げられています。
まさかあ? でも見てみたいですねえ。
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カッパはいた。
昔の日本には本当にいた。
見たことはなかったが、いたことは知っている。
学校の先生のいうことには、
なんでも沼や川のよどみに住んでいて、
子どもがそんな場所で泳ごうとすると足を引っ張るらしい。
実際に溺れかけた友人に聞いてみると、
カッパに握られたふくらはぎは恐怖で硬直したという。
冷たい水のせいで筋肉がつったんじゃないかって?
冗談じゃない。
カッパのしわざに決まっている。
うちの母ちゃんのいうことには、
なんでもときどきぽっとん便所の底にも現れて、
ひとりで夜中に用を足そうとすると長い手を伸ばすらしい。
現場は押さえられないが聞くところによると、
カッパは肛門から尻子玉を抜いていくのだという。
ばかばかしいと笑うあなたは尻子玉を持っているのか?
ざま見るがいい。
カッパがとったに決まっている。
農家のおばさんのいうことには、
なんでも陸上にもあがれることができて、
畑からきゅうりを盗んで一目散に水に帰るらしい。
長い間伝承された言い伝えによると、
カッパは頭の皿が乾くと死んでしまうのだという。
よく遺跡から陶器のかけらが出土するのを知っているか?
ああおそろしい。
カッパの遺品に決まっている。
物識り兄ちゃんのいうことには、
河川や池に暮らしているのに姿が見づらく、
昔に比べるとますます数が激減しているらしい。
科学的な見地から類推すると、
カッパはカワウソの見間違えなのだという。
では聞くがカワウソは緑の肌で背中に甲羅を背負ってるか?
ばかにしてはいけない。
カッパはいるに決まっている。
カッパは寂しがりやだから、
人間の子どもが遊んでやらないと悲しくて死んでしまうのだ。
川には護岸が施され、沼は鉄条網で囲われた。
子どもたちは池や川では遊ばなくなってしまった。
ぽっとん便所はことごとく水洗化された。
若者はウォシュレットなしには用も足せなくなってしまった。
畑はなくなり温室で薄味の野菜が出回った。
カッパの居場所はどこにもなくなってしまったのだ。
カッパはいた。
昔の日本には本当にいた。
見たことはなかったが、いたことは知っている。
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【カッパ】
確実な目撃例が少なく、いまだに分類学上の位置づけが曖昧な国
産の大型哺乳類。これと間違えられることもあるカワウソは食肉
目イタチ科の水生哺乳類。カッパはもとより、ニホンカワウソも
すでに絶滅したといわれている。
2002年11月6日更新
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