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7.ステキな衣裳を着てみたい |
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バレエが好きな少女たちにその理由を尋ねたとき、あのフワっとしてキラキラ光る独特の衣装「チュチュ」を着てみたいからと答える子は少なくないでしょう。ほかにもお姫様のドレス、バスガイドやスチュワーデスの制服など、少女たちが憧れるステキな衣裳はたくさんあります。
ただ、その衣裳を本来の目的で着るためには、たとえばバレエならば舞台に立てなくてはならないし、お姫様ならばそれなりの身分に生まれなければならない、制服ならばその職業につかなければなりません。変化球としてモデルになるという手もありますが、それもまたさらに狭き門でしょう。
色合いやデザインがキレイだから、というだけではなく、誰でもすぐ簡単に着られるようになるとは限らない。それゆえに少女たちは選ばれた人しか着ることのできない、ある意味「特別」な衣裳とその世界に憧れを抱くのかもしれません。
そして、これから紹介する日本ならではの装いも、少女たちが憧れるのに充分な美しさと華やかさと、「特別」な世界を持ちあわせているのです。
京都・祇園の舞子さん。花かんざしと白塗りの化粧、「ひきずり」とよばれる独特の振袖に、座ると畳についてしまいそうな、いわゆる「だらりの帯」を背中に垂らし、おこぼをぽっくりと鳴らしながら街を行き交う様はまさに「京都の華」。昭和40年前後の『りぼん』『なかよし』のふろくには、バレエほどではないにしろ、あでやかな舞子さんのイラストがよく描かれていました。絵はがき、レターセット、メモ、シールなどのほか、においぶくろやぽっくり(おこぼ)の形のブローチ(共にりぼん
昭和39年6月号)までも登場し、京都の香りを少女たちに届けています。
さらには舞子さんづくしの「舞子さんセット」なるものも。この中身をみてみましょうか。
(りぼん 昭和42年2月号)
・舞子さん絵はがき
・舞子さん時間表スタンド
・舞子さんびょうぶ
・舞子さんしおり
・舞子さんシール
・舞子さん千代紙
・京都名所カード
(りぼん 昭和43年6月号)
・舞子さんブローチ
・舞子さんお便り小箱
・舞子さんおたよりセット(びんせん、ふうとう、絵はがき、シール など) |
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その姿の華やかさから、舞子さんに憧れる少女はたくさんいます。しかし、そもそも舞子さん(舞妓さん)とは、お座敷で舞のほか歌や三味線などの芸を披露する「芸妓さん」になるための、いわばまだ修行中の少女たち。芸や作法などの厳しいお稽古とお座敷努めに明け暮れて、一人前の芸妓さんになるための努力を日々重ねているという、ステキな衣裳への憧れだけではとてもつとまらない世界なのです。さらに、舞子さんになるためにはまず「仕込みさん」としてこの世界に足を踏み入れるのですが、今では置屋さんの数が減ってきたこともあり、それすらかなり難しいそう。
「舞子さんにはなれないけど、舞子さんの格好だけでもしてみたいなあ」
こんな人のために、観光客向けの「舞子さん変身体験」なるものをやっているところがあるようで、舞子さんの格好をさせてもらって、写真を撮ったり、街を散策したりできるとのこと。これがまた大変な人気を呼んでいて、着付けや化粧に時間がかかっても、着物や結った髪が重くても、京都を訪れる女性たちは、つかのまの「舞子さん体験」をこうして楽しむことができるのです。
この時期に舞子さんが多くとりあげられた背景には、昭和39年の東海道新幹線開通および東京オリンピック開催によって、外国人も含めた観光客の目が古都・京都に向いたこともあったのでしょう。「そうだ 京都、行こう」というJR東海のCMではないですが、平安の風情を現在に残し、特有の雅な雰囲気を醸し出す京の都に人々はひかれつづけるのかもしれませんね。
一方、洋装のドレスに憧れを抱く少女に向けられたのが、フランス人形をかたどったふろくです。
フワッとしたドレスのふくらみを立体的に再現した「花のフランス人形(なかよし昭和37年1月号)」や、フランス人形のきせかえセットなどがありました。紙でつくった人形やきせかえ用のドレスとはいえ、少女たちはこれらのステキな衣裳とふれあうことによって、お城や舞踏会といったお姫様の世界を頭に描いていたことでしょう。
そして、それはそのまま海の向こうの遠い世界、外国への憧れともつながっていくのです。
次回はその海の向こうの遠い世界、外国をとりあげたふろくについて。
2003年11月5日更新
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