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のりものかばんの一部

ボール紙の車掌の腕章

串間努

第8回「バスと電車の車掌さん」の巻


 ボクが四、五歳頃までは、子供どもの世界には5円玉が通用した。
 バスの整理券方式が始まって、いつもまにやらハンパは切り上げになったけれど、銭湯でもバスでも大人の半額で、5円単位まできっちりと取られた。ときには穴が空いていない5円玉が流通してきた。マルカワの玉ガムも1箱5円だった。5円の駄菓子はオイルショックとともにいっせいに10円になった。
 ボクは将来の職業はバスの車掌さんだと決めていた。
電車かばんの裏 今でこそどんな細道でもアスファルトで舗装されているが、この頃の日本の道路はまだ舗装が充分ではなかった。当然、土煙が巻き起こるし、排気ガスもすごい。ローカルな話になるが、千葉駅から出ている中距離バスで「大和田行き」というのがあり、これはバス道路といってもガタガタ道を長時間通るので、終点まで乗ると、気持ちが悪くなる人が続出といううわさのバス路線だった。サスペンションも今より悪かっただろうし、床は木だったので板に塗ってある油も悪気を催す原因だ。
パンチ 小さい頃は新聞紙を切って束ねてバスの切符を作り、車掌さんごっこをするのが大好きで、ドアを開け閉めしながら「次は市役所。お降りの方はお知らせ願います」と連呼していた。母が「降ります」と言うと、車掌さんよろしく「ねがいまーす」と喉にくぐもった声を出す。ここで本物は車掌がブザーを「ブブー」とならし、運転手が分かったしるしに「ビビー」(音が微妙に違うのだ)と応答ブザーを出す。ごっこでは私が口でブブーと言うのだが、母は台詞が分かっていないのでビビーと応えてくれないのだ。「ぼくがブブーと行ったらビビーって言って」と一生懸命、台本を説明していたのであった。だけど母は高峰三枝子司会の「三時のあなた」に夢中で、自分のセリフに身が入らないのであった。
のりものかばん 父にはくず切符入れをせがんで作ってもらった。最初は車掌さんは手でバタンバタンと折り畳みドアを開閉していたのだが、途中で自動ドアが開発され、丸い取っ手がついたレバーでシュルルとスライド開閉するのだ。このレバーを動かすしぐさも、やる気のなさでなげやりに掴んでポーンと軽く抛る感じでやる男車掌もいた。子どもの観察力は中々あなどれないのであった。昭和43年当時は頭部が突き出たボンネットバスがまだあった。行き先を書いた方向表示を読んでは「あれ何て読むの」と地名を母に尋ねて、漢字を覚えていた。なぜか昭和40年代だというのに「国鉄千葉駅」は「國鐵千葉駅」と難しく表記されていた。その千葉駅のバス乗り場には大きな路線看板図があり、ヒマさえあればそれを写して自分でバス路線図を作っていた。「別荘下」とか「五井埋立地」とか行ったことのない未知の場所はどんなところかなあと空想するのが楽しかったのだ。

電車かばん

のりものかばんと電車かばんの中

 バスのほか、電車の車掌も好きだった。よく、駅の売店の軒先に新幹線や電車のプラスチックモデルにチョコレートが入っているものや、双眼鏡、お菓子の詰め合わせなどがぶら下がっていたが、「電車のカバン」という玩具もそれらと混じって下がっていた。ボール紙でできた紙カバンの中に、切符・パンチ・笛・腕章・帽子などが入っている。帽子といってもひさしの部分だけがあって、これを輪ゴムで頭に止める。腕章も輪ゴムで止める。切符・パンチ・笛・腕章・帽子切符切りのパンチも、リアルな重い金属製のがある一方、安いもタイプには軽いアルミ製のが入っていた。切符は新幹線やらロープウエイやらトロリーバスなどいろんな交通機関が入っていて、いったいこの車掌はどんな車掌? という感じだ。さらにボクはそんな上等な乗り物には乗ったことがなくて、絵本でみただけであるからピンと来ない。
 聞くところによると、現在、電車のカバンを製造するメーカーはないという。残念だ。もはやカードや自動改札の時代になり、硬くて発着の駅名が印字されている切符なんて使ったことがない若い世代も多いだろう。
 こんなにバスや鉄道が好きだったけれど、ボクはいわゆる鉄道マニアにはならなかった。とても不思議である。

のりものかばんの裏

「はるか」を改稿


2003年5月21日更新
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