温泉地を訪ねるとき、「秘湯」とか「鄙びている」といったキーワードでも検索するのだが、那須湯本で見つけたのは老松温泉喜楽旅館。温泉街から川を隔てて1軒だけぽつんと建つロケーションも含め、訪れる価値としてはじゅうぶん過ぎる。
那須街道からの進入路となる旭橋のたもとには「那須の名湯」との看板が立ち、途中から未舗装となって今度は「那須の珍湯」という石碑。倉庫なのか車庫なのか知らんが、使われなくなって放置された建物には、ガラクタとともに首だけの人形も捨てられていた。
そして、ようやく宿の看板が見えた。
通りに向かい合う2つの建物はいずれも傷みが激しく、川に面した建物にいたっては外壁が剥がれ落ち、崖下に瓦礫が散乱している。室内は家具や食器がめちゃくちゃ。どうしてこうなったか。どうしてこのままなのか。「考えるな、感じろ」というブルース・リーの台詞を思い出した。
受付を兼ねた自宅を訪ねると、おじさんは居間の炬燵で寝ころびながらテレビを観ていた。お風呂に入りたい旨を告げるが、おじさんは半身の姿勢のまま、何かを考えて沈黙。旅館は「鄙び」を通り越し、廃墟に近づきつつある。おじさんはやる気を失くしてしまったのか!?営業を辞めてしまったのか!? ......と思いきやそうではなく、半分くらいしかお湯が入っていないとのこと。朝からボイラーの調子が悪く、お湯を全部抜いて入れ直したが、「女性のお客さんが来ちゃったから止めちゃった」。いまいち理解できなかったが、「温いからゆっくり入っていってね」との返事を貰い、いよいよ旅館の中へ。
「女性のお客さんが......」との話から混浴の期待も頭をよぎったが、靴で想像する限りでは中高年か。脱衣所には男湯と女湯の暖簾がかかっており、姿を拝見することはできなかったが、ここを訪れる女性客とはよほどの物好きだろう。
ここまで相当のオンボロ具合を見せつけられたせいか、浴室はむしろまともに感じた。温泉の成分や年月の積み重ねによって、壁などは緑に変色した箇所もあり、また真っ白な湯の花がうっすらと付着している。湯船は2つ並んでいるが、片方だけにしかお湯が入っておらず、しかも湯船の半分ほど。そして人肌程度の温さ。パイプに付いた蛇口をひねってみても、冷たい水しか出てこない。諦めて寝湯のようにして身体を沈めていたら、かなり長い時間寝てしまったようだ。
老松温泉喜楽旅館
源泉/老松温泉(泉質不明)
住所/栃木県那須郡那須町湯本181
電話/0287-76-2235
交通/那須街道(県道17号線)旭橋より約400m
料金/大人500円、小人300円(0歳~10歳)
※45分以内
時間/8:00~20:00、年中無休
個人的な都合により長らく更新が滞ってしまい申し訳ないです。
ネタのストックは存分ありますので、今後はマイペースに更新していきたいと思います。
乞うご期待!?