山梨県の温泉の最近のブログ記事

連日の猛暑、さらには節電が叫ばれる今年の夏。いかに涼しく乗り切るかは、皆さんにとっても最大の関心事だろう。暑い時には熱いお茶を飲むと良いとは言うが、暑い時こそ温泉に、というと正直しんどい。やはり夏は水風呂に限る。サウナで汗だくになったあと、くらくらになるまで水風呂に浸かる。さながら修行僧の気分だが、水風呂も冷たすぎると身体に負担がかかって逆効果。あちこちの銭湯で調べた結果、体調や季節にもよるが水温は20℃以上が好ましい。


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さて、山梨県山梨市の岩下温泉は1700年以上の歴史を持ち、甲州最古の温泉なのだとか。のどなか住宅地のなかに建つ一軒宿で、平成築の新館と明治8年築の旧館が少し離れて建っている。岩下温泉の特徴は「冷泉」であること。源泉は28.2℃で、これを沸かさずに浴用に使用しているのだ。水風呂の冷たさが苦手な人でも無理なく浸かれるし、夏の火照った身体をクールダウンするにはもってこいの、絶妙な温度なのだ。


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日帰り客が利用できるのは旧館の浴室。廊下の先に男女の浴室が並んでいるが、その向かい側には半地下構造で、広々とした浴室がある。廊下からは数段下っていくが、仕切り方が完全ではないため、廊下から浴室はほぼ丸見え。専用の脱衣所もないし、湯船に仕切りはあるものの、実質的には混浴だ。誰も入浴していないし、そもそも入浴してよいのか?という疑問。なぜなら旧館には案内役が誰もいなかったから。お金もあとで支払ったのだが、随分おおらかな雰囲気だという印象。


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ひとまず浴室でひとっ風呂。狭さといい、薄暗さといい、昔ながらの旅館風情。手前にあるのは源泉そのままを使用した湯船で、ひんやり加減が気持ちいい。奥にあるのは加温した湯船だが、長湯好きにはたまらないぬるさ。冷たい、温いを繰り返していたら、あとから客がやってきた。廊下の向かい側にある混浴湯船の話題になり、「入ってもいいらしい」との話を聞き、さっそく移動。


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裸のまま廊下を突っ切ることが恥ずかったが、それは難なくクリア。もし事情のわからない客が居合わせたならば、変態騒ぎの衝撃的光景だろう。そして、広々とした湯船にざぶんと浸かる。こちらも源泉そのままの温度だが、湯船が広いためか先程よりも冷たく感じる。古くから万病に効く霊湯として知られ、地元の人々の湯治で賑わったという。そんな光景を想像してみるが、一人ぽつーんとこの浴室を独占するのは贅沢。いやむしろ寂しい。実はここを訪ねたのは5月の、とある平日。混浴に期待するなどもってのほかで、出会ったのは男性客ただ一人。


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訪ねるならば猛暑真っ盛りの今がおすすめ。個人的には極寒の時期にも、また訪ねてみたいと思う。


岩下温泉旅館
源泉/岩下温泉(単純温泉)
住所/山梨県山梨市上岩下1053
電話/0553-22-2050
交通/JR中央本線山梨市駅からタクシーで約7分
     中央道一宮御坂ICから約20分
料金/大人400円、小人300円
時間/9:30~20:00、毎週月曜日休館

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東京近郊で歓楽温泉の代名詞といえば、山梨県の石和温泉。昭和36年に果樹園から温泉が湧き出したという。温泉街には大型ホテルが建ち並び、団体客の宿泊需要を満たしている。団体旅行といえば、夜の宴会にはコンパニオンが付き物。石和では「宴会」ならぬ「艶会」も定番で、セクシーな衣装を身にまとった、俗に言う「スーパーコンパニオン」がお酌をしてくれるという。一度は羽目を外してみたいと思うが、こういう発想がすでにオヤジなのかもしれない。言葉は悪いが、そういう艶会目当ての客ならば温泉は二の次。ホテルの良し悪しばかりが話題の中心で、温泉についての評判はあまり聞かない。

石和温泉駅の観光案内所で日帰り温泉を尋ねたところ、温泉街の外れに市営施設があるという。温泉街でなければまったく意味がないし、しかしホテルの大浴場ではつまらない。展望風呂があろうとも、さして風光明媚な土地ではないのだから。「それならば......」と教えてくれたのは、「石和温泉」という名の銭湯。石和温泉にあって石和を代表するかのような屋号。素敵ではないか。窓口のお姉さんはこう付け加えた。「素朴な風情があっていいですよ。私は行ったことがないんですけど」。

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駅からまっすぐ南に下ると、温泉街から住宅地に雰囲気が変わる。「石和温泉」はドラッグストアの裏手にあって、狭い路地に面している。観光客がたまたま見つけて立ち寄ろうとする場所ではない。そして、店先には「入浴とお食事」の文字。扉の向こう側にあるのは番台でもフロントでもなく、こじんまりとした大衆食堂だ。日の暮れる前だというのに、すでに飲み始めている客もいる。予期せぬ光景に戸惑ってしまうが、テーブル席の奥にはちゃんと暖簾が掛かっていた。店内には建築パースが飾られていたが、屋上はバッティングセンターとして計画していたようだ。外の螺旋階段はその名残か。いまでさえ本業は食堂なのか銭湯なのかわからないというのに。

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食堂のレジで入浴料金を支払う。銭湯組合に加盟しているが、公定料金より50円安い。普通の銭湯ならば石鹸やシャンプーなどを棚に陳列しているが、ここではタバコ。出勤前のコンパニオンが買い求めに来ていた。脱衣所には洗濯機、乾燥機、体重計、そしてなぜか鉄アレイ。「石和で二番目に旨い正油ラーメン390円。いっぺん食ってみろし」という貼り紙も気になる。「二位じゃダメなんでしょうか?」とは蓮舫議員の名言だが、ここではずっと前から二位を自称している。そもそも一位はどこかと尋ねるだけ野暮だが。「飲食をご利用の方は、二度目の入浴をサービスいたします」という恩恵にあずかろうとは思わなかったが、風呂上りにラーメンも悪くはないな、と。

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浴室の作りはごく一般的な東京型仕様。手前にサウナと洗い場、奥に湯船という配置。小さいながらもサウナは無料で利用できるし、洗い場にはボディソープとシャンプーを備えているのはありがたい。銭湯といえばペンキ絵だが、ここでは山梨県らしく河口湖側から眺めた富士山が描かれており、甲府の塗装店主が手掛けたという。構図は単調ながら鮮やかな色彩が特徴的。湯船はややぬるめ、ぬるめ、冷たいくらいにぬるめという3種類。長湯好きにはちょうどいい温度だと思うが、個人的には物足りなさも。お湯は無色透明で、わずかにぬめり気と硫化水素臭を感じた。やはり、と言うべきか地元客が多い。石和で唯一の銭湯は、地域の社交場でもあるようだ。

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風呂上りは食堂にて「石和で二番目に旨い正油ラーメン」を注文。餃子やライスは残念ながらメニューにないので、悩んだ末に「おにぎりセット」も。「味噌汁はどうしますか?」と聞かれたが、断る理由はとくにない。やがて運ばれてきたラーメンは、むかし懐かしの味とでも言えばよいか。何でダシを取っているのかよくわからないし、醤油の風味だけが印象として残ったが、このシンプル加減はラーメン界にとっての懐古主義。ほかの客は一品料理をつまみに「とりあえずビール」。テレビを観ながらひとり手酌だったり、仲間どうしで飲み交わしていたり。石和温泉から連想される華やかなイメージとは程遠いけれど、ここには人情があった。

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石和温泉
源泉/石和温泉(単純温泉)
住所/山梨県笛吹市石和町市部1091-2
電話/055-262-3441
交通/JR中央本線石和温泉駅より徒歩10分
     路地裏の駐車場に7台分のスペースあり(3ナンバーは通行注意)
料金/大人400円、中人170円(6歳~12歳未満)、小人70円(6歳未満)
    ※上記は公定料金で、実際は大人350円
時間/15:00~23:00、毎週月曜日定休

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    シダ トモヒロ
    -Tomohiro Shida-
    大学時代より国内各地とアジア諸国をおもに旅する。また高校時代から同人誌や機関誌の編集に携わり、98年創刊時より「旅の雑誌」編集人。趣味は旅行、ビリヤード、野球観戦。

    ミニコミ誌HP:
    旅の雑誌ONLINE

    温泉&野球ブログ:
    旅は哲学ソクラテス

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