2013年1月アーカイブ

地元神奈川県の温泉や銭湯はほぼ網羅したし、東京都心部は車で行くには不便。そうしたら狙いは埼玉県だ。♪知らない街を歩いてみたい~のメロディーに誘われて訪ねたのは、埼玉県のど真ん中に位置する小川町。ここに抜群の昭和テイストをいまもなお留める、素敵な施設を発見してしまった。その名も「小川ラドンセンター」。


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佇まいそのものは田舎のビジネス旅館だが、昼間は日帰り入浴も受け付けている。到着したのはオープンの10時からしばらく経った頃。しかし、どういうわけか「まだお湯が沸いていない」と言う。いくつものマイナー施設を訪ねた経験からして、このような事態は特段珍しいことではない。しかし、そのあとのご主人の一言は、
「おれなんかは温いほうが好きなんだけど」


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ご主人に案内されて浴室へ。お湯は体温よりも冷たく感じたが、思わず「ちょうどいい具合っす」などと口走ってしまった。適当に話を合わせてしまう癖を今年こそは直したい。


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シャワーで身体を温めようとするが、これも冷たく、あきらめて湯船につかる。大きな岩風呂にはお湯の出口が1か所しかなく、そこから熱湯が出てくるものの、湯船全体を温めるにはかなりの時間を要した。うたた寝を決め込もうかと思ったが、それよりもまずお湯に浮いた虫や垢を洗面器ですくっては捨てて......の繰り返し。薄暗い室内ゆえ日差しがまぶしい。


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窓の外は雑然とした空き地で、サウナは物置と化し、浴室内の一部には板が打ち付けられていた。インターネットの情報では露天岩風呂や洞窟風呂もあるようだが、開放しているのは夏期のみ。そして、井戸水を汲み上げているとのことだが、水質は温泉に該当せず、肝心の「ラドン温泉」については何らの説明もなかった。


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風呂から上がると、大広間からカラオケの歌声が聞こえてきた。廊下にずらりと飾られた写真は、ここで行われたカラオケ大会の記念。そのなかには狩人や大木凡人といった懐かしの顔も。テレビ埼玉の素人のど自慢番組の収録もたびたび行われているようだ。


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しかも、ここのご主人(社長)はカラオケ指導員の資格を持っており、大広間はまさにカラオケ教室と化していた。生徒(客)は3名。1曲歌うごとに、社長が節回しや発声方法などを指導する。しばらくして客2名は帰っていったが、風呂にも入らずカラオケだけとは......。そんな光景をひとしきり眺めていたが、傍観者としての居心地の悪さは否めない。あと10年20年と歳を重ねれば、自分もあのステージに立てるようになれるだろうか。


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平成も20年をとっくに過ぎたというのに、ひと昔前の「ラドンセンター」を名乗っているのは立派だが、カラオケを軸とした娯楽路線にも一切のブレがない。時代とのピントにズレを生じていないか、それは二の次として。百穴温泉春奈の吉見町、平成楼の嵐山町、ラドンセンターの小川町はいずれも比企郡に属すが、ダサイタマ(失礼!)を満喫するならぜひとも訪ねていただきたい。


小川ラドンセンター
住所/埼玉県比企郡小川町小川529-2 [地図
電話/0493-72-3350
交通/東武東上線・JR八高線小川町駅より徒歩15分
     国道254号線「小川小学校」向かい
料金/大人800円、小人500円
時間/10:00~18:00、毎週月曜日定休

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Author


    シダ トモヒロ
    -Tomohiro Shida-
    大学時代より国内各地とアジア諸国をおもに旅する。また高校時代から同人誌や機関誌の編集に携わり、98年創刊時より「旅の雑誌」編集人。趣味は旅行、ビリヤード、野球観戦。

    ミニコミ誌HP:
    旅の雑誌ONLINE

    温泉&野球ブログ:
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