第6回 南国行きで首里えい航
〜チョッチュ残念和田堀給水所 |
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日本一乗降客数の多いJRの駅は新宿駅だそうだが、私鉄では京王線の新宿駅らしい。都心部から多摩地区へと西走する京王線は地上に出る笹塚駅までの京王新線区間は、江戸五街道の一つ甲州街道のほぼ真下の地下を走っている。また甲州街道に蓋をするように首都高4号新宿線が走り、地下・地上・上空の3層と立体的に交通が集中している。道路幅も狭く脇にはビルが乱立しているので、圧迫感のある超過密交通地帯となっている。
万年渋滞に加えて、一本路地を入るとハイソな家々が並び、抜け道は細いのにデカイ外車が幅を利かせていたりと、人にとって(とりわけ自分のような貧乏人には)優しくない環境なのだ。その割りに古い商店街があったりして、回避したいのにできない、散歩人泣かせの町になっている。
代田橋駅を出て目の前の商店街に行くだけなのに、甲州街道を跨ぐ歩道橋を渡らなければならない。なんだか今回は文句ばっかりいっているが、橋に上がるといいものに出会えるもの。ビルの間に取り残された大衆食堂発見!定食ニッポン出番です…って人任せにして、目指す商店街を見やると、おっと横断幕の脇に看板建築!
商店街入口に来るとこの物件、1Fを洒落た店に改装している、その継ぎはぎっぷりがよくわかる。こういう再利用法を考えるあたり、未だこうした銅板などで正面の見栄えだけを覆った看板建築が残る千代田区・台東区あたりとは違った文化圏であることが伺える。
さてこの和泉商店街、なんで沖縄タウンかというと、全国に見られる寂れる一方の商店街にあって、なんとか活気を取り戻すため、杉並区が沖縄にちなんだ在住者や沖縄料理店が多いことから、沖縄タウンとして復興を目指したんだそうな。
商店街の多くの店が沖縄にちなんだ商品を大々的に扱い、大衆食堂もゴーヤチャンプル定食なんてしてがんばっているのだが、元の商店街の町並みが止まっていて、中にはなぜか水槽が詰まれた学習塾があったりと、妙な空間になっている。
そんな中にあって、一際沖縄らしくて逆に浮いているのが首里製麺だ。店主は沖縄出身者ではなく、いわゆるやまとんちゅ(本土の人間)なのだが、沖縄そば好きが高じ沖縄のおばあが作るそばを目指してつくられた味なのだそうだ。
ソーキすば¥800は見た目になかなか濁りのあるスープで、飲んでみるとまったりとした豚スープでダシのナチュラルな旨みが溢れている。
麺はやや灰色がかっているが、これは全粒粉(小麦の表皮まで丸ごと引きぐるみの粉のこと)の麺で、注文時お願いするとこの麺に変えてくれる。ゴワゴワしていて粉っぽい麺に慣れていないと食べづらいかもしれないが、粉の味わいが感じられ、栄養価も高い。ここは是非頼みたいところだ。
もずくが入っている八重山かまぼこも形は不揃いだが手づくり感溢れ今回の一番の発見だった。ソーキはもちろんしっかり味が染みていて美味。
実は本当のところ商店街で沖縄そばを食べに来たわけではない。ここに来る前に手痛い目にあっているのだ。現在ウォーターラインシリーズと称して、近代水道にまつわる近代建築を見ながら周辺のB級グルメを食べ歩くという水路巡りを行っているのだが、その一環としてこの近くにある和田堀給水所を訪れたのだった。
年に1度、桜とつつじの時期に一般開放され、ローマのコロシアムを思わせる円形の給水施設を間近で拝むことが出来る。昭和6年竣工とあって時代を帯びた迫力を見せてくれる・・・ハズだった。というのも、水道局のHPでは桜の3月末から5月上旬までとあるのに、実際は桜の終わる4月頭からつつじの始まる4月末までは解放されていないのだった。モロ端境期に到着の自分。書いとけよ!
肉眼ではフェンスの隙間から建物が拝めなくもないが、シャッターチャンスは開かれた正面ゲートからしかなかった。チーン。
しかしそうショゲてばかりではこの連載も読者に見放されてしまう。斯様な逆境でもあたしゃ見逃さなかった。電車が駅ホームに辿り着く寸前、線路下を流れる小川に煉瓦橋が掛かかっているのを。これは旧玉川上水で、殆どの部分が暗渠となっているが、この代田橋周辺だけ地上に露出している。給水所があるということは水路があるわけで、上水道として奥多摩湖から流れてきた水は和田堀給水所を経て甲州街道に沿って現在都庁のある旧淀橋浄水場に注がれていた。
ちょうど桜の散った時期で、水面には無数の桜の葉がばら撒かれたようにたゆたっていた。都心から数キロとは思えない新緑の中、煉瓦造の橋とのコントラストに見入ってしまった。
この煉瓦橋はゆずり橋といって、91年造と新しい。水道にちなんだ意匠が随所に見られ、なかでも止水栓の形をした車止めが目を引いた。
思わぬ風景に出会えて安堵したものの、次こそは給水所を!と胸に誓って家路に着いた。また来年…て長っ
2007年7月20日更新
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