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9.スターはいつまでもスター
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昭和30〜40年代の少女雑誌やふろくのことをまだ知らなかった1、2年ほど前のこと。『なかよし』を読んでいて、ふろくや連載漫画などで、当時人気絶頂のアイドル中心に誌面がつくられていたように思え、少々複雑な感情を抱いておりました。「少女漫画雑誌なのにアイドルの人気に頼るなんて、こんなの『なかよし』じゃない!」と、常々嘆いていたものです。
しかしそのあと、創刊当初からの『なかよし』『りぼん』を読む機会を得たことで、自分の心の狭さを少々反省することになりました。芸能界のスターはいつの時代も少女の憧れで、それゆえ少女雑誌に欠かせない重要な存在であることがわかったからなのです。
昭和30年の『なかよし』『りぼん』創刊時から、すでにスターはふろくや誌面で活躍しています。別冊ふろくが中心だったにもかかわらず、創刊最初の2年ぐらいは、毎月のようにスターのブロマイドがふろくに名を連ねていたほどです。
少女たちに、この新しい雑誌の愛読者になってもらいたい。そのためには少女たちが好きなものをとりあげて、気まぐれな彼女たちを振り向かせ、なおかつ親を納得させることから始めなければなりません。その役目を果たすため、まず先陣をきったのがテレビやラジオ、映画で馴染みがあって、誰にでも人気のあるスターだったのです。大人のスターに混じって、子役スターが多く登場していたのも、同年代の少女たちに親近感を抱かせるためなのでしょう。
この時期にふろくや誌面でよく見られたスターは、松島トモ子、小鳩くるみ、美空ひばり、近藤圭子、千原しのぶ、古賀さと子、浅野寿々子、内藤洋子、小橋玲子、中村錦之助など。
また読者ページには「錦之助さんゆりかご会に入りませんか」「友達と花のひばりちゃん会をつくって応援しています」などの手紙がよく掲載されており、同じスターのファン同士でサークルを作って読者間での交流をはかるということも、すでに行われていたようです。
その後、ふろくのレパートリーや少女の憧れの対象が増えてきたこともあって、スターのふろくはそれほど目立たなくなっていました。しかし昭和40年代に入り、世間がGSすなわちグループサウンズに熱狂すると、そのブームが少女雑誌にもやってきます。この頃はもう、昭和30年代のようにブロマイドや歌集だけというわけではなく、人気グループの写真をあしらった様々なグッズが毎月のようにふろくになり、彼らに憧れる少女たちの思いにこたえていました。以下はそのほんの一部です。ブロマイドやポスター、絵はがきなどもたくさんあるのですが、あえて表には入れてません。あしからず。
・ザ・タイガース ビニールエプロン(なかよし
昭和43年7月号)
・ザ・タイガース おしゃれうでわ(なかよし 昭和43年8月号)
・ジュリー&トッポ すずしいうちわ(なかよし 昭和43年9月号)
・ジュリー&ショーケン グループサウンズバッグ(なかよし 昭和43年11月号)
・ジュリー おめでとうふくわらい(なかよし 昭和44年1月号)
・アイちゃん&ジュリー びょうぶつきかざりびな(なかよし 昭和44年3月号)
・ピー&ショーケン マスコットブローチ(なかよし 昭和44年3月号)
・ザ・タイガース マスコットせんす(りぼん 昭和43年9月号)
・ジュリー&ショーケン グループサウンズきせかえセット(りぼん 昭和43年12月号)
・別冊まんが ジュリー物語(りぼん 昭和44年1月号)
・新年グループサウンズすごろく(りぼん 昭和44年1月号)
・おしゃれなデートバッグJULIE〈ジュリー〉(りぼん 昭和44年2月号)
・グループサウンズアルバム(りぼん 昭和44年2月号) |
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ほかにも、ザ・ワイルドワンズの「バラの恋人」やザ・テンプターズの「おかあさん」といった曲の歌詞をもとにして描かれた「歌物語」なる別冊まんがもあり、また違った方向からグループサウンズの世界に浸ることもできました。
これらグループサウンズのふろくは昭和43〜44年に集中し、その後はあっという間に姿を消します。それでもその2年弱の間は、ふろくもすべてグループサウンズ、表紙も漫画もグループサウンズ、という号もあったほどで、少女雑誌上にはグループサウンズの嵐が確かに巻き起こっていたのです。
次にスターのふろくが目立ったのは昭和48年前後。郷ひろみ、天地真理、野口五郎、西城秀樹、アグネス・チャン、南沙織、麻丘めぐみ、城みちる、フォーリーブス、フィンガー5などの時代で、『明星』『平凡』にも負けないくらいの品揃えでした。しかし、漫画のほうでも人気作家が続々と誕生していたこともあり、昭和50年代を迎えるころには、スターのふろくはまたしばらく身を潜めることになるのです。
漫画という少女雑誌のメインコンテンツがまだ発達していないから、スターのふろくがついていた。現在から過去を振り返ってみるとつい、こう考えてしまうのですが、思い返せば、自分が少女時代読んでいた、昭和55年ごろの『なかよし』や『りぼん』のふろくにも、聖子ちゃんやたのきんトリオのブロマイドなどがありました。このころはすでに、連載漫画のキャラクターがふろくでもそれぞれの存在感を示していたにもかかわらず。さらに冒頭で述べた現在の『なかよし』のように、少女雑誌にアイドルが姿を見せ始める時期がまたやってきています。時代や人が変わっても、スターという存在自体が少女にとって憧れの対象であることは変わらないのです。
少女雑誌は常に少女たちの憧れを追求しているのだから、スターの存在はいつまでもその中にありつづけることでしょう。そして少女たちはふろくや雑誌のグラビアで、手の届かない憧れのスターをいつの時代も身近に感じることができるのです。
次回は昭和30〜40年代に起こった出来事をとりあげたふろくについて。
※敬称は省略させていただきました。ご了承くださいませ
取材協力:弥生美術館
2003年12月19日更新
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