鴻池綱孝
〈第八夜〉 大魔神の学習
大映映画『大魔神』は1966年4月に封切られた。(併映は「ガメラ対バルゴン」)
三部作から成り、4ヵ月後の8月には『大魔神怒る』、12月には『大魔神の逆襲』が公開された。
『大魔神』は、善悪を超越した超自然的存在で、いったん、キレルと暴走するという、従来の勧善懲悪型のキャラクターを逸したものだった。「イイもん」と「ワルもん」の二元論しか持ち合わせていなかった怪獣少年たちには、そこが新しかった。
荒振る神。古代の日本の神様ってこの手のタイプ多いんだけど、神様=救世主って、どっぷりとキリスト教的価値観を刷り込まれているヒトには、今でも新鮮かも。
第二弾『大魔神怒る』。この映画の最大の見せ場は、湖を割って、魔神登場のするシーンだ。
ハリウッド映画「十戒」(1956年)で、有名な「モーゼが海を渡る」特撮シーンの完全なパクリだ。(ちなみに、『怒る』の併映は「座頭市海を渡る」!)ハリウッドに遅れる事10年、その特撮は「神様映画」から「怪獣映画」へ引用された……あっ、『大魔神』も怪獣映画じゃなく、じつに「神様映画」だったのね。
第三弾『大魔神の逆襲』では、「逆襲」というよりか、大魔神は「学習」しておられ、人間側の主人公を少年四人組とし、子供映画路線に軌道修正を試みている。少年達の冒険活劇は感情を投影しやすく、この手法は『ガメラ』シリーズに受け継がれていった。
さて、今宵のソフビ君は間違いさがしのような趣ですね。違いは脚の付け方で「A」の魔人と「B」の魔人とでは左右の脚を違えて付けてあります。
安定よく立つのは「A」の方で、ショップ店頭などではまず、こちらの状態で立っておりますが、靴底が地面にちゃんと接地してないのは、どうも不自然です。
大魔神A
安定はイイけど、地面とは「線」接触!ところで「タモリの今夜は最高!」の大魔神子ってキャラ知ってる?
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大魔神B
安定悪りィのは、ただいま、重心移動中の図だから。手との連動にムーブマン感じる?
もっと理由がほしいヒトは、現物で太腿のラインや、スプレーの繋がりを研究!
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そこで今回、わたくしのお勧めは「B」の一本足の方なのです。初出しで多いのも、こっちのタイプです。なので、工場組みの際も意識的に付けられたと考えたいのですが、安定のよい「A」で組まれた可能性もありますし(おもちゃ会社的には正論)現場はそんな事いちいち、構っていなかったって事もあるでしょう。(生産効率的には正当)
ですが、ここで注目したいのは、これを制作した原型師の「想い」(origin)です。
右手を振り上げ、同時に右脚を繰り出しているのは、何かを踏みつけているポーズです。映画のシーンや、造形の参考にしたであろうスチル写真では、よくみられるポーズです。原型師のセンスは、このイメージを捉え固定化したわけです。きっと。(だからと言って、子供向けのおもちゃを一本足で立たしちゃあ、ホントはダメです。おもちゃ的には。)
原型師(職人の名のもとで)をアーティスト扱いするのは、間違った考えですが、これはおもちゃ造形としては暴走で、その意味では職人の本分を超えた、ちょっと彫像作品っぽい造形になりました。(コレクター的にはラッキーな結果です。)
さあ、『大魔人』を所有しているあなた、今すぐオリジナルの状態か、チェックしてあげましょう!
足裏の大映マーク
軸足の裏には、大映のマークが刻印されています。
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2002年9月24日更新
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