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さえきあすか その19
 へんてこケロちゃんの巻

『奥の細道 俳句でてくてく』

 私と同じく、コルゲンコーワのケロちゃんが大好きな友人がいます。6つ年下の濱田研吾さん。路上観察学会の『奥の細道 俳句でてくてく』(太田出版)など、さまざまな書籍を編集している男性で、私の文通相手でもあります。
 彼との出会いは2000年の秋。私のミニコミ誌を読んでくれ、表紙にコルゲンコーワのカエルがいるのを見て、私のカエル好きを察し、『生誕50周年記念 コルゲンコーワカエル物語』という、濱田さんがつくったミニコミ誌を送ってくれたのがはじまりです。
 カラーコピーで紹介された数多くのケロちゃん。A5判16ページと薄い冊子ながら、小さい文字がギッシリとつまった読み応えのある1冊で、『コルゲンコーワカエル年表』までついているのも嬉しく、「ケロちゃんが好きなんだなぁ、わかる、わかる」って思いながらページをめくったのをよく覚えています。
 気がつくと早いもので、手紙のやりとりも3年を越えました。イラストが上手である彼の、オリジナル便箋に描かれた手紙が届くのは、私の楽しみのひとつになっています。

へんてこケロちゃん人形 『その17 ケロちゃんの腹掛け』でご紹介した大きなケロちゃんは、濱田さんの部屋にもいるそうです。お互い上から見下ろした時のケロちゃんの表情が大好きで、「可愛い、可愛い」とケロちゃんの話はよくするのですが、数あるケロちゃんの中で、コルゲンコーワのケロちゃんを真似た、へんてこケロちゃん人形を、お互い持っていることが判明し、嬉しかったのでご紹介します。
 このケロちゃんは、埼玉県大宮市(現在さいたま市)のアンティークショップで買いました。ガラスケースの中で、はじめて見るなんとも不思議なケロちゃんの姿に、
 「こんなモノもあるのか!」
 と驚いて手にとったのです。どんなケロちゃんかというと、顔と手だけがソフトビニールでできており、胴体と足はブリキ製。ネジをまわすと身体を左右に動かして前進するというオモチャです。
ケロちゃんそっくり けれどよく見ると、顔はコルゲンコーワのケロちゃんそっくりなのに、手は人と同じ形をしているのです。関節があって指も5本! 顔や足の単純さと比較すると、とってつけたような、アンバランスさが怖いというか、なんだか笑えます。もしかして、これはわざとつくった偽物かと疑いましたが、まったく同じモノが書籍に載っていたり、濱田さんの家にもあると知り、商品だったに違いないと思った次第。ちなみに胴体には『MADE IN JAPAN』と、3本指をたてた手の下に『T.P.S』の文字がプリントされています。調べてみると「東京プレイシング商会」というメーカーのトレードマークだとわかりました。
 また、私のケロちゃんには持ち主が購入したと思われる日付が、足の裏に黒いペンで書いてあります。「42.7.18」。36年前に買ったモノなのですね。こけしなどのお土産品には、よく購入日が書いてあり、旅の記念ということなのでしょうが、こんなオモチャにも書いてあるということは、それだけこのケロちゃんがやってきた日の大切さ、嬉しさを現わしているようで、ちょっと嬉しくなります。

 さて、話がケロちゃんからズレますが、そんなケロちゃんつながりの濱田さんが、このたび徳川夢声が朗読した『宮本武蔵』(新潮社)が、CD化されるにあたり、解説を書くことになったのでご紹介したいと思います。
徳川夢声 徳川夢声、ご存知ですか?
 「徳川夢声を調べていくと、昭和、演芸、テレビ、文化、出版文化‥‥いろんなことがわかるオモシロサがあるんだよね」
 そういって濱田さんは笑うのです。けれど恥ずかしいかな、私は徳川夢声についてよく知りません。明治27年に島根県で生まれた方で、とにかく幅広くお仕事をこなされたようです。それもただ単にこなすだけでなく、それぞれのジャンルにおいて素晴らしい業績をあげておられるとか‥‥。
 6歳も年下の濱田さんは、つくづく渋い趣味だと思いつつも、ずっと好きでいたことが形になるなんて、すごくラッキーなことですし、私も友人のひとりとして、とても嬉しく、紹介せずにはいられません。ただ、残念というか、このCDは少々お値段が高いんです。パッと買える金額ではありませんが、図書館には入るのかな? 最近『宮本武蔵』ブームですし、興味のある人はぜひとも聞いてみてください。
"朗読"なんて、現代の生活では縁の薄い代物になってしまいました。特にジッとしていることが苦手な私の場合、よほど気持ちに余裕がないと聞き続けることができません。けれど独特の語り口は聞き心地がよく、お部屋で流しているだけでも、ひと昔前の雰囲気を演出できて楽しいです。
 しかし、それだけではありません。濱田さんの情熱はスゴイ! 『職業"雑"の男 徳川夢声百話』というタイトルのミニコミ誌(限定200部・非売品)までつくってしまったのです。今度はB5判・150ページと大冊で、背にタイトル文字まで入っていますし、本文は2段組みで文字がギッシリ! 常日頃お仕事で忙しいハズなのに、いったいどこにこんなパワーがあるのかと、ただただ感心しきり。
 それも『徳川夢声雑年譜』、『徳川夢声 連載対談ゲスト一覧』、『徳川夢声著作リスト』、『徳川夢声職業"雑"の軌跡』と資料の細かいこと! 亡くなられているとはいえ、ご本人も助かるわよね。としみじみ思ってしまいます。
 私はこれを機に、徳川夢声に興味を持ちたいと思ったりして‥‥。まずは、このミニコミ誌をジックリと読みまして、朗読を聞いてみます。


2003年4月8日更新
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その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


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