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「絶滅紀行」タイトル

アンクル・トリス田端宏章

第10回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう!
その1


 「トリスバー」という酒場をご存じでしょうか?ご存じの方はご年輩の方か、昭和通な方ぐらいではないかと思います。今やほとんどみかけなくなったサラリーマン向けの安酒場、トリスバー。今回は、絶滅寸前のトリスバーを(その復興を願いつつ)取り上げてみたいと思います。
 トリスバーとは一体どんなところだったのか、サントリーのホームページに詳しい解説が載っていたので、少し引用してみたいと思います。

 『昭和30年(1955年)前後に生まれ、爆発的な人気を呼んだ庶民的なバー。トリスウイスキーをソーダで割ったハイボールが主力製品でしたが、カクテル類も人気がありました。サラリーマンや大学生が気軽に訪れ、グラスを傾けながら民主主義を語り、文学・芸術を語り、人生・恋愛を語る舞台であり、新しいライフスタイルを象徴する場でもありました。トリスのハイボールは大阪では「トリハイ」、東京では「Tハイ」という愛称で呼ばれました。』
サントリー公式頁より↓
http://www.suntory.co.jp/jiten/word/b_n_031.html

 このトリスウイスキーが世に出たのは大正8年(1919)9月1日とされています。しかし、サントリー(旧社名:壽屋)が初の国産ウイスキー「白札」を発売したのが昭和4年(1929)のこと。そのウイスキーは、きっと「ウイスキー的な別の飲み物」であったと予想されます。
トリスウイスキー 戦後、酒類の販売がようやく許可されるようになった昭和21年(1946)、洋酒の壽屋(現・サントリー)より新しいトリスウイスキーが販売されます。昭和25年(1950)にはトリスのポケット瓶が発売。トリスのおかげで、庶民には高根の花だったウイスキーが手の届く存在になったのでした。そして、高度経済成長期へ向けて邁進するサラリーマン達にとって、明日への活力となったのが、安く飲める庶民的酒場「トリスバー」でした。昭和30年代には全国にサントリー直営のトリスバー、サントリーバーが激増。そのブームを作ったのが、壽屋から発行されトリスバーの片隅に置かれていた「洋酒天国」というPR雑誌です(1956年創刊、1964年廃刊)。初代編集長は、のちの芥川賞作家・故開高健氏。そして、編集・表紙・挿絵を担当していたのが柳原良平氏。ニ代目編集長は、のちの直木賞作家・故山口瞳氏。ユーモアとエロスが売りのこのPR誌のおかげで、これ欲しさにトリスバーへ通う客も多かったようです。そんなトリスバーも、お酒の主流が「ビール」へと変わるに及んでブームは終息、昭和39 年(1964)頃を境に、街から姿を消していったのでした。


アンクル・トリス このトリスブームの火付け役となったのは、「洋酒天国」だけではありません。昭和33年(1958)のこと、東京・茅場町の壽屋宣伝部内において開高健、柳原良平、酒井睦雄の各氏が約30分の会議を開いて誕生したのが「アンクル・トリス」というTVCMキャラクターでした。このCMが大ヒットとなり、トリスウイスキーはますます庶民の間に知られることとなりました。のちに「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」の広告がヒットし、トリスブームは加速してゆきます。今でも「アンクル・トリス」のグッズは懐かし系のお店で高値になっています。

 そんなトリスを今でも飲むことができるのだろうか…私はふと、そんなことを考えました。先日、近所の酒屋へ行くと、あったあった、今でもトリスウイスキーが売っているではあーりませんか。しかし、酒屋の店主いわく「今はトリスは売れないからねえ」と悲しいお返事。こうなったら、今でもトリスハイボールを飲ませてくれる旧き佳きバーを見つけなければ…。私は街をさまよいはじめました。そして、ついにまだあのトリスを飲ませるトリスバーを発見したのです!

 次回は、そのトリスバーレポートをお届けしたいと思います。お楽しみに。


2002年10月28日更新
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