アカデミア青木
第1回 童謡が消えていく
日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では各地にある童謡の歌碑を巡ってまいります。第1回は旅立ちの前に、現在童謡が音楽教育の場でどのように扱われているのかを見ていきます。
|
|
表1は、東京書籍(株)が発行した昭和35年と平成14年の音楽教科書(小学1年)に掲載されている歌曲の一覧です。これを見ると、40年余りの間に内容が大きく変わっていることがわかります。曲数は、昭和35年が37曲で、平成14年は26曲。これは、音楽の授業が歌唱一辺倒から楽器演奏にも力を入れるようになった結果と思われます。曲目に着目すると、昭和35年と同じ曲は平成14年には7曲しかなく、今風の曲が並びます。内容は、昔は「自然」や「情感」を重視したものが多かったのですが、今は「楽しさ」や「ファンタジー」にあふれたものが多いような気がします。ディズニーの『ちいさなせかい(イッツ・ア・スモール・ワールド)』や宮崎駿監督のアニメ『となりのトトロ』のオープニング主題歌『さんぽ』などは、昔のお堅いPTAなら「マンガの歌など不謹慎な」という声を上げそうですが、アニメ世代である今の20〜30代の母親達は素直に受け入れているようです。外国に由来する曲は、昭和35年で7曲、平成14年で8曲。全体比で見ると、前者は19%、後者は31%と増えています。これは昨今の「国際化」が背景にあるのかもしれませんが、このままいくと、適当な教材がないために欧米の歌曲を盛んに翻訳していた明治初期の状況に逆戻りしかねないので、ちょっと心配です。
文部科学省の「学習指導要領」には、小学校の各学年で扱うべき歌曲が示されています。(表2)それによると、歌うことが定められている曲は各学年で4曲ずつ、全学年で24曲に過ぎません。もちろんこれはあくまで必要最小限のものであり、小学生が習う歌の全てではありませんが、教科書会社が売り上げ増を図るために子供の好みに迎合する恐れもあるので、童謡の将来は決して明るいものとはいえません。
このような状況下で、皆さんが子供の頃歌った童謡は今後歌い継がれていくのでしょうか?もしかすると遠くない将来、全国各地にある童謡の歌碑は、歌の「記念碑」ではなく「墓銘碑」になってしまうかもしれません。そんな思いを胸に秘めつつ、次回より各地の碑を巡ってまいります。
(第1回 終)
2003年4月17日放送開始
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
[ああわが心の東京修学旅行]
最終回 霞が関から新宿駅まで 〜霞が関から山の手をめぐって〜
第8回 大手町から桜田門まで 〜都心地域と首都東京〜
第7回 羽田から芝公園まで 〜城南工業地域と武蔵野台地を訪ねて〜
第6回 銀座から品川まで 〜都心地域と都市交通を訪ねて〜
第5回 日本橋から築地まで 〜下町商業地域並びに臨海地域を訪ねて〜
第4回 上野駅から両国橋まで 〜下町商業地域を訪ねて〜
第3回 神保町から上野公園まで 〜文教地域を訪ねて〜
第2回 新宿駅から九段まで 〜山手の住宅地域と商業地域を訪ねて〜
第1回 データで見る昭和35年
→
|