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「ぶらり歌碑巡り」タイトル

アカデミア青木

http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-43.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜唱歌編
http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-50.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜童謡編
まぼろし放送にてアカデミア青木氏を迎えて放送中!

碑

第53回 『桃太郎』


 日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『桃太郎』です。
 幼い頃、主人公になった気分で歌っていた『桃太郎』。長じてこの歌を聞いている我が身は、「犬」や「猿」とおんなじ奉公人。なんとなく、せつない気分になります…。
 それはさておき、この歌は明治44年に「文部省唱歌」として世に出たため、作詞者・作曲者の名前は当初伏せられていました。その後、作曲者は『春の小川』や『故郷』でおなじみの岡野貞一であることが判明しましたが、作詞者については依然わかっておりません。



『桃太郎』(『尋常小学唱歌 第一学年用』文部省 明治44年 に発表)
 作詞 不詳
 作曲 岡野貞一(おかのていいち、1878−1941)

 

碑

 

1.桃太郎さん 桃太郎さん
  お腰につけた黍団子
  一つわたしに下さいな

2.やりましょう やりましょう
  これから鬼の 征伐に
  ついて行くなら やりましょう

3.行きましょう 行きましょう
  あなたについて 何処までも
  家来になって 行きましょう

4.そりゃ進め そりゃ進め
  一度に攻めて 攻めやぶり
  つぶしてしまえ 鬼が島

5.おもしろい おもしろい
  のこらず鬼を 攻めふせて
  分捕物を えんやらや

6.ばんばんざい ばんばんざい
  お伴の犬や 猿 雉子は
  勇んで車を えんやらや

 

JR岡山駅前の桃太郎像

JR岡山駅前の桃太郎像

 おとぎ話の「桃太郎」は大きな桃が川上から流れて来る場面から始まりますが、唱歌の方は桃太郎が黍団子を携えて鬼退治に向かう所から始まります。日露戦争後、日本では社会主義や個人主義が台頭しますが、それに危機感を抱いた当局は国定教科書を編纂し、教育を通じて「国体の尊重」を説こうとしました。『桃太郎』では、老夫婦が思いもかけず子供を授かるという部分はカットされ、当局が一番強調したい「鬼征伐」がメインとなりました。この歌の「あなたについて何処までも 家来になって行きましょう」の下りで”忠誠心”を、「のこらず鬼を攻めふせて 分捕物をえんやらや」の下りで”戦争がもたらす利益”を、子供達に刷り込もうとしたのかもしれません。4、5、6番は軍国主義的な色あいが強いためか、戦後になるとあまり歌われなくなりました。
 さて、この歌の歌碑は、『ずいずいずっころばし』の碑があった愛知県御津町の三河臨海緑地にあります。碑は岡山県のエリアに建てられていますが、その訳は第7代孝霊天皇の皇子で吉備(現在の岡山県)を平定した「吉備津彦命(きびつひこのみこと)」が桃太郎のモデルの一人と考えられているためです。実は桃太郎の伝説は、鬼退治の話だけではなく、全国各地で様々な形が伝わっており、東北地方には黍団子で地獄の門番の鬼を買収して、地獄のお姫様を連れて逃げてくる「桃の子太郎」の話があります。(柳田国男『桃太郎の誕生』)とはいうものの、岡山県は桃太郎をアレンジしてマスコット(「ももっち」)に採用し、県陸上競技場を「桃太郎スタジアム」、県体育館を「桃太郎アリーナ」と呼んで、桃太郎の本家を大いにアピールしています。
 ちなみに、JR岡山駅の東口前には桃太郎一行の銅像が建てられていますので、岡山にお越しの際にはこちらも是非ご覧になって下さい。

JR岡山駅前のポスト

JR岡山駅前のポスト


[参考文献

柳田国男『桃太郎の誕生』(『日本の文学 26』中央公論社 昭和44年 に収録)

岡山県ホームページ(http://www.pref.okayama.jp/)]

場所:愛知県宝飯郡御津町安礼の崎 三河臨海緑地・日本列島
交通:JR東海道本線豊橋駅東口よりサンライズバス蒲郡線「西浦温泉前」行きバスに乗り、「御津新田」バス停下車、徒歩約15分


2007年1月23日更新


[ああ我が心の童謡〜ぶらり歌碑巡り]
第52回 『ずいずいずっころばし』
第51回 『待ちぼうけ』
第50回 『からたちの花』
第49回 『琵琶湖周航の歌』
第48回 『我は海の子』
第47回 『椰子の実』
第46回 『雨』
第45回 『金魚の昼寝』
第44回 『雀の学校』
第43回 『お山のお猿』
第42回 『俵はごろごろ』
第41回 『兎のダンス』
第40回 『青い眼の人形』
第39回 『シヤボン玉』
第38回 『雨降りお月さん』
第37回 『かごめかごめ』
第36回 『蜀黍畑』
第35回 『あの町この町』
第34回 『黄金虫』
第33回 『四丁目の犬』
第32回 『七つの子』
第31回 『背くらべ』
第30回 『浜千鳥』
第29回 『通りゃんせ』
第28回 『宵待草』
第27回 『案山子』
第26回 『仲よし小道』
第25回 『七里ヶ浜の哀歌』
第24回 『城ヶ島の雨』
第23回 『どんぐりころころ』
第22回 『十五夜お月さん』
第21回 『浜辺の歌』
第20回 『叱られて』
第19回 『故郷』
第18回 『砂山』
第17回 『兎と亀』
第16回 『みどりのそよ風』
第15回 『朧月夜』
第14回 『早春賦』
第13回 『春よ来い』
第12回 『鉄道唱歌』(東海道編)
第11回 『赤い靴』
第10回 『靴が鳴る』
第9回 『紅葉』
第8回 『證城寺の狸囃子』
第7回 『かもめの水兵さん』
第6回 『箱根八里』
第5回 『赤い鳥小鳥』
第4回 『金太郎』
第3回 『荒城の月』
第2回 『春の小川』
第1回 童謡が消えていく
[ああわが心の東京修学旅行]
最終回 霞が関から新宿駅まで 〜霞が関から山の手をめぐって〜
第8回 大手町から桜田門まで 〜都心地域と首都東京〜
第7回 羽田から芝公園まで 〜城南工業地域と武蔵野台地を訪ねて〜
第6回 銀座から品川まで 〜都心地域と都市交通を訪ねて〜
第5回 日本橋から築地まで 〜下町商業地域並びに臨海地域を訪ねて〜
第4回 上野駅から両国橋まで 〜下町商業地域を訪ねて〜
第3回 神保町から上野公園まで 〜文教地域を訪ねて〜
第2回 新宿駅から九段まで 〜山手の住宅地域と商業地域を訪ねて〜
第1回 データで見る昭和35年


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