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串間努
第5回「むかし日本の空き地には鬼がいた」の巻
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……むかし日本の空き地にはさまざまな鬼がいた。
と、言っても子どもの「鬼あそび」の話である 一番単純なのは「鬼ごっこ」。逃げる、追いかける、タッチする、立場が逆転する。という平等で誰でも楽しめる遊びだ。「遊び」にはこの「シンプルさ」が大切。だから、長い間伝承され、ボクらも時間を忘れて遊んでいたのだ。
そして、さらに面白いものを求めて、この「鬼ごっこ」に、さまざまなアレンジを加えていった。「鬼ごっこ」進化論である。歴史的な系譜は知らない。地域によっても違うからだ。なるべくみなさんのの共感を呼びそうなものを、思いつくままに紹介しよう。
「たか鬼」は、地面よりも高い所に逃げると、鬼は捕まえることができない。いつまでも高い位置にいると、なかなか鬼は捕まえることができないが、鬼が十数えるうちに、一瞬でも高い場所から降りなければ、反対に自分が鬼になってしまう決まりがあった。降りた瞬間にたいがいは捕まってしまったけれど。この、「鬼」の交代という要素は大事だ。あまりにも同じ子どもが「鬼」を続けるのも良くない。つまらないし、「鬼」役の子が「楽しめない」。遊びはみんなが楽しめるのがホントだ。だからボクらの仲間の間には「みそっかす」という制度があって、年端の行かない子どもには有利になるようなハンディをつけた。そうでないとゲームのバランスが崩れてしまうのだ。小さい子を「かばった」というより、ボクら自身が楽しむための知恵でもあった。
「色鬼」は鬼が任意の色を言い、捕まる前にその色に触れていなければならない。鬼が「黒」と言えば誰もがすぐ、髪に手をのせた。だから、鬼は周囲にないような色をひねり出す。なんとなくピンとこない、「群青色!」や、原色よりも、あいまいな色、例えば「赤紫色」などが探すのに難しい色だった。ボクらの間で、一番強力で、なかなか見当たらないのが「どどめ色」。ところで「どどめ色」ってなんなんだ?
天気の良い日にやったのは「かげ鬼」。鬼に自分の影を踏まれたらアウトとなってしまう。しかし日陰に入り込んでしまえば、鬼は手も足もでない。アハハ当たり前だ。昼休みにやると、影が短くなっているので、鬼は捕まえるのに苦労した。自然の摂理が随分影響を与える「鬼ごっこ」だ。そういえば、理科の時間に、太陽の動きを学ぶため、一時間まるまる「かげ鬼」をやった先生がいた。遊びで太陽の「南中」を実際に感じさせるなんて、とても魅力的な授業だ。
「氷鬼」。知っている? 鬼に捕まるとその場で氷のように動けなくなってしまう。「氷」イコール「固まる」ってことだ。鬼以外の人に触れられれば、再び逃げることができるが、誰も助けに来てくれないと、いつまでも凍ったまま……。
この、鬼に捕まったものを、逃げる者同士が助け合って、鬼の支配下から逃がすという行為は、「ケードロ」で警察に捕まった泥棒や、「陣取り」で相手陣地で捕まった人質に対してもあったルール。「だるまさんがころんだ」もそうだったな。「助けてくれー」と叫んだりしていると、鬼の目をごまかしながら、友達が手を差し出してくれる。手が触れて友達と一目散に逃げだす瞬間は、救ってくれた友情に胸が一杯になった。
地域によって、世代によって、多くのバリエーションで楽しまれている「鬼ごっこ」は奥が深いと思う。全国「鬼ごっこマップ」など作ったら、おもしろいかもしれない。
あなたはどんな「鬼ごっこ」をして遊んでいましたか? こんなのがあるよというのを掲示板に教えて下さいな。
●「地域教育新聞」第3号を改稿
2003年2月14日更新
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