2011年8月アーカイブ

連日の猛暑、さらには節電が叫ばれる今年の夏。いかに涼しく乗り切るかは、皆さんにとっても最大の関心事だろう。暑い時には熱いお茶を飲むと良いとは言うが、暑い時こそ温泉に、というと正直しんどい。やはり夏は水風呂に限る。サウナで汗だくになったあと、くらくらになるまで水風呂に浸かる。さながら修行僧の気分だが、水風呂も冷たすぎると身体に負担がかかって逆効果。あちこちの銭湯で調べた結果、体調や季節にもよるが水温は20℃以上が好ましい。


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さて、山梨県山梨市の岩下温泉は1700年以上の歴史を持ち、甲州最古の温泉なのだとか。のどなか住宅地のなかに建つ一軒宿で、平成築の新館と明治8年築の旧館が少し離れて建っている。岩下温泉の特徴は「冷泉」であること。源泉は28.2℃で、これを沸かさずに浴用に使用しているのだ。水風呂の冷たさが苦手な人でも無理なく浸かれるし、夏の火照った身体をクールダウンするにはもってこいの、絶妙な温度なのだ。


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日帰り客が利用できるのは旧館の浴室。廊下の先に男女の浴室が並んでいるが、その向かい側には半地下構造で、広々とした浴室がある。廊下からは数段下っていくが、仕切り方が完全ではないため、廊下から浴室はほぼ丸見え。専用の脱衣所もないし、湯船に仕切りはあるものの、実質的には混浴だ。誰も入浴していないし、そもそも入浴してよいのか?という疑問。なぜなら旧館には案内役が誰もいなかったから。お金もあとで支払ったのだが、随分おおらかな雰囲気だという印象。


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ひとまず浴室でひとっ風呂。狭さといい、薄暗さといい、昔ながらの旅館風情。手前にあるのは源泉そのままを使用した湯船で、ひんやり加減が気持ちいい。奥にあるのは加温した湯船だが、長湯好きにはたまらないぬるさ。冷たい、温いを繰り返していたら、あとから客がやってきた。廊下の向かい側にある混浴湯船の話題になり、「入ってもいいらしい」との話を聞き、さっそく移動。


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裸のまま廊下を突っ切ることが恥ずかったが、それは難なくクリア。もし事情のわからない客が居合わせたならば、変態騒ぎの衝撃的光景だろう。そして、広々とした湯船にざぶんと浸かる。こちらも源泉そのままの温度だが、湯船が広いためか先程よりも冷たく感じる。古くから万病に効く霊湯として知られ、地元の人々の湯治で賑わったという。そんな光景を想像してみるが、一人ぽつーんとこの浴室を独占するのは贅沢。いやむしろ寂しい。実はここを訪ねたのは5月の、とある平日。混浴に期待するなどもってのほかで、出会ったのは男性客ただ一人。


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訪ねるならば猛暑真っ盛りの今がおすすめ。個人的には極寒の時期にも、また訪ねてみたいと思う。


岩下温泉旅館
源泉/岩下温泉(単純温泉)
住所/山梨県山梨市上岩下1053
電話/0553-22-2050
交通/JR中央本線山梨市駅からタクシーで約7分
     中央道一宮御坂ICから約20分
料金/大人400円、小人300円
時間/9:30~20:00、毎週月曜日休館

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1都3県とは言うけれど、神奈川県民にとって埼玉県は未知の世界。ディズニーランドや成田空港に千葉県という実感はないが、埼玉県にいたっては東北道、関越道で通過するのみ。川越、秩父と観光名所も思いつくが、いかんせん埼玉県は近くて遠い。しかし、何かにつけて埼玉県を訪ねてみたいとは思っているのだ。その結果が吉見百穴。まず百穴という言葉の響き。異様な光景をさらけ出す横穴墳墓群。すぐそばには岩窟ホテルという名の廃墟。「B級スポット」とは吉見百穴のためにある称号なのかもしれない。


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平日の閑散とした吉見百穴をじゅうぶん満喫し、次に向かったのは、百穴温泉春奈という温泉施設。「東京からいちばん近い混浴」との触れ込み。事前に下調べしたときは、「大きな発見だ!」と胸躍ったが、吉見百穴の入口からして看板が出ていた。しかし、この古くさい看板を見て訪ねたいと思うか否か。ふらりと立ち寄る客もたまにはいるのかもしれないが、多くは下調べしたうえでの興味本位の客、あるいは常連客だろう。


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川べりの道から逸れ、奥へと入っていくと、百穴温泉春奈の建物があった。玄関先には「旅館部 百穴温泉」「センター部 春奈」という2つの看板を掲げているが、センター部が何を指すのかは不明。吉見百穴の入口には「割烹 春奈」と出ていたが、割烹旅館らしき風情はない。背後には木々が生い茂り、時おり「パーンパーン」と乾いた銃声が聞こえてくる。もしや狩猟区域?と思いきや、実は近所の射撃場によるもの。


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フロントには誰もおらず、館内も静まり返っていた。何度か声を張り上げて呼びかけると、やがておばちゃんが対応に出てきてくれた。現在も旅館として営業しているのかわからないが、客室は富士、筑波、赤城、浅間といった具合に、地元とは関係のない地名が付けられている。廊下の洗面所には、ダンディズムの定番「MG5」。薄汚れた暖簾をくぐると、いよいよ脱衣所だ。ロッカーなんて気の利いたものはないので、貴重品はあらかじめおばちゃんに預けておく。番号を書いた紙と引き換えという、シンプルなシステムだ。


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浴室のくたびれ加減は、どう表現したらよいのだろう。あちこちが黒ずみ、そして傷んでいる。体育館のような大空間で、室内の大部分を岩風呂が占め、奥には一段上がってタイル張りの湯船もある。右手側は背の高い木が茂っており、さながらジャングル風呂といった雰囲気。「美容と健康に露天風呂」のはずだったが、アーチ型の屋根に覆われ、しかし透明の波板なので採光性は申し分なし。左手の一角には女性専用の浴室もあるが、目隠しのためか白ペンキが吹き付けられている。これで良しとするならば、経営者と客との感性には大きな隔たりがあるといえる。


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客は10人ほどいたが、なぜかタイル張りの湯船に集まっていた。どうやら1人の女性客を、男性陣が取り囲んでいるのだ。といっても、皆が知り合いではない様子。中心になって会話を盛り上げる人がいれば、その光景を眺めながら話を聞いているだけの人も。こういう場では、日頃の社交性や個人の性格がそのまま反映されると思う。共通するのは下心か。


「ここは夫婦やカップルの客が多いですよ。たまにエロい目的で来る客もいるようですね」
「ここの雰囲気は気に入るか、嫌がるかどっちかでしょうね」
「お風呂で裸を見てもいやらしい気分にはならないですね。裸でいるのが普通なのだから」
「先週はニューハーフが来ていましたよ。女性と見分けが付かないですよ」


聞こえてくる会話の内容に納得している場合ではなかった。我こそは常連だと自称している人ばかりだし、訪れる目的も実はハッキリしている。傍から見れば異様な光景だが、女性客は不思議なほどに平然としており、むしろ際どい会話を楽しんでいるようでもある。同伴の男性がいるらしく、このような状況になることを理解したうえで訪問しているのであろう。

「岩風呂に行こう」という女性客の掛け声で、皆がこちらに移動してきた。一斉に、というわけではなく、ここにも積極性が表れる。あとから合流する人は、「下心は決してありませんが、たまたま岩風呂にも行きたいと思っていた」。そんな言い訳ではなかろうか。女性客も含め、そろそろ中年に差し掛かろうかという年代。ちらっとしか見れなかったが、女性客は同伴の男性とかなり身体を寄せ合っている。それに興奮して「もっともっと」と、取り巻きが囃し立てる。この先エスカレートしたらどうなってしまうんだ!?とドキドキしたが、そのへんは心得ているようで、しばらくしたら「もう出ようか」と女性客。そして誰もいなくなった。ここまでくると唖然を通り越し、滑稽でしかない。


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大広間の休憩室はステージ付き。先程のカップルとは別にもう1組の姿もあり、それぞれに集団が出来上がっていた。ここでもやはり、輪の中心で会話を盛り上げる客、少し離れて様子をうかがう客という構図。女性が「疲れた」と言えば、すかさず誰かが「マッサージしましょうか?」と持ちかけるし、「エロマッサージでもいいですよ」とぶっちゃける。もう1組の集団では「湯冷めしてきちゃったよね」などと、しきりに女性を誘っている。やがて女性が立ち上がると、それに男性陣が続いていく。様子見の客というのは、正確に言えばどちらの輪にも対応する流動層のようだ。先程まで入浴していた客も、なぜか浴室へと消えていく。このような光景は、1日に何度繰り返されるのだろうか。

泉質うんぬんはもはや二の次。インターネットが普及している昨今、何も知らずに訪ねる人は稀だと思うが、予備知識を仕入れていてもなおハードルは高い。温泉の楽しみ方は人それぞれだし、混浴も立派な温泉文化。客どうしが楽しんでいる様子だったので、あえて否定も肯定もしないが、個人的には衝撃的な体験だった。


百穴温泉春奈
源泉/百穴温泉(温泉法の温泉)
住所/埼玉県比企郡吉見町北吉見1159
電話/0493-54-1888
交通/関越道東松山ICより約4.8km
料金/大人1,500円、小人750円
時間/(平日)10:00~21:00、(休日)10:00~19:00
     毎週月曜日定休

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Author


    シダ トモヒロ
    -Tomohiro Shida-
    大学時代より国内各地とアジア諸国をおもに旅する。また高校時代から同人誌や機関誌の編集に携わり、98年創刊時より「旅の雑誌」編集人。趣味は旅行、ビリヤード、野球観戦。

    ミニコミ誌HP:
    旅の雑誌ONLINE

    温泉&野球ブログ:
    旅は哲学ソクラテス

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