前回は成田山霊観不動教会の永和温泉みそぎの湯を紹介したが、今回は白装束を身にまとって入浴する温泉。その名は「ふるさと観光ホテル」といい、鹿児島市の桜島にある。噴煙立ち昇る御岳の南に位置し、外観もスタッフの対応も当然ながらホテルらしくあり、どこにも宗教的要素は見当たらない。しかし海辺の露天風呂には龍神が棲むとされる巨木があり、その根っこには観音菩薩像が祀られている。神聖なるこの温泉、最近ではパワースポットとしてもてはやされているらしい。
斜行エレベーターで露天風呂へ。フロントで手渡された白装束は背中に「南無観世音大菩薩」の文字。混浴とはいえ浮ついた気持ちはご法度だ。鳥居をくぐると注連縄を張り巡らせた御神木の堂々たる姿。樹齢200年を超えるという。
「この巨木には強い龍神が棲む」「(龍神曰く)われを祀れば力を貸す」と言ったのは、薩摩長谷寺の住職妙光上人。遠き日の伝説かと思えば、昭和60年と最近のことでちょっと拍子抜け。しかし、これまでに紹介した「稲龍大観音」の星山温泉稲龍神山スポーツランド、「霊観不動明王」の永和温泉みそぎの湯とは、聖域としての尊さ、壮大なさまは比べるまでもなく。そもそも古里温泉が発見されたのは宝暦5年(1755)4月8日。そう、お釈迦様の誕生日なのだ。「仏の湯」として親しまれ、かつては湯治客も訪れたという。
あらためて露天風呂を見渡す。目の前には錦江湾の広大な海が広がり、この開放感もなかなか得られない経験だ。日帰りの入浴客でも露天風呂のほか、内湯大浴場、温泉プールを利用可能だがここでは割愛。すべてを満喫しても大人1,050円とは、さすが温泉天国鹿児島県。懐の深さを感じずにはいられない。
ふるさと観光ホテル
源泉/古里温泉(ナトリウム-塩化物泉)
住所/鹿児島市古里町1076-1
電話/099-221-3111
交通/桜島港より無料シャトルバスで約15分
料金/大人1,050円、小学生740円、4歳~小学生未満530円、3歳以下320円
時間/8:00~18:00
※清掃日(基本は月・木曜日)の場合は変更あり