木曽岬温泉がいま話題になっていることをご存知だろうか。看板にそう書いてあるのだから間違いないが、むしろ話題にしているのはB級スポットマニアだけかもしれない。「ゴールデンランド」というイカしたネーミングセンスにして、ジャリ風呂、ジャリサウナのキーワードにも心が躍る。

木曽岬温泉があるのは、愛知、三重県境の木曽三川デルタ地帯。田園風景を名四国道が分断し、付近に目ぼしい観光スポットは何もない。まともな人なら長島温泉（ナガシマスパーランド）に行くだろうし、すぐ近所には庄助という料理自慢のちゃんとした温泉旅館もある。

遠くからでも目立つ古ぼけた建物とは対照的に、エントランスの看板だけが歓迎ムードを示している。「いらっしゃいませ」の文字をくぐると、がらーんとした光景が広がり、しかも物音ひとつしない。大宴会場の賑わいなど想像もつかないが、どさ回りの演歌歌手のポスターが貼ってあったりもする。

浴室は500名収容と贅沢な広さを誇るが、客はまばら。おじいさん達は湯船に浸かるでもなく、床でごろんとしている。お湯は大量にあふれているから、そこかしこが寝湯なのだ。皆さんに倣って寝てみるが、お湯は意外と熱い。そしてふと目をやれば名古屋城（なのだろうか）。さすがだ。

そして名物ジャリ風呂。その名のごとく床一面には砂利が敷き詰められ、お湯をうっすらと張っている。石を均して寝てみれば背中や腰のつぼ押しが心地よい。砂風呂よろしく埋もれてみるのも良いだろう。苔むした玉石にげんなりするが。ちなみにジャリサウナはこれの室内版で、スチームサウナ感覚だ。

露天風呂はないが、外気浴の中庭があって、ベンチではおじいさんが寝ていた。ここを訪ねる客は寝る以外にやることはないのか。とくにオモシロハプニングもなかったため、このレポートは結論もなくおしまいにしたい。