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第7回 美春かす柏ビレッジピープル〜In The Army

刈部山本

旧日本軍に関連する遺構を取り上げるが、プロパガンダ等の政治目的はなく、単に戦争・軍事に関する遺跡・遺構の存在そのものに興味があるにとどまり、筆者自身何れの団体にも属していないことを最初に表明しておく。

またまた常磐線である。連載7回にして異様な登場率だが、スケージュールとかそういう関係で今回は金町・松戸の先、柏を取り上げる。
常磐線沿線とあって都内通勤用の完全なベッドタウンだ。空き地を求め、今のように都内ではなく郊外にマンションなど宅地開発が広がっていった80年代に出来上がった街。山や大地を開いていった様が地図からも垣間見られるように、稜線に沿って街が形成されている。開発の波はその後さらに郊外へと広がり、そして都心回帰へと戻るわけだが、ここに来て再び柏にもまだ山があんぞ!?とばかりに柏の葉を中心に新たな街ができようとしている。それにしても宅地開発できるほどの平地がまだ余っていたってのも妙な話だ。どうもきな臭い。
そんな中に田園都市線なんぞを走らせて東京〜神奈川のコジャレた宅地開発をしている東急が柏ビレッジと称して住宅街をつくった。東武じゃない。東急だ。これはオカシイぞというわけで、柏駅からバスに乗り込む。国道6号を東へ進むと国道16号とぶつかる。道路交通情報の万年渋滞でおなじみの呼塚(よばつか)交差点だ。バス停のアナウンスで耳慣れた地名を聞くと「ここだったのか!?」なんてちょっとした感動を覚える。この先北柏駅を過ぎたあたりで脇道にそれると途端にかつて農村だったような旧道的風景が広がる。北上する県道7号線はバス通りになっているようで、地形的にも台地の間を通る昔からの道のようだ。宅地化された町並みの中に工場やら古びた商店や寺社が垣間見られる。こうした床屋も未だ現存している。

床屋

花野井木戸という交差点で急に右道へ反れる。沿道は一気に住宅地の様相を呈し、緩やかに蛇行する上り坂に入る。いよいよ柏ビレッジだ。流石東急というかまるで田園都市線沿線にワープしたような町並みが忽然として現れる。湾曲する高台に沿うように街がくの字に出来上がっていてとても不自然だ。高台の上は畑やら農家が見受けられ、上と下で風景は一変する。そんな風景に突如としてドカンのような穴の開いたコンクリートの棒が6本、畑から突き出しているではないか!?

ヒューム管

ヒューム管といって、地下に彫ったトンネルの通気筒となっている。実はこの高台と思っていた場所は隆起したトンネルそのもので、500mほど続くこれは、第二次大戦末期に開発されたロケット戦闘機秋水の燃料庫だった。
子供が遊びで筒の中に入るようで、入口は針金で入れないようになっていた。間近で見ていると自分のような不審者が多いのか、農家の犬がワンワン吠えてきた。「オマエなにしとんじゃー!?」という勢いに圧され、そそくさと後ずさりし、下へと坂を降りた。すると途中に草むらに紛れるように円筒の輪切りのようなコンクリ塊が。

コンクリ輪切

なんとトンネルの出入口。そして住宅地と分かつトンネルの脇道からも錆びたハッチのようなものが。

錆びドア全景
錆びドアUP

流石にドアノブは取られ隙間はコンクリで固められているが、開いても入れるもんか。ビビリの自分にはムリムリ。でも隙間から風は流れてくる。入れ替わってもう60年前の空気ではないだろうが不思議な感じがする。

さてインパクトあるものに出会った後はお腹がすくというわけで、花野井交差点を挟んで向かいの美春に入る。北松戸と松戸新田の中間にある味噌ラーメンの名店の3号店。地元の車で一杯。既に人気店だ。最近出来たばかりとあって真新しい店内のカウンターに腰掛け注文。味噌が有名なのに、塩頼んじゃうし自分。「だし塩」というのネーミングに負けた。塩星人にとって、だしという響きには惨敗である。

だし塩

ニンニクが仄かに効いていて、ダシが濃厚というほどでもないのにラードと伴ってまったりとした口当たりになる、という非常に珍しい塩ラーメン。味噌ラーメンの方法論でつくられた塩ラーメンという感じがして面白い。スープの重さもあってか、見た目の割りにボリューミーな一杯だった。正直750円は高いと思うが、札幌ラーメンが平均高いこととこの内容のラーメンなら近隣で人気を集めても不思議ではない。

美春

らあめん美春 柏店
11:30〜15:00/18:00〜22:00
定休:水曜
柏市花野井738-2
※時間等変更の場合があります
詳細なレポは著者ブログ記事参照

花野井交差点には西南へ伸びる抜け道のような路地がある。舗装されてはいるが工場の脇のジャリ道的な雰囲気でかなり千葉ロードの風情。そこを真っ直ぐ進み、ライフタウンという住宅街を抜けると国道16号に出る。周囲をヤマダ電気やらホームセンターに囲まれた郊外まるだしの一角に典型的なスーパー銭湯の極楽湯がある。
この日は入浴料390円のサービスデー最終日。通常平日600円でも安めなのにこれはラッキー!銭湯以下だ。受付の近所の高校生っぽいバイトくんもタルそうで千葉爆発だ。これを楽しめるようにならなくてはいけない。
露天風呂の温泉は遠めには結構な黄金色がついてるように見えたが、近くで見ると透明度が高い。ヌメリもあるが、だいぶ循環されちゃっている感じが。しかし保温効果が高く、ゴロ寝処で寝ててもなかなか冷めない。それとかなりしょっぱく、寝てると肌がカピカピになってくる。入っちゃ出て寝てを繰り返したが、なかなかいい塩梅である。かけ湯や水風呂以外の殆どの湯に温泉が使われているのは嬉しい。土休日は混むそうなので割に合わないかもしれないが、平日なら今のままでも十分満足できるのではないだろうか。

極楽湯

極楽湯 柏店
9:00〜03:00 定休:無休
柏市大山台1-18
※時間等変更の場合があります
HP:極楽湯公式サイト

極楽湯を出て16号に。無料送迎バスが終わってる時間だったので路線バスに乗ろうとバス停へ向かったのだが、確かこの辺にってあれ?…ない。次のバス停まで歩くことに…それもない。おい、この路線廃止か!? 仕方なく30分弱かけて柏まで歩くことに。かなりトホホだが、湯冷めしなかったなり。

あ、そうそう、今回肝心の秋水燃料庫やらラーメンのレポートがそっけなくないかい!?と思われたかもしれない。まぁ1回の掲載であんまり長々書くのもって気持ちもあるのだが、実は今回取り上げたルートは、筆者の新刊ミニコミ誌『多摩湖B食ライン〜デウスエクスマキな食堂07年夏号』でも取り上げているのだ。秋水の詳細はもちろん周辺の軍事遺跡も取り上げている(逆に本に掲載できなかった写真を今回載せてもいる)。本誌のメインは取水塔など多摩湖周辺の近代建築とB食なので、次回その辺をかいつまんで紹介ってことで。お楽しみに〜



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏に潜む古本喫茶を自営。レトロ少女マンガ・サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが揃う空間で最高品質の珈琲と自家製ケーキを持て成す。
ふるほん結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2007年8月10日更新
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