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西郷隆盛貯金箱

さえきあすか

その21 西郷隆盛貯金箱の巻


 食玩ブームが続いています。
 タイムスリップグリコを筆頭に、少し前ではチョコエッグや、ペプシコーラについたスターウォーズ。365日バースディ・テディに、不二家のペコちゃん。そして2003年は鉄腕アトム誕生の年ということで、それを祝ってブリキ製のアトムが4月に発売されるそうです。これらの食品は店頭に並んでいると、とても楽しそうですし、出来もよいのでお買い得感もあります。
 同じ収集をするにしても、このくらいの大きさのモノだと、ジャマにならないし、まとめてダンボール箱に詰め込めるし、狭い家屋で生活する人にとっては、合理的で素晴らしいコレクショングッズだと思ったりして‥‥。
 その上「限定」となると、ついつい買いたくなってしまうのは、収集癖のある私としては、「わかる、わかる」って共感しちゃいます。だからといって、私が現在生産している食玩の収集まではじめてしまったら、たいへんなことになってしまうのは、想像するまでもありません。
 「私は古物で生きていくんだ!」
とわけのわからないことをつぶやいて横目に眺めていたのでした。でも、このテのモノって心の隙間に入ってきやすいんですよね。気をしっかりと持っていないと、パッと買ってしまいそうで怖い! 現に古いモノ好きな人たちの間でも、はまった人はたくさんいます。300円前後という安さは衝動買いには絶妙な価格帯ですし、なんといってももともと物欲が旺盛ですから。
二宮金次郎像

まぼろしチャンネル敷地内にある色玩の二宮金次郎像

 ところがある日のこと、私の心の隙間に入ってきてしまったんです。銅像フィギア人形のついたお菓子が! 「こころの像紀行」と書かれた箱を手に取ってみると、二宮金次郎、西郷隆盛、クラーク博士、伊達正宗、坂本竜馬などとたいへん渋いセレクトで、私は二宮金次郎が欲しくなってしまいました。だって、戦前教育の象徴のようにいわれた二宮金次郎が、平成14年にオマケとして登場したのですから、意識せずにはいられません。ついつい2箱も買っていました。自宅に帰ってワクワクしながら開けてみると、でてきたのは坂本竜馬と小便小僧でした。うーん残念! でも小便小僧はシークレット・キャラで、当たりを引いたようですし、どちらもよくできているので、しばらく台所に飾っていました。けれど、引っ越し以来見たことがありません。どこにいってしまったのでしょう? いずれでてくると思いますが、私の中では、やはり古いモノを超えることはできなかったのでした。

西郷隆盛貯金箱

 なので、その代わりというか、それ以上に素晴らしい西郷隆盛を、アンティークショップで見つけた時は、とても嬉しかったです。どんなモノかというと陶器製の貯金箱です。お店の棚の上に2個並んでいたのですが、手描きのため、それぞれの表情が微妙に違います。どっちか1つを選ぶことができなくて、両方買ってしまいました。こころの像紀行と同じく、上野の山に置かれた銅像のデザインです。上野公園のお土産だったのでしょうか?

西郷隆盛貯金箱

 西郷隆盛の銅像が上野公園に建てられたのは、今から105年も前、明治31年だそうです。高村光雲が西郷隆盛像をつくり、薩摩犬のツンは後藤貞行がつくりました。けれど西郷は写真が大嫌いで1枚も残っておらず、銅像の顔が本人に似ていないと奥様がいったとか。
西郷隆盛貯金箱 貯金箱の西郷隆盛はというと、その似ていないといわれる銅像を、ますます漫画ちっくにした、可愛らしい西郷隆盛に仕上がっています。奥様が見たら怒ってしまいそうです。見比べてみると、西郷自身の顔が違うのはもちろんですが、愛犬ツンの顔はおもしろくて笑ってしまいます。古い貯金箱は以前から集めていますが、これははじめて見たモノで、いつ、どこで手に入るかわからない奥深さは、どんなによくできた新物もかなわない魅力だと思うのです。つまり超限定品の西郷隆盛貯金箱。いかがでしょう? ステキだと思うのですが‥‥。

『少年ブーム』 さてさて、ブームといえば『少年ブーム』。正式なタイトルは『少年ブーム 昭和レトロの流行もの』(晶文社)です。いまさら私が書くのもなんですが、串間努さんが書かれた新刊です。本を読むのが、ものすご〜く遅い私でも、さらさらと身体にしみこむように、楽しく読めました。万が一まだ読んでいない方がおられたら、手に取って読んでみてくださいね。
 昭和20年以降に子供たちの間で流行った物事を知る上での、資料的価値があるのはもちろんのこと、そこから垣間見ることができる時代背景に、年齢が近い私としては共感しつつ、幼少の頃の自分を思い出して自己分析なんかしちゃったりして‥‥。
 思えば私も30代半ば。人生半分(?)というこの時期に、世の中が大きく変わってきている先行き不透明なこの時期に、ちょっとだけ自分を省みる、そんな1冊としても、特に同世代の方には、おススメしたいと思いました。
 そして個人的には、ここ何年か串間さんの活躍を、ちょっとだけ近くで見てきたので、資料本としてだけではなく、串間さんのこまやかな子供の頃を語るエッセイに感激し、尊敬の思いを持って読んだのでありました。


2003年5月1日更新
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その20 爆弾型鉛筆削の巻
その19 へんてこケロちゃんの巻
その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


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