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第12回「ニセモノのおもちゃ」の巻
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◆ニセモノは悪か
日本ではブームとなった商品のニセモノ、模造品が出てくるのはもはや「便乗文化」というカテゴリーを形成しているといってもいいほど当たり前のことになっている。
もちろん著作権法などの法律で保護されているものを無断で真似して利益を上げるのが「文化」かと、利益を受ける側の当事者からいわれれば、一言もない。しかし真似したものが「これはもともとオレが書いたのだ」という無茶でもいわない限り、零細業者が便乗して微妙にデザインやネーミングを変えてこっそり販売しているのを、面白がる余裕というのを、傍観者は身勝手に持っていたりするわけです。真似した側も厚顔無恥ではなく、後ろ指さされる可能性を知りながら、エイヤでやっている部分もあって、グレーゾーンのかけひきはみている分には面白い。
例えば先日、文房具屋の前に置いてあったガチャガチャには「シーモン」という商品があった。塩水エビの卵とエサと塩がカプセルに入っているもので、飼育して楽しむ玩具である。これはアメリカ由来のブーム玩具「シーモンキー」と「シーマン」のダブルミーニングだろう。とうとう、「生き物」までガチャガチャになったか……とビックリし、ネーミングにうなった。ガチャガチャはブーム玩具のパチモノの宝庫で、ピースマークバッチ、ルービックキューブ、モーラー、ミーバなどの一般玩具がヒットするたび、カプセルの中に取り込まれていった。もちろんメーカー品ではないから、スライムなどは「トロリーム」「カオリーム」などと名前を変えた。「コスモス」というメーカーは何度も新聞沙汰ほど物まね玩具で当局から叱られたカプセル玩具のメーカーだが、「カードダス」のときは「カードです」、「ビックリマンシール」のときには「ロッテ」ならぬ「ロッチ」で切り抜けていた。ここまでいけばもう一種の芸であり、子どもたちも本物ではないことを知りながら、偽物を買っているわけである。大人が偽ブランドと知りながら安いバッグやポロシャツを買うようなものだ。
ビックリマンのニセモノのドッキリマン
なぜ、ニセモノがでるかというと、一番の動機は、柳の下にドジョウがあと何匹いるかをとりあえず数えに行くという、いま売れているモノさえだせばローリスクで商売できるという考え方である。しかし、その背景には、急にブームとなったために商品の提供が間に合わずが市場にモノが枯渇していることや、正規品より安くすることで、子どもの小遣いで入手できやすくなるという、児童消費者へのメリットがあるのだ。ゲリラ的にあちこちの文具、玩具ルート、露店ルートなどで販売されるので、特定の店だけに頼る正規品と違って品切れになることもない。子どもたちは本物ではないことを納得づくの上で購入しており、正規品そのもの信用に傷がつくことはまず、ないのだ。売り上げが本当にそのニセモノの分だけ減少するのかも微妙だし。
盗作商品、著作権法違反の商品が目立ってきたのは、キャクタービジネス手法が確立してきた昭和40年代である。まんがや特撮のヒーローキャラクターを子どもの玩具や文具、雑貨に意匠として用いるのは商品化権という。これを窓口になっている会社を通じて権利を買い、販売価格の5%程度を使用料金として支払う。
戦後は最初、昭和34年に森永製菓がチューインガムやキャラメルにディズニーキャラクターを使いキャラクターものへの先鞭をつけた。昭和38、9年ころには明治製菓が鉄腕アトム、グリコが鉄人28号を使い、子どもたちの人気を集めた。
昭和42年の朝日新聞によれば、鉄人・アトムの次ぎが「オバQ」時代という。菓子、ビニール人形、靴に文具にとあらゆる子ども商品に化けて、100億円の市場になったといわれる。しかしこれも当然「オバK」「オバO」などのニセモノがあらわれ、それだけで50億円もの売り上げがあり、オバQ人気は短命に終わってしまった。ニセモノの現れやすいのはビニール人形、メンコ、プロマイド、駄菓子などで、メーカーは大阪、名古屋、東京の江東地区などに集中していた。ニセモノが見つかると、商品化権の窓口になっているテレビ局や出版社の担当者が弁護士といっしょに製造元に乗込み、製品の型を破棄させ、在庫品を捨てさせる。小学館が摘発したニセの「トッポジージョ」は「トッポイジョージ」をふくめ23件ものニセモノがあった。零細業者は、最初から違反を承知で短期間に売りまくり、摘発された時は残品なし、ということも多かったという。
「なめねこ」ブームのときは「なめんなよ」ではなく「なめるなよ」というフレーズでニセモノが出た。
いやもう、単純におかしくて、当事者でなければ目くじら立てるより面白がりたい話ではないか。マジに怒るほうが負けのような気がしませんか。
今後もブーム玩具が出るたびどんなパチモンが出るのか目が離せないところである。
2004年1月7日更新
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