教師から俳優へ、戸浦六宏ロッコウ

　恥ずかしながら暫く前まで、彼を六宏ムツヒロと読んでいた。周囲の人もそんなに注意深く聞いていなかったのか。それとも知っていながら知らないフリをしてくれたか。
　何しろ眼光の鋭さと、口跡の良さには定評があった。大島渚監督の勧めで、映画界に入った程だから、彼の作品の多くに出演している。うるさ型の大島に認められた、その演技力には万人を唸らせるものがある。
　「ぴあシネマクラブ1」（ぴあ株式会社）の彼の項にはこう記されている。
　知性と悪意のまざった名バイプレーヤーとして、印象深い足跡を残した。
　最近の俳優じゃ、痴性のまじった者はいるが、知性の感じられる者は少ない。

　私がこの人の名を覚えたきっかけは、中学三年生当時のTBSTVの人気ドラマだ。
♪葵の花に咲く　時代の嵐
のテーマソングもヒットした「新選組始末記」である。御大・片岡千恵蔵に負けず劣らずの重厚感あふれる、中村竹弥の近藤勇が格好良かった。（香取慎吾もいいが、彼らと比べるのは気の毒）そして近藤の補佐役、鬼の副隊長・土方歳三を演じたのが戸浦六宏であった。思えば中村竹弥、戸浦六宏が一躍売り出したのが「新選組始末記」である。
　冷酷なようでいて、時には人情味たっぷりの幅のある演技で、戸浦は茶の間のファンの人気を得た。
　どうしようもない位のワルを演じても、この人の瞳には悲しみが滲んでいた気がした。ここにシビれた女性ファンも多かったに違いない。田宮二郎の迫真の演技で人気になった「白い巨塔」でも、彼は存在感を見せつけてくれた。知的で二枚目の田宮にも、郵政公社顔負けの”真っ向勝負”の名演技で話題となった。学生運動に奔走した若い頃だが、そんな経験が滔々と流れる地下水を思わせる表情が印象的な俳優である。

フックの職人、勝又行雄
当たり役、沢田部長刑事の芦田伸介
名タッグ屋ハードボイルド・ハガティ
名唱ジャイアンツを偲ぶ
2人のもろ差し名人
ニヒルな敵役・成田三樹夫
女性コメディアンの第一人者・若水ヤエ子
知的でとぼけた名優・有島
哀愁のモゲラ
悪役・進藤英太郎賛歌

2004年12月22日更新
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