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第8回 村山武蔵は死んでない!ホープかなえたまえ

刈部山本

旧日本軍に関連する遺構を取り上げるが、プロパガンダ等の政治目的はなく、単に戦争・軍事に関する遺跡・遺構の存在そのものに興味があるにとどまり、筆者自身何れの団体にも属していないことを最初に表明しておく。

自分の自主制作ミニコミ誌完成記念!というわけで、本誌で巡った多摩湖周辺の食べ歩きの中から、ある軍事遺跡とその周辺をピックアップしてみたい。前回柏から逆に東京都心を飛び越えて東大和・武蔵村山市へGO!
新宿から西へと伸びる西武新宿線。本線は小江戸川越を目指し小平市の辺りから埼玉へと北上するが、枝分かれする拝島線はそのまま西走する。西武線でもとりわけ小平界隈は数駅しかない短い路線が交錯する奇妙なエリアで、現在の形に至るまで相当な紆余曲折があったようだ。また小平界隈は軍需工場など旧日本軍関連の施設が多かったこともあり、軍用線として轢かれた路線もあり、形を変えつつもその名残を知ることが出来る。
玉川上水駅に降り立ってみると、そうした歴史的背景を払拭するかのように駅前は再開発たけなわで、高層マンションやショッピングモールの建設ラッシュの最中、クリーンなイメージの郊外型の街が出来上がろうとしている。隣接する東大和南公園はニューファミリー(って言葉も古臭いか)の憩う場所として、鼻白む程コシャクな公園となっている。しかしである。そんな平和をぶち壊すアレがここには待ているのだ。

立川工場変電所

旧日立航空機立川工場変電所。昭和13年に大森から移転してきた東京瓦斯電気工業株式会社の変電所で、翌年に日立製作所と合併。航空機部門として日立航空機株式会社が創設され、この工場は日立航空機株式会社立川工場「立川発動機製作所」と改名された。主に航空機のエンジンを製造し、北隣にあった設備で受電した電気を変電して工場内に供給していたそうだ。日本が太平洋戦争に突入した当時、こうした施設は全て軍需工場と姿を変えた。その為米軍の空爆対象となるわけだが、壁面に残る無数の弾痕は、昭和20年の3度の爆撃によるもので、特に3度目のB29の爆撃により工場全体は壊滅的打撃を受けたという。戦後は平成5年まで小松ゼノアの変電所として使われていたそうだ。

2F窓UP
背面

2Fの大きな窓から内部の様子が見て取れる。また裏側には受電した電気を建物内部に引き込む設備も現存しているが、これらは小松ゼノアで使われていたからまだ新しく見えたのだろう。鉄筋剥き出し箇所も多くその爪痕の生々しさが大迫力の物件なのだが、それに反してあまりにも平和な日常的光景となり何ら意に介さない周囲の親子連れとの対比が奇妙な光景を生み出している。

奇妙な気持ちを抱えたまま多摩都市モノレールを頭上に見ながら芋窪街道を北上する。終点上北台駅から西へ折れた辺りに巨大な団地群が出現する。横約400m縦約600mで囲まれた緑が丘と記された町全体が全て団地という都営最大のアパート群、村山団地である。

村山団地

昭和39年から41年に建てられた区画と平成9年から12年に建てられた新しい区画で構成されており、先の区画が2495戸、後が726戸となっている。これらが敷地内隅々までビッチリアパートで埋められているのだ。デカ過ぎて想像がつかない。実際訪れてみても全体像がつかめず、その並びあう様がフレームに収まりきらない。
一部フェンスで張り巡らされた区画があった。隙間があったので覗くと、2階建て長屋式のテラスハウスになっていた。その殆どは立ち退きが完了しているのだが、一部まだ残る住居者のため、フェンスが貼られていない箇所が出来ているようだ。

フェンス
テラスハウス

現在、昭和30〜40年代の団地ラッシュの時に建ったアパートが耐久年数オーバーの時期に来ており、立替と称して新しいマンションタイプが建設されるために取り壊しが相次いでいる。当時急ピッチで作られた団地にはフォーマット化されたスタイルがあって、この時代ならではの様式美で溢れているが、それらももう用無しと引退を迫られている。

村山団地脇に店を構えること30余年、比較的ライトなスープに背脂が乗るスタイルは一世を風靡し、幹線道路をならすタクシー運転手を中心に人気を集めたホープ軒一族の店。10年ぶりの訪問だったが、コの字型のカウンターが牛丼チェーンのように2つ並んでいるのと、店内にTVがありやっつけ感溢れる店員のアンニュイさは未だ健在で、入店するだに相変わらずの豚骨臭とともについ頬が緩む。

村山ホープ

ラーメン¥590は相変わらず丼が大きくボリューミー。久々の味は以前は薄めに感じられたスープだったが驚くほど豚骨ダシがしっかりしており、獣臭に似合う程飲み応えがある。背脂の甘みとややショッパめのタレの塩気とネギの辛みのバランスがとてもいい。麺は硬め指定にしたが粉のボソボソ感がとてもスープとマッチしている。チャーシューが肉厚でしっかりしていながら適度な柔らかさがあっていい感じ。
たまたまいいタイミングが重なっただけかもしれないが、今でも十分通用する味だと思った。いやはや大満足!!

村山ホープ外観

村山ホープ軒 本店
10:30〜02:00 月10:30〜20:30
無休
武蔵村山市学園3-59-2
※時間等変更の場合があります
詳細なレポは著者ブログ記事参照

今回はちょっと多摩湖から外れたが、こんな感じで巡ってみた。他にも地元民しか知らないラーメン屋や武蔵野うどんの名店から軍事遺跡と名所揃い。折に触れまた取り上げていきたい。まぁそろそろ東京都心に戻るかな・・・



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏に潜む古本喫茶を自営。レトロ少女マンガ・サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが揃う空間で最高品質の珈琲と自家製ケーキを持て成す。
ふるほん結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2007年 8月22日更新
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