田端宏章
第12回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その3
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さて、最近はトリスバー探しに凝っている私ですが、ついにトリスバー全盛期の面影を残すカウンターバーを発見いたしました。噂によると、その店では今だにトリスのハイボールが150円で飲めるとのこと。まさにかつてのトリスバーの価格そのものではありませんか!安く飲める庶民的なバーとして隆盛を極めたトリスバーの面影を求め、私は早速そのお店へと出向くことにしました。
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「サントリーバー まいまいつぶろ」
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東京・御茶ノ水、多くの学生で賑わうこの街に、その老舗バーはあります。聖橋口を出てすぐ右のケンタッキーフライドチキン手前に、なにやら古めかしい煉瓦製の壁が見えます。入口は幅1メートルくらい。奥にカウンターがあり、お店自体はうなぎの寝床のように細長くなっています。
年輩のマスターが一人で切り盛りしているこのバーの名は『まいまいつぶろ』(「かたつむり」のことです)。もう冬だというのにドアは開けっ放し。狭い店の中では、背広姿のサラリーマン達が長椅子に座ってトリスの水割りを延々と飲み続けています。カウンター席のみで、長椅子が3つ、12人も入れば一杯という狭さではないでしょうか。
一見さんということもあって、恐縮しながら奥の席に腰をおろし、早速、壁にかかったメニューに目をやります。すると、仰天。なんと「トリス 140円」と書かれているではありませんか。情報よりさらに10円も安いとは…。ちなみにサントリーホワイトは160円、オールドも260円と格安で、他にもジンやチンザノまであります。
棚にはトリスのビンがずらりと並び、奥にはオールドの記念ボトルもいくつか飾られています。ハイボールを注文すると、ホワイトを炭酸で割ったハイボールが出てきました。ピーナッツも200円と安いので注文すると、沢山のピーナッツに品川巻きが5、6個付いています。まさに、往年のトリスバーそのものの値段やメニュー、店内の様子に大感動です!
このお店は2階席もあり、お客が注文をすると、マスター自らが飲み物を御盆にのせて運んで来てくれます。ここのマスターは寡黙な人で、注文をすると黙ってうなずき、さっさとハイボールや水割りを作ってくれます。グラスを前に差し出すと、ハイボールを飲んでいた人には続いてハイボールを、水割りを飲んでいた人にはまた水割りを、次から次へと作ってくれます。安いウイスキーをたくさん飲みたい人には是非ともオススメしたいお店です。
結局、ホワイトのハイボール1杯とトリスハイボール2杯、それにピーナッツを頼みました。お会計は、しめて700円也。今の御時世、ピーナッツ一皿700円なんて店も多い中、よくやっていけるよなーと思わずにはいられない、素敵な老舗トリスバーでした。いつまでも残っていてほしいお店です(あとになって気付いたのですが、まさに、「かたつむり」の殻の中に近い、小さな小さな穴蔵のようなお店でした)。土日休。17:00〜23:30まで。
今どき、140円でハイボールが飲めるお店、やはりありました。だから東京は面白い!絶滅寸前のモノを追い求めて、まだまだ旅は続きそうです。
※日本絶滅紀行からのお知らせ
執筆者の田端が勤務している出版社「DANぼ」より、アンクル・トリスでおなじみの柳原良平先生の作品集が刊行されることになりました!トリス時代の作品はもちろん、
2002年現在の最新作までをビジュアルのみで構成した素敵な本です。発売は来年の春になると思いますので、首を長くしてお待ち下さい。定価は2800円くらいを予定しています。トリスを飲んで、Hawaiiへ行こう!
2002年12月12日更新
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