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「僕のダイヤモンド・デイズ」タイトル

似顔絵トランポリン・松岡

第十四回『再会、また一つ。僕のテレビに懐かしの少年ジェットが来た。』


 先週の木曜日、僕は、とんでもなく嬉しい小包を受け取ってしまった。ソレでここ暫く狂喜、エーッちょっと何コレーつ気分で白黒ビデオ抜かず三発状態の楽しい日々を過ごしている僕である。
 実は、懐かしモノのコラムやイラストを僕が書いていることを知った友人が、それならコレはどうだ−ツと言う感じで送ってくれたのが、小包を開いた瞬間にコキーンと勝負の一本。五十歳を過ぎてからは余り役に立たない僕のナニがモッコリしそうになった程嬉しく懐かしい「少年ジェット/紅さそり(5)」。
 手にしたパッケージも涙モノ。賢い犬シェーンを左に従え、軽く六十キロは出そうな夢のスーパーカブに跨がる少年ジェットのアノ勇姿、決めポーズ写真に感動。僕など、ウーヤータァーッの中高年ミラクルボイスが漏れる。

少年ジェット

 最近、レトロ玩具や三十年代の街の風景、四十年代風インテリアとか言って懐かしがりブームが全国で爆発的に起きてる割りには僕が欲しい懐かしモノに出会うことはなかなかで、仲良し中高年コーヒー談議の度にそこら辺の愚痴をこぼしていた僕であるが、僕より一世代後の新しいが今では懐かしモノが本当に多く嘆いている所にコレ。嬉しいーッ。
 今でも昭和四十年頃がつい最近的な感覚で話す僕から見れば、コレッと思うモノが簡単には手に入らず少し寂しい懐古ブームなのであるが、大好きな花王のパブ・桜の香りを入れた湯丹にタマちゃん状態で髭まで浸かってよく考えると、僕の好きなソレラは只今六十歳近くの思い出話にまでに遡り、何だかリンゴの歌線上感覚の懐かしモノ。パッパッとあるなんて無理かも知れないと微妙に納得し始めている。
 例えば、ソレ知ってますと言う展開になって一緒に話して行くと、彼が知っているのは白黒放送ではなくカラー放送・実写版ではなくアニメでしたという話になって、結局、オイオイとなるのである。
 そんな僕の時代の白黒実写版放送の元は、大体は「ぼくら」とか「少年」といった当時の月刊浸画本の中の人気漫画であり、月光仮面・鉄人二十八号・ナショナルキッド・海底人8823・鉄腕アトム等、漫画をテレビ映画化したものがほとんど。勿論、この少年ジェットもそうである。
 当時、僕などワーワー騒ぎながら七十円か九十円を握って買っていた月刊漫画本「ぼくら」に連載された、剣をとってもヤッパリ真空切りの赤銅鈴之助の漫画でも有名な武内つなよし原作の超人気漫画を、一九五九年フジテレビ開局記念として実写版テレビ映画化・放映されたものであるらしい。
 らしい、と言うのは僕はそこまで知らなかったわけで。改めて感心するのが、少年ジェットを演じる中島裕史君が、顔は勿論、髪型・体つき・マフラーや紐靴という衣装等全身が原作漫画の少年ジェットにモロ百%ソックリなこと。本当にビックリさせられる。
 一九五九年と言えば、多分、昭和の女王・美空ひばりが塩酸をかけられた事件があった頃で、僕など有楽町で逢いましょうを歌う小学生。こうして五十歳を過ぎて再び見ると、本当に懐かしく熱狂した記憶は確かにあるのだが、最初にドーンと画面に出る制作・大映テレビ室なんて全然記憶にないし、細かいストーリーも浮かばず状態。
 吠えるシェーン、少年ジェットのお尻、構えた拳銃、メチャクチャ格好良く風船をパパーンと一瞬で五個割る少年ジェット、ここで初めて僕は息をする。ニコッとしてシェーン行こうと叫び走り出す、スーパーカブ発進。最初のタイトルシーンは物凄くよく覚えているのだが、紅さそりと言われても顔さえ思い出せずもうナニが萎む程残念。
 勇気だ力だーッの主題歌は今でもキッパリビシバシ歌えるが、途中のジエー・イー・ティと言う現代風なかけ声が入っていたのは初めて知ったし、和泉雅子が由美役ということもエーッである。
 紅さそり一味の愛用車は、二ドア左ハンドルの外国車にビックリ。写真でしか知らない昭和三十四年前後に発売されたトヨペットコロナとブルバードを混ぜて叩いてモコッと間延びさせたような例のスタイルで、当時はまだまだ東京も車が少ないためかバックミラーさえついてないオシヤレな車に、スバル三六〇に乗っていた僕など興味深々。レトロ感に神経痺れ捲りといった所。
 少年ジェットが、丸の内界隈らしい人影もない道路をビュンビュン乗り捲るスーパーカブも、漫画にソックリでこれまた懐かしく新鮮。ソウソウコレコレと感動してしまう。
 テレビは漫画と速い、悪人をコテンパンにこらしめることはなく、逃げる紅さそりの手下の車にスーパーカブで追いつき(ここが凄い)車に飛び移る危険なアクションも見せるが(もっと凄い)、手下の腕を捻ったりパンチ合戦の末に勝負は引き分けに終わる少年ジェットを必死で応援していた。
 あの頃のテレビ映画を夢心地でみて過ごしていた僕が五十二歳で再びみて、どんなに子供騙しなテレビ映画であったかを知ってもソレはコンキリプー。僕などタイトルシーンの拳銃で風船パパーンを見た瞬間に感動の腕組み状態、少年ジェットに大拍手なのだ。
 確かに、あれから四十年以上経った中高年の目でみると、話やシーンの端々に変な所がいっぱい出てきて、木に隠れても見える大袈裟な服装や小道具の曖昧さ、中央郵便局へ来いなど実に変で極端なセリフの可笑しさについフフッといった具合に笑ってしまうが、そんなあの時代のリズムが懐かしくて胸が熱くなる僕である。
 夢中でみた月光仮面同様に、あの頃独特のどこか辻接が合わないマッタリストリー展開でもそんなの全然関係なし。僕が熱狂した連続テレビ映画のあの懐かしい少年ヒーロー「少年ジェット」は、中高年男の永遠に文句なしの超ーッ最高テレビ映画。今でも絶対みる価値ありの五つ星を、僕はつける。
 また懲りずに僕が古い白黒ビデオをみていると娘たちは騒ぎ、その側でイイ歳をしてと家内が呆れ顔で言う。ソファに座り込んで頬づえをつきながら、再会できるなんて思ってもいなかった懐かしい少年ヒーローに癒される中高年男の胸が蕩けるような心地よさは、剣先スルメに夢中の彼女たちには分かるわけないので絶対言わない。


2003年5月8日更新


第十三回『ユーミンとセックスと鎌倉、僕の二十七歳の別れ。』
第十ニ回『シロクロ本番写真と五本の指』
第十一回『永遠のオナペット、渥美マリ』
第十回『ジェームズ・ボンドのセックスとナニの話』
第九回『二十一歳の冬、僕とフォークと喪失と。』
第八回『大阪スチャラカ物と言えば、てなもんや三度笠で決まり。』
第七回『嵌った嵌った、森繁の社長シリーズとアレコレ』
第六回『ジュンとネネではなく、VANとJUNの話』
第五回『夏は怪談映画、あの映画看板も僕を呼んでいた。』
第四回『青春マスターベーション』
第三回『ワッチャンの超極太チンポ事件』
第二回『中高年男性、伝説のモッコリ。スーパージャイアンツ』
第一回『トランポリンな僕のこと、少し話しましょうか。』


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