園長 ペリプラ葉古
その12−ウーパールーパー
水槽の中に四足のトカゲのような生き物が入っています。
正面から見たら、平べったい顔にえらがひらひらしていてキュート。
思い出しました、あいつですね。
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メキシコサラマンダー知ってる?
と訊いて、ピンと来る人は少ないだろう。
サラマンダーは怪物の一種だと信じている方さえいるかもしれない。
じゃあ、アホロートルは?
これでも首をかしげる人が大半だと思う。
阿呆な老頭児(ロートル)と勘違いする御仁さえいるかもしれない。
でも、ウーパールーパーという名には耳覚えがある人も多いはず。
80年代に爆発的な人気を誇った“ぶきみかわいい”生き物のこと。
これ、全部同じ生き物の異称である。
ウーパールーパーはサンショウウオの仲間である。
サンショウウオといえば両生類。
両生類といえばカエル。
だから大雑把にいえば、ウーパールーパーはカエルの親戚なのだ。
そんなこといっても姿形が似ていなすぎる、と反論する前に
もう一度ウーパールーパーをよく見て欲しい。
尾っぽの感じなどオタマジャクシによく似ているではないか。
か細い手足も生えそろったばかりのカエルの子にそっくり。
なるほどカエルの親戚だと、納得してもらえるだろう。
ウーパールーパーがオタマジャクシに似ているのには理由がある。
やつらはカエルなどと違って一生水中で生活するのである。
ところがこれは両生類としては掟破りな振る舞い。
水陸両方で生活するので両生類という名をもらったくらいだから、
幼体時代は水中で、成体になれば陸上で(も)暮らすのが筋。
そのために両生類の幼体はえらを、成体は肺を持っている。
だがウーパールーパーは一生ひらひらのえらで呼吸を続ける、
いわば“水生類”なのだ。
このように幼体の形質を残したまま性的に成熟することを、
生物学用語でネオテニー(幼形成熟)という。
ウーパールーパーをへんなやつらと嘲ってはいけない。
なぜならヒトも幼形成熟の動物ではないかといわれているのだ。
ゴリラやチンパンジーからしたら、
毛が薄く顔ものっぺりしたヒトの大人なんて幼児にしか見えないはず。
子どものような脆弱な体で、性的活動だけはやたらお盛んな人間こそ、
やつらの気持ちをもっと汲んでやらねばなるまい。
ファッションと同様、ペットにもはやりすたりがある。
アイドルと同様、ペットには栄枯盛衰がある。
インフルエンザと同様、ペットもある年大流行したりする。
一時期国民中からもてはやされたペットでも、
時代が変われば顧みられなくなるなんてざらにある話。
ここで取りあげてきたスピッツもジュウシマツもそうだが、
ウーパールーパーもご多分には漏れない。
すっかり忘れ去られた感の強いやるらだけれど、
幼形成熟の同類だとわかれば、親近感も湧いてくるのではなかろうか。
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【ウーパールーパー】
両生類メキシコサラマンダー(アホロートル)の俗称。幼形成熟の
生物として有名だが、まれに変態する個体もいる。原産地のメキシ
コでは環境破壊により数が激減しており、野生種はワシントン条約
で保護されている。
※ ウーパールーパーの写真を提供して頂きました。
画像元 FREE MUSIC PERSONAL http://www2s.biglobe.ne.jp/~FREE-MY/
2003年3月17日更新
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