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第9回 未来こうかい〜ぼーっと銭湯で深川清澄

刈部山本

ご無沙汰しておりました。本来なら前回に続き手前の自主制作本関連として、本の初売りとなった即売会の帰りに立ち寄った京浜旅情篇をお送りする予定で半分以上書き上げていたのだが、なんとパソコンがクラッシュしてしまい、現在病院にて診察中・・・この連載で取り上げた町も関連する食べ歩き写真展を谷中芸工展というイベントでやるので(詳細は文末へ)そのデータも途中だったのに・・・というわけでなんとかパソコンが出来る環境を作り、保存していたデータからこうして書き上げ、とりあえずの復活!
というわけで、今回は第3回の続きとなる深川篇pt2。門前仲町の駅から北上スタートゥ!

門前仲町といえばその名のとおり深川不動・富岡八幡の門前町。深川飯も名物であり東京下町散策の定番であるがゆえに、ここは回避しましょ(実は期を改めてちょっとだけ立ち寄りやす)。
地下鉄駅上には永代通りと清澄通りが交差しており、車がビュンビュンのべつ幕無し走っている。下町的イメージとは遠くかけ離れているが、これが現実。これだけ車が走っているから以前より通り沿いのラーメン店は結構多かった。ロケーション柄、背脂のかかったこってりラーメンが目立ち、中でも浅草に本店を構える首都高下の弁慶は今でこそリニューアルされたが以前は道端で立ってラーメンを啜るというナイスでアツい環境だった。
弁慶を横目で見やり、高速下から西へと延びる葛西橋通り沿いに行列が見える。この界隈もラーメン店が散見できるが、弁慶などのこってりとは違い、動物と魚介スープのWテイストという少し時代の新しい店舗となる。大島の人気店蘭丸も支店を出し、尾道ラーメン麺一筋も見られる中に、行列の正体であるこうかいぼうがひっそりと佇んでいる。
人気店ゆえ、売切終了。酷い時には夜の部は30分も営業しないこともあったが、ここまで人気が爆発するまでに結構な時間がかかった。当時としてはなんでこの味で今ひとつブレイクしないのだろうと思っていた。はじめはメインのラーメンほぼ1本勝負だったが、つけめんを夏季限定を始めたあたりからブレイクの兆しが見え始める。その後つけめんは通年メニューに昇格したが、それ迄は限定だから「後○日で喰えなくなる!」と自分のサイトで声高に叫んだものだった。

こうかいぼうつけめん

そんなわけで、やはりここは通年化希望の念力の通じたつけめんを紹介したい。豚骨など動物系ダシがしつこくなく適度なコクを与え、魚介ダシも魚くさくならず、それらがどんぶりの中で見事に溶け合っている。チャーシューも脂身でインパクトを出しているのではなく、赤身がしっかりと煮てありホロホロとやわらかい。とりわけメンマが特筆もので、ぶっといそれは余計な味付けがされてないので当然しょっぱさも妙な甘みもなく、メンマが苦手な方でもきっと好きになれると思う。麺は特注の卵麺で、プルンとした食感がスープと見事にマッチしている。つけめんだとスープ割ができるので、ここのスープのカラーがはっきりと感じられ、最後まで堪能できる。

こうかいぼうスープ割

ここのもうひとつの味は接客で、メインでフロアを担当されている女性はここはラーメン屋か!?と思ってしまうほどの行き届いた気配りには感服である。

こうかいぼう外観

こうかいぼう
11:00〜15:00/17:30〜18:30
土日祝11:00〜15:30
定休;水曜/第1・3日曜
江東区深川2-13-10
※時間等変更の場合があります
詳細なレポは著者ブログ記事参照

腹ごなしに路地裏をぷらぷらすると再び車の陰が。その奥にはこんもりとした緑が茂っている。清澄通り沿いの清澄庭園だ。元々は三菱財閥の岩崎家の所有で、明治期に作られた代表的回遊式林泉庭園。震災後に宅地の半分と、東京市に寄付された付属地800坪をあわせて、現在の庭園となったらしい。まぁここ自体大変興味深いのだが、それ以上に、この清澄庭園にへばりつく様にコンクリート造の小さな商店が清澄通り沿いに何十軒も連なっている。

市営店舗住宅引き

これらは旧東京市営店舗向住宅といい、関東大震災で焼けた木造建築が昭和3年にコンクリート建築として出来たものという。岩崎家の所有時代に使用人の住宅と百軒近くあった店舗長屋が並んでこの景観が出来上がったとのこと。現在では所々が空きっ歯のように空き地になっていたりリフォームしている物件も出ているが、2階部分の幾何学模様のレリーフは看板の隙間からでも今なお多くの物件で見受けられる。

市営店舗住宅正面

市営店舗住宅ハザマ
市営店舗住宅2F寄り

後から付け加えられたレトロなイメージではなく、本当に以前からこの町に住まう人々がこうした建築が現在進行形で息づいていることからも感じ取れるが、こういう町では銭湯というものが機能できている。この店舗向住宅の清澄通りを挟んだ向かいの路地を入ったあたりにある辰巳湯は温泉ではないものの露天風呂があり、今でも利用者が多くあることを裏付けている。
清澄庭園を道路挟んで向かい側、路地を入ったところにある辰巳湯は看板が光って見えないが「露天風呂」の文字がある。露天風呂、この響きに弱い。都会の真ん中といえども、外気で頭を冷やしながら入る風呂は格別だ。
外観は最近多いビルの中に入っている、いわゆるビル銭。正直そそられないが、中に入るとビカビカに磨かれ年季を感じられる木製のロッカーに目が奪われる。料亭の中庭のような植込みがあって、いわゆる銭湯とは違った趣がある。湯船はかな〜り広々としていがこちらはスルーして奥の露天風呂へ。
入口扉の小窓から覗くと狭い湯船しか見えずうろたえたが、入ってみると奥にも湯船があって、大人4人は入れそうな広さ。天井があるので露天ではないのだけど、すぐ隣りにある、小ぶりながら手入れが行き届いた庭のガラス扉が開け放たれていて、そちらから夜風が心地よく流れてくる。温度も熱すぎず、長湯もできる。 庭の左手奥が休憩室になっていて、ベンチとTVが置かれている。オッサンがひとりくつろぎながらTVを眺めていた。なんだかユル〜い時間が流れている。
区内で銭湯料金でここまでノンビリ出来れば上等でしょ。相撲中継をおっさんたちと見ながら着替えを終え、後にした。さすが運河の町。風呂上りに川風に吹かれながら宵闇を歩くことのなんと気持ちいいこと。う〜ん満足!

辰巳湯

辰巳湯
15:00〜24:00
定休:月曜日
江東区三好1-2-3
※時間等変更の場合があります



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏に潜む古本喫茶を自営。レトロ少女マンガ・サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが揃う空間で最高品質の珈琲と自家製ケーキを持て成す。
ふるほん結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/



■緊急告知
谷根千の町がアートに染まる9日間谷中芸工展が今年もやってくる。カフェや雑貨店などあらゆる場所が様々のイベントに彩らる。弊店は今年は店主自らのB級な食や風景の写真をコラージュした廃景〜ミクスケープ〜展を開催。期間中は多摩湖周辺を食べ歩いたレポをまとめた拙著『多摩湖B食ライン』の特価販売の他、全展示写真とそのコメントを添えた部数限定のパンフレットを緊急販売(したいなぁ)。
10/6〜14(12休)於・
結構人ミルクホール 谷中芸工展 http://www.geikoten.net/

芸工展告知


2007年10月3日更新
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