鴻池綱孝
〈第十二夜〉 わたしのモゲラ様(投稿文)
先だって、お願いしていました怪獣思い出話。学生運動経験者のおじさまQ氏(49歳 無職)から熱い想いを語った、初のメールが送られてきましたので、全文を掲載いたします。
ワタシの世代には怪獣との甘い千夜一夜はない。ウルトラQの放映時、すでに微妙なお年頃だった(中学1年生)ワタシは加山雄三からビートルズへ鞍替えし、007よりもヒッチコックのサスペンスのが映画的にわあ・・・と眉にしわ寄せ始めるビターなお年頃の始まりだったのである。ウルトラQにしてもオープンのあの有名な渦巻きをあれはどうとるかって言うとね・・・などとしたり顔で語りつつ毎回チャンネルをあわせてしまう大人のふりをする子供期であったからだ。
ま、しかしワタシにも怪獣との思い出はないわけではない。それはもっともっと昔の駄菓子やに10円をにぎりしめて通った頃のずっと遠くの思い出である。
当時ワタシの家ではお正月に浅草に映画を家族全員でみにいくイベントをしていた。幼いワタシにとってもちろん映画といえば1年に1度みにいける物であり、映画を見る前に、うちでではなく外で中華そばを食べる日でもあった(なんか時代の貧乏に泣けますねえ)。
そこであったのが モゲラ さまなのである。宇宙防衛軍。とにかくそこに出てくる宇宙人がこわかった。天然色丸出しの宇宙人は天然色の悪夢であり、ダメダアアッな人たちであり、ヤメロオッなことをしてくる人であり、それをやっつける?のがわがモゲラさまであった。
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モゲラ:
ブルマァク製『モゲラ』。1970年製で、本文の頃には製品化がなかった。実物のイメージとかけ離れているのは、映画製作時の検討用のモゲラを、元にした為。
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ワタシの道路への白墨の落書きはもっぱらモゲラさまの偶像崇拝?になり、いまいち書きにくいモゲラさまゆえ、口がドリル状なねずみさまになってしまうのだが、モゲラさまの図のわきには、カタカナでモゲラと必ず書く。モグラでモゲラって幼いワタシにも笑えたネーミングだが、なんかそのドリルな感じが天然色で不自然なこの世でないものから楽しいこの世にかえしてくれる強い武器に思えて、みんなは笑うけどすごくいいやつなんだモゲラって・・なワタシのモゲラだったのである。
その後ソフビのモゲラを手にしたり映画のスチール写真をみたりとしたのだが、ど〜も違う、これはモゲラさまではないっ、オレのモゲラさまは・・もーいない、と地面を見、うつむき、涙する日々が続いたのだが、そんなワタシにモゲラさまがふっと現れたのは、ある骨董市のござの上であった。
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型抜き:
かた屋は下町の公園等に出没した。写真のような「型」と、粘土を販売し、オプションとして金粉銀粉があった。かた屋は完成品を評価し、点数をつける。累積点によって新たに「型」がもらえるシステムだったが、点が溜まった頃には、風のように去っていった。
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長方形のうすいレンガのような粘土のような石の板。それはなつかしいカタでありました。小学校の裏口でワタシたちを待ち構え季節の終わりにいなくなり集めた点数をチャラにしたあのカタ屋のおっさんのあのカタ。そしてそこに裏返しにとじこめられたオレのモゲラ。地中のなか長い年月のなかで手のひらサイズに収縮し化石化したようにみえるそんなぬけがらなマイ・モゲラ。いとおしいでした。ワタシのモゲラさまでした。もちろん購入し我がVIPグッズ・コーナーにすっくと仁王立ちしているのはいうまでもない。だから皆さん、モゲラを笑わないでやってください。
Qさん、ありがとうございました。
皆様の怪獣思い出話、待っています。あて先はexpo@konoike.orgです。採用分には当時物のお礼を差し上げています。それでは、よろしくお願いします!
2002年12月24日更新
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