さえきあすか
その24 カエルの藁人形と代用品の灰皿の巻 |
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4月某日はお誕生日。‥‥なのに大雨、気温11度、強風。秩父には雪。
「女王様にはふさわしいお誕生日、オメデトウ」
なんて、きんのすけ(女)からメールは入るし、なんだか悲しい。ちなみにその前後は晴天。「どうゆうこと?」っていいたくなります。家でジッとしていようかと思ったのですが、そんなことをしていたら1年間ずっとこんな調子になりそうですし、手元にある占い本によると、「博物館、アンティークショップなどをのぞくのがおすすめです」なんて、まるで私のために書かれているようなお導きのお言葉に、
「仕方がない。いくか」
と重い腰をあげていくことに。目的地は横浜。以前『その15 単衣名古屋帯の巻』でご紹介した『横浜骨董ワールド』です。今回はアルバイトではなく、お客としてであります。
くり返しちゃいますが、それにしても寒い! 桜は満開だというのに、なんなの、この天気! 会場にたどり着くまでに、あまりの強風、雨に泣きたくなります。思わず呪文のように、
「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」
と唱えながら、ブルブルと震えて会場に入りました。受け付けには親しい業者さんのKさんが微笑んでいます。そして、
「いいところで会ったよ。カエルちゃん! うちの店にさ、カエルの藁人形があるんだけど。買ってよ」
とひと言。
「カエルの藁人形ですか? まさか釘さすやつ?」
「そう、そう、五寸釘もついてるよ」
「本当? そんなのあるの? 見たい! 見たい!」
と、興味津々でお店にひっついていくと、大嘘つき! 確かに藁人形ではありますが、カエルの親子人形で、置物なのでした。
「ぜんぜん違うじゃない!」
笑いながら手にとると、けっこう大きい。カエルのこけしは何個か持っていますが、こんなに大きいのは、はじめてです。だって親カエルの高さが約35cmもあるんですよ。目は胡桃で、顔、体は全部藁でつくってあります。作者名も書いてあり、『笛吹蛙』というのだそう。底には「昭和51年8月8日
伊豆温泉 ハトヤ 家族達ト」って、マジックで書いてあります。家族旅行の記念に購入したモノなのですね。
「確かに藁人形だけどね〜。27年前じゃ、ちょっと新しいよね〜」
といいつつも、ジッと見ていると、なんだか愛くるしい表情に、情がうつってしまいます。半ば強引にすすめられたのですが、業者Kさんにも情がうつっている私としては、
「う〜ん、じゃぁ、他のモノも探す」
と、Kさんのブースを物色しはじめました。その時です。キラーンとひときわ輝いて視界に飛び込んできたのです。モノは灰皿。それもボール紙をアルミ箔で覆って型押しをした灰皿です。つまり先の戦争末期という、金属が不足した時代につくられた代用品であります。
「あっ、おもしろい! これ欲しい」
「見つけたね。まとまってでたんだけどね。代用品を集めている人が全部買っちゃってね。1枚だけとっておいたんだよ」
灰皿の中心には紺色で『登録商標』という文字と、歯車の真ん中に『自力』、その下に『青年靴』と書いてあります。靴のメーカーが配った代物のようです。けれど、アルミ箔に型押しされたスズランの花の見事なこと!
本物のアルミの灰皿に見えます。喜んでつれて帰りました。
しかし、問題は帰り道です。この大きなカエルを持って、寒〜い雨と強風の中、濡れないように必死で抱えて帰りました。手は冷たくて真っ赤になるし、後日風邪はひくし、前途は多難だと思わずにはいられない、悲惨なお天気のお誕生日なのでした。トホホ‥‥。
さて、おしまいに今回も配られました『横浜骨董ワールド』のガイドブックをご紹介します。前回と同様に表紙は内藤ルネさんが描かれました。4月から11月までの関東で開催される骨董市スケジュールをはじめ、手塚眞さんの「骨董アトム」、岩崎紘昌さんの「喋るより買え」、庄司太一さんの「神薬硝子壜覚書」(これはスゴイ! 謎の売薬こと「神薬」について14ページにわたって書かれた、ビン好き必見の記事であります)、私の「正ちゃんコースター」などなど、盛り沢山の1冊です。次回『横浜骨董ワールド』は、11月1日土曜日から3日の月曜日まで、パシフィコ横浜Dホールにて開催されます。
http://www.kottouworld.com
2003年6月13日更新
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