「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
ら〜めん路漫避行
まぼろし書店・神保町店
少女漫画 ふろくの花園
帝都逍遙蕩尽日録
定食ニッポン
駅前ガラクタ商店街
日本絶滅紀行
怪獣千一夜
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「絶滅紀行」タイトル

田端宏章

第13回 同潤会アパートが消えてゆく


 「同潤会アパート」と呼ばれる、戦前の集合住宅をご存じでしょうか?同潤会とは、関東大震災の時、国内外から集まった義損金の一部を元に、1924年(大正13年)内務省内部に作られた財団法人の名称です。震災復興を目的とし、罹災者のための仮設住宅や木造建築を設立し、さらに東京・横浜住民のために、16にも及ぶ鉄筋コンクリート造りの集合住宅を建設しました。同潤会アパートと呼ばれるこの集合住宅は、素材が鉄筋コンクリートであることや、電気・ガス・水道・ダストシュート・水洗便所といった、当時としては近代的な設備を持っていたことが特徴でした。

江戸川アパート

 そんな同潤会アパートが、絶滅の危機に瀕しています。今年に入って、江東区の「清澄通アパート(旧東大工町アパートメント)」の1、4号館が取り壊されたのをはじめ、表参道の顔的存在だった「青山アパート」も取り壊されることが決定しました。また、新宿区にある「江戸川アパート」も来年3月に取り壊されます。文京区の「大塚女子アパート」は、年内の取り壊しが決定したようです。来年春以降、現存するのは、荒川区の「三ノ輪アパート」と台東区の「上野下アパート」の2箇所と清澄通アパートの一部のみとなります。
 先日、私の友人の友人が新宿区の「江戸川アパート」に住んでおり、建物の中に入れる最後のチャンスということで、さっそく遊びに行きました。昭和8年(1933)築の集合住宅で、同潤会が最後に手掛けたアパートです。戸数は260戸。理髪店あり、エレベーターあり、社交室あり、食堂あり、浴場ありと、当時の住人はきっと豊かな共同生活を送っていたことでしょう。今でも地下の浴場は湯を沸かしておりました(エレベーターは先の大戦時に金属供出によって廃止されました)。

江戸川アパート

 私たちは、最後の記念にと、この建物を撮影した写真でカレンダーを作ろうということになりました。皆でお金を出し合い、出した金額の分だけ現物をもらえるという形にしました。せめてカレンダーでもいいから、身近なところにありし日の江戸川アパートを残しておきたい…。同アパートに20年も住んでいたHさんは、目を潤ませていました。今年の11月には引っ越しをされたようです。中には60年前から住んでいる人もいるそうで、そういった方々のことを思うと胸を締め付けられる思いです。数年後には巨大高層住宅が建つそうですが、一度失ってしまった物は二度と戻ってこないということを理解していただき、建物の一部を保存してほしいです。

江戸川アパート

 こうして、昭和の文化遺産がまた一つ、姿を消してしまうのでありました。

(たばた ひろあき 出版社勤務)


2002年1月10日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


第12回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その3
第11回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その2
第10回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その1
第9回 徳用マッチの面白さ その3
第8回 徳用マッチの面白さ その2
第7回 徳用マッチの面白さ その1
第6回 カラーブックスの魅力
第5回 活版印刷に魅せられて
第4回 看板建築は「ゆとり」の象徴
第3回 銭湯が消えてゆく……
第2回 麻雀意匠の愉しみ方
第1回 廃墟巡りのススメ


「カリスマチャンネル」の扉へ