トランポリン・松岡
第十五回『コンドームと僕と、正常位』
唐突であるが、僕はコンドームなしの正常位が大好き中高年である。理由は、コンドーム装着時のあの感度不足が嫌なこととズバリ精力減退。そして、下腹部から性器結合部分が一ミリの隙間もないあの密着挿入感からくる快感はそのままながら家内には悪いが夏の浜辺での甲羅干し的な体重任せの乗っかり状態でセックスが済むというお疲れ中高年向き体位としての正常位の楽さ加減である。
と言って、僕は性風俗評論家でも何でもないので推薦はしないが、とにかくこの数年、セックスはコンドームなしの正常位で過ごしている僕なのである。
現在の風貌からすると、村の盆踊りの晩に十六歳でいきなり神社でと言い出しそうで、実は、気はあってもなかなか女性とナニする機会には恵まれず、二十歳を過ぎてから友人二人に強引にタクシーに連れ込まれそのままプロの中年女性のお世話でアッサリ童貞喪失。後で聞いた話では、あの場は大体コンドーム装着が常識らしいそうであるが、僕はその人生に一度の夜もナマ身での体験。大変な幸せ者であったのだ。
結婚後、家内に言われて一度だけ装着はしたものの指腹で触れた微妙な皮膚感のズレにすぐ外してセックス、実際にはコンドーム使用は一度もない。安全日の夜を選ぶ五十二歳の現在も、勿論、途中でグンニャリ戦はあってもそのコンドームなし記録は野茂投手の百勝記録ではないがジンワリ更新中である。
さて、どういうわけか最近は見ることがないので懐かしい話になるが、僕が大学生の昭和四十年中頃には、薬局入口横の壁に頑丈そうな小型ボックスタイプのコンドーム自動販売機があった。
オモチャ屋等の入口に設置された百円玉を投入してハンドルを回すと丸いプラスチックケースに入ったオモチャが出る機械の「ガチャ」に似ていて、百円玉を三個だったか投入するとコンパクトな箱入りコンドームがゴトッと音をさせて出てくるアレである。
その自動販売機は百円玉しか使えない所が少し不便で、出てきたコンドームを箱から出して見ると、簡単にピリッと破けるピンクかブルーの袋に一個一個入っていて中身はごく普通のゼリー付きタイプ。噂のスッポ抜け防止用のデコボコもなく色も一番ポピュラーな淡いアメ色がくすんだようなゴム色で、僕など事務用の指ゴムサックを連想するようなモノであった。勿論、現在人気らしい片手でテープを引くだけで装着完了などといった代物は、当然、自動販売機どころかどこの薬局にもなかった頃である。
薬局に入って普通にコンドームを買うのはどうも恥ずかしいとかで、遊びに来ていた友達が、コンちゃんの在庫補充とか言いながらコンドーム自動販売機をよく利用していた記憶がある。
勿論、幾つになってもそこら辺の微妙に恥ずかしい気持ちは変わらないから簡単に買える通信販売でも割合人気らしく、コンドームを使用しない僕には関係ないが、次から次に新商品も開発され、口に含んで嘗めてもゴム味等全然しない物や、超極薄で匂いつき・つぶ状突起や特殊しぼりといった種々多様な最新人気のコンドームがあるらしい。
コンドームと言えば、使用しない僕が困惑した出来事が一度ある。
家内が長女を妊娠。家内の実家近くの馴染みの産婦人科医院で出産をしたのだが、入院の少し前か産後かのある時、時間外予約の申し込みを指示され僕は院長先生に呼ばれた。
診察室に行くと、診察の結果、家内が腟にカビのはえる病気に感染していてそれはセックスで簡単に感染するのであるが、コンドームを全くしないで性交渉をする夫の僕も診察するといった厄介な話。
年寄りの男の先生が診るとは言え、実際にナニを出して見せるわけであるが、痛くも痒くもなく湿疹等の異常も見られず過ごしていた僕なのである。何か凄く運が悪い自分を感じながら壁際に置かれた少し幅の狭い診察台に寝転びズボンと青い縞がらの綿トランクスを膝まで下げてポロッと出した僕のナニをグリッギュギュッと大胆に弄った後、先生は手を洗いながら「感染してないネ」の一言。わずか一分程の出来事だったが、どこか屈辱的で忘れられない出来事であった。
結婚から四年、二人目の子供が生まれる頃には、セックス慣れから背後位・屈曲位・正常位といった所で家内とのセックスをしていた僕が、ここ数年、正常位一体位になったのには理由がある。
十年程前のある夜、僕はセックスの異変に気づいた。それまでは硬直したナニを腰だけを使い簡単に挿入していた僕が、いつからかは覚えがないが手で持ち宛てがって挿入するようになっていたのである。
誰でもある年齢を過ぎるとそれが普通になるのかどうか、とにかくその時の僕は、愕然・困惑の大ショック状態。チビまるこの顔面斜線ではないが、瞬間、肛門から頭髪の先まで電気が走り、想像もしなかった中高年セックスの始まりを感じた僕であった。
そのうち、家内の両脚を抱え上げてピストン運動を繰り返す屈曲位では、支える両手がすぐ疲れるし腰のバネ加減も極端に弱くなってリズム崩れやパワー落ち現象が目立ち、快感をむさぼるどころかすぐの息切れ。結局、胸から下腹部を密着させて抱きしめたまま家内に体を乗っけることで腰の律動が程よくできて、絶頂での深いソレのタイミングがうまくとれる正常位が、お疲れ中高年の僕のお宝体位になってしまったのである。
勿論、抱える力を必要としない背後位も臀部との接触で一体感があり捨てがたいが、小振りな僕のナニでは満足には少し無理があり、これは信金に勤めるヨッちゃんのような微妙にウタマロ物の持ち向き、が僕の実感。
遅れに遅れてやっとなったビンゴーッの感じで何となく股間に膨らみを感じる夜は、ハワイの初夜以来二十年間続いているセックスパターンである全裸で合体準備万全の僕が遠慮がちに家内に乗っかり軽く抱きしめる所からセックスは始まるのであるが、そんな肌が触れ合う夜も滅多になくてその時間もグーンと、短い。
五十二歳を過ぎた最近は、朝立ちすることもこれまた滅多にないが、ヤンワリと欲情を感じる三百六十五夜の幾夜かをコンドームなしの正常位で交わる中高年セックスで、細々ながら現役キープの僕である。
2003年5月22日更新
第十四回『再会、また一つ。僕のテレビに懐かしの少年ジェットが来た。』
第十三回『ユーミンとセックスと鎌倉、僕の二十七歳の別れ。』
第十ニ回『シロクロ本番写真と五本の指』
第十一回『永遠のオナペット、渥美マリ』
第十回『ジェームズ・ボンドのセックスとナニの話』
第九回『二十一歳の冬、僕とフォークと喪失と。』
第八回『大阪スチャラカ物と言えば、てなもんや三度笠で決まり。』
第七回『嵌った嵌った、森繁の社長シリーズとアレコレ』
第六回『ジュンとネネではなく、VANとJUNの話』
第五回『夏は怪談映画、あの映画看板も僕を呼んでいた。』
第四回『青春マスターベーション』
第三回『ワッチャンの超極太チンポ事件』
第二回『中高年男性、伝説のモッコリ。スーパージャイアンツ』
第一回『トランポリンな僕のこと、少し話しましょうか。』
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