園長 ペリプラ葉古
その13−シラミ
次のコーナーに置いてある顕微鏡、
接眼レンズが向いている先には人の髪の毛が……。
いったいどんな生き物をのぞこうというのでしょう。
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終戦直後の時期だろうか。
学童を体育館かどこかに集めて、
白い粉末を頭から豪快に振りかける映像を見たことがある。
粉末はDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)。
シラミ駆除の1シーンである。
いま思えばあまりに無謀な撃退法だった。
人畜無害の夢の殺虫剤と謳われたDDTは、
のちにそのあまりに強力な毒性が明らかになり、
70年代には世界中で使用禁止となる。
当時散布されたDDTはいまも分解されずに土中や生物体内に蓄積され、
環境ホルモンとしてこの世のオスどものメス化を促進している。
人間の男の精巣が枯れ、全員がおかま化する日も近いかもしれない。
害虫を駆除したために男が勃たなくなるなんて素敵な話ではないか。
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コロモジラミ
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さて、シラミである。
こやつ、カやノミ、ダニと同じく吸血性の衛生害虫であるが、
中では最も寄主特異性が強い。
つまり好き嫌いがはっきりしていて、
人につくシラミは人専門の吸血鬼なのだ。
人専門の種としてはコロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミがいる。
コロモジラミは衣類に巣食って体の血を吸い、
アタマジラミは頭髪の中に潜って頭皮から吸血し、
ケジラミは陰毛の茂みに隠れて陰部を襲う。
聞いただけでかゆくなりそうである。
幸いにして経験はないが、それはもう壮絶にかゆいとか。
かゆいだけでも災難だが、シラミは発疹チフスの媒介者でもある。
DDTでも振りかけたくなった気持ちもわからぬわけではない。
コロモジラミのメスは下着の縫い目などにそって
300個ほどの卵をびっしりと産みつけるらしい。
葉っぱの裏などに規則正しく並んだ昆虫の卵は
見るだけで総毛立ってしまうが、
それが自分の衣服についていたとしたら気の弱い人には失神もの。
しかしながら昔の人は強かった。
爪の先でプチップチッと根気よくひとつずつ潰していたのだ。
いわゆる「しらみつぶし」の語源である。
空気が中に入ったビニールの緩衝材を潰すのと同じで、
はまると案外楽しかったのかもしれないが。
近年シラミが復活の兆しを見せているという。
一時期日本ではとんとお目にかからなくなったこの昆虫が
増えている原因は国民みんなが裕福になったからだ。
誰でも気軽に世界各地へ海外旅行に行って
渡航先からシラミをくっつけて帰ってくるのだ。
自分は清潔にしているから大丈夫、は通じない。
カが誰にでも刺すのと同じで、シラミは相手を選ばない。
清潔であろうが不潔であろうが人であればいいのだから。
オヤジであろうが深窓の令嬢であろうがいっしょなのだ。
海外帰りのOLの黒髪にシラミがしがみついている光景を想像して
ほくそ笑むのはボクだけだろうか。
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【シラミ】
翅がなく、目もほとんど退化しているが、シラミ目に属するれっき
とした昆虫。幼虫・成虫ともに哺乳類の血を吸う。ヒトにつくヒト
ジラミ(コロモジラミ、アタマジラミ)やケジラミのほかに、イヌ
ジラミ、ウマジラミ、イノシシジラミ、セイウチジラミなど、たく
さんの種類に分かれている。
2003年4月2日更新
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